溶連菌に感染したときの症状は?命を落とすこともあるって本当?

2019/3/25

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

溶連菌によって引き起こされる感染症「溶連菌感染症」は子供に多くみられる病気ですが、大人が感染しないわけではありません。また、多くの場合、抗生物質を服用すれば快方に向かいますが、まれに筋肉の壊死や急性腎不全といった症状を引き起こす劇症型溶血性レンサ球菌感染症の原因にもなります。この記事では、溶連菌感染症でみられる症状や予防法などについて解説します。

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溶連菌に感染すると出てくる症状は?

溶連菌は、正式には溶血性連鎖球菌という名前の細菌です。溶血性連鎖球菌はいくつかのグループに分かれますが、身近な溶連菌感染症の多くはA群β溶血性連鎖球菌によって引き起こされる、と考えられています。

溶連菌は、のどの痛みや炎症、発熱を中心として、だるさや吐き気、嘔吐などが起こることもあります。また、皮膚症状を伴うことが特徴的です。全身に赤い発疹ができたり、舌にブツブツができて、まるでイチゴの表面のようになる「イチゴ舌」と呼ばれる症状が知られています。また、喉は耳の奥につながっているため、中耳炎を起こしたり、気管支やリンパ節に炎症を起こしたりすることもあります。溶連菌の主症状ではありませんが、合併症として急性腎炎やリウマチ熱には注意が必要です。

大人も溶連菌に感染する?その場合の症状は?

溶連菌は5歳ごろから小学生くらいまでの子供に多い病気ですが、乳幼児や成人が発症することもあります。ただし、3歳以下の子供や大人では、典型的な溶連菌の症状とは異なるのではないかと考えられています。

特に大人の場合、のどの痛みや発熱といった一般的な症状は軽度である一方、激しい頭痛や関節の痛み、倦怠感や胃腸症状などがあらわれ、インフルエンザ、胃腸炎などに間違われやすいようです。また、子供にみられる典型的な溶連菌では咳や鼻水といった症状はみられませんが、大人の場合は発症前に急に鼻水が大量に出たり、喘息のある人の咳が悪化したりする症状もみられます。

溶連菌で命を落とすこともあるって本当?

溶連菌に感染後、急速に全身の臓器の働きに影響を及ぼすことがあります。この症状は、正しくは劇症型溶血性レンサ球菌感染症と呼ばれます。一般的な溶連菌の原因となるA群溶血性連鎖球菌によって引き起こされます。

劇症型溶血性レンサ球菌感染症は、感染直後は手足が痛む程度で、目立った症状はありません。しかし、だんだんと皮膚が赤くなったり、水ぶくれができたりします。また、高熱が出ることがあります。進行すると手足の筋肉が壊死し、急性腎不全や呼吸障害、多臓器不全などを引き起こして死に至ることもあります。治療は抗生物質による対処方法ではなく、手足の壊死が始まると、進行を防ぐために切断の必要もあります。アメリカで1987年に初めて報告され、その病状と致死率の高さから、メディアなどで「人食いバクテリア」のひとつと表現されることがあります。

これまで高齢者や、糖尿病など免疫が低下している人に多くみられるとされてきましたが、近年は、重篤な基礎疾患がない人や妊娠中の人の報告もあります。残念ながら、いまだに劇症化する原因は明らかになっていません。劇症化する人は一部とはいえ、命にも関わるため、日頃から溶連菌の感染予防を心がけることが大切です。

溶連菌感染を予防するには?

溶連菌は、感染した人の咳やくしゃみを吸い込むことによる飛沫(ひまつ)感染のほか、唾液や鼻水などの分泌物がついたものを触ったり、食器を共有したりすることでも感染します。顔を近づけたり、手をつないだりといった機会が多い幼稚園や保育園などでは、集団感染をする可能性があります。また、家族内での感染も起こりやすいでしょう。

感染を予防するためには、手洗いやうがいなどのほかに、タオルやコップなどを共有することも避けましょう。小さな子供ではなかなか難しいかもしれませんが、できるだけ密着しないようにすることも大切です。

また、劇症型溶血性連鎖球菌感染症は、多くが手足の傷口から感染しています。擦り傷や虫刺されといった小さな傷も甘くみず、清潔にしておきましょう

また、バランスのとれた食生活や十分な睡眠、適度な運動、ストレスをためないなど、基本的な免疫がしっかりと働くよう、日頃から体調を整えておくことも大切になるでしょう。

おわりに:溶連菌感染症は命を落とすこともある病気。甘く考えずきちんと予防・治療をすることが大切

溶連菌は子供に多い感染症ですが、大人が発症することもあります。大人の場合は、子供の溶連菌感染の症状とやや異なり、インフルエンザや胃腸炎と勘違いされることもあります。また、一部の人ではあるものの、全身に影響が及ぶ劇症型溶血性レンサ球菌感染症を発症することがあります。発症の理由ははっきりせず、命を落とすことがある病気です。よくある感染症とあなどらず、日頃から手洗いやうがいなどで予防を心がけ、体調を整えておくことが大切です。

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