記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/4/9 記事改定日: 2020/4/28
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
大動脈は人間の体の中で最も太い血管です。この血管に瘤(こぶ)ができることを大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう)といいます。
この記事では、大動脈と大動脈瘤について詳しく解説していきますので、大動脈瘤の予防や早期発見に役立ててください。
大動脈は、心臓から送り出された血液が最初に通る血管です。胸から腹部にかけて縦に長くのびていて、胸の部分を胸部大動脈、お腹の部分を腹部大動脈といいます。胸部大動脈と腹部大動脈は、横隔膜を境に分けられています。
胸部大動脈はさらに細かく分けられ、それぞれ大動脈基部、上行大動脈、弓部大動脈、下行大動脈と呼ばれています。心臓を出た血液は、まず上行大動脈を通ってから弓部大動脈でカーブし、下降して腹部大動脈に流れます。
弓部大動脈から分岐をした血管は脳や腕に血液を送り、腹部大動脈からは肝臓や胃腸、腎臓といった側方や両側の足に血液を送るように分岐します。
大動脈にコブ状のふくらみ(瘤)ができることを、大動脈瘤といいます。大動脈瘤の多くは、動脈硬化が原因と考えられています。動脈硬化は、血管に脂質がたまったり、血管の柔軟性が失われたりしていくことをいいます。
心臓は、血液を全身に送り出すためのポンプです。特に、心臓から最初に送り出された血液は力強く流れ出し、血管に負担がかかります。そのため、大動脈の血管壁は柔軟性と厚みがあり、強い血圧にも耐えられるような構造をしていますが、加齢や、高血圧、脂質異常、糖尿病などの生活習慣病、喫煙などによって動脈硬化が進むと、高い血圧に対して耐えきれない部分が生じることがあります。
その影響で血管がふくらんだり、内側から裂けて膜と膜のあいだに血液がたまったりすることで大動脈瘤が生じます。
大動脈瘤には、以下のようにこぶの形によって種類分けできます。
また、大動脈瘤は以下のように「大動脈のどこにできたか」によっても分類することができます
このように細かく分類するのは、大動脈瘤ができた部位によって症状や治療方法が変わってくるためです。
大動脈瘤には以下のような3つのタイプがあります。
血管は内側から内膜・中膜・外膜と呼ばれる3つの層で構成されています。
真性大動脈瘤は、この3つの層すべてが膨らんだ状態の大動脈瘤のことを指します。そのため、瘤の壁は比較的強度があり、3つのタイプの動脈瘤の中では最も破裂する危険が少ないと考えられます。
仮性大動脈瘤とは、血管の壁の一部に穴が開き、内膜・中膜・外膜が欠けている状態の大動脈瘤です。欠損した部分から漏れ出した血液が血管周囲の組織を圧迫して瘤を形成した状態であるため、瘤の壁は非常に脆いのが特徴です。そのため、血圧の一時的な上昇などをきっかけに、いつ破裂してもおかしくない危険な状態です。
解離性大動脈瘤とは、血管を構成する3つの層のうち内膜の一部のみが裂け、内膜と中膜の隙間に血液が入り込むことで形成される大動脈瘤です。内膜と中膜の隙間は、流れ込んだ血液の力でどんどん広がっていき強い痛みを引き起こします。広範囲に渡って形成された瘤が破裂すると突然死の原因となることも珍しくなく、早急な治療が必要となります。
大動脈瘤ができても、大きさが小さいうちは自覚症状はほとんど現れません。症状が現れるのは、大動脈瘤がある程度大きくなって近くの神経を刺激するようになってからといわれています。
例えば、胸部大動脈の近くには反回神経という声帯の動きや嚥下(飲み込むこと)に関わる神経が通っています。大動脈瘤が大きくなって神経の働きを邪魔すると、声を出しにくくなったり、飲み込みにくくなったりといった症状が起こることがあります。
痩せている人であれば、外から触って腹部大動脈瘤の膨らみに気づくこともありますが、その場合もほとんど自覚症状はありません。
いずれの大動脈瘤も健康診断のレントゲンやエコー検査で偶然見つかることが多いようです。大動脈瘤の早期発見には、定期的な健康診断が大切な役割を果たしているといえるでしょう。
健康診断や人間ドックを定期的に受けることが、大動脈瘤の早期発見につながります。
大動脈は、人間のからだの中でもっとも太い血管です。もともとは柔軟性が高く、厚みのある構造をしていますが、加齢や生活習慣などで、ずっとその状態を保ち続けるのが難しくなります。
大動脈瘤は、破裂して大出血を起こせば命にかかわることもあります。大動脈瘤はかなり大きくなるまで自覚症状がほとんどないので、定期的に健康診断を受けてチェックし、日頃から生活習慣に気をつけて早期発見・予防に努めましょう。