記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/5/26
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
「むずむず脚症候群」という疾患名を聞いたことはあるでしょうか?病名のとおり、じっと座っていたり同じ姿勢を取りつづけていたりすると、脚に耐えがたい不快感を感じてしまう疾患です。むずむず脚症候群とはどんな疾患なのか、また、治療法や薬剤を使う時など、詳しく解説していきます。
むずむず脚症候群とは、別名「レストレスレッグス症候群」「下肢静止不能症候群」とも呼ばれ、主に下肢に不快感を感じる疾患です。「レストレス」には「そわそわした」「絶え間なく動く」という意味があり、下肢の不快感によってじっと座っていられなくなることからこの病名がつきました。
夜眠ろうとベッドに入ったときや、新幹線・飛行機、または映画館など、足をじっと静止しているとき、脚の内側からじわじわ、むずむずといった不快感が沸き起こり、脚を動かすと不快感は和らぎます。この不快感は脚の表面ではなく、内側から沸き起こるのも大きな特徴で、患者さんによってはこの不快感を「ほてる」「しびれる」「虫が這うような感覚」などと表現することもあります。
この不快感は夕方~夜にかけて症状が強くなることが多く、さらに就寝中に脚が無意識にびくんびくんと動く「周期性四肢運動」という症状を伴うことも多い(患者さんの約80%)ため、睡眠が妨げられることも多く、結果として不眠状態に陥り、日中の眠気や疲労感として現れ、日常生活に支障をきたすこともあります。
日本のレストレスレッグス症候群の患者さんは人口の2~4%、すなわち200万~400万人に当たることが調査によって判明しており、このうち日常生活に支障をきたして治療が必要な程度の患者さんは70万人ぐらいと考えられています。また、男女比は女性が男性の1.5倍程度で、年齢が上がるほど罹患率は高くなることもわかっています。
むずむず脚症候群には、原因が全くわからない「突発性」と、原因がある程度推測できる「二次性」の2つがあります。二次性の場合もはっきりと原因が解明されているわけではありませんが、主に以下の3つが原因として考えられています。
鉄分不足によるレストレスレッグス症候群は「鉄欠乏性貧血」の患者さんや妊娠している人も起こりやすいと考えられます。
むずむず脚症候群の症状が軽いときは、投薬や通院などの治療を行わずとも生活習慣の改善によって症状を解消することができる場合もあります。そこで、むずむず脚症候群を発症した場合は、まず生活習慣の改善から始めてみるのがおすすめです。具体的には、以下の4つがポイントです。
鉄分不足は、レストレスレッグス症候群の原因として考えられているもののうち、比較的対策が立てやすいものです。特に、女性は月経により鉄分不足になりやすいため、普段から鉄分の多い食事を心がけたり、貧血気味の時にはサプリメントなどで補うと良いでしょう。また、鉄分の吸収を助けてくれるビタミンCやタンパク質の含まれる食材も合わせて摂るとより効果的です。
また、レストレスレッグス症候群は何かの基礎疾患の合併症として起こっている可能性もあります。そこで、基礎疾患がある場合は、そちらを治療することでレストレスレッグス症候群も落ち着く場合があります。他の疾患であっても、服用している薬や現在の病状などはきちんと医師に伝えましょう。
症状が強く、日常生活にも支障をきたすような場合は治療が必要です。日本では現在、レストレスレッグス症候群に対する治療としては飲み薬と貼り薬による治療が行われていて、弱くなったドーパミン神経の働きを補うか、神経の興奮を抑えて症状を改善するために使われます。前者には飲み薬と貼り薬が、後者には飲み薬が使われます。飲み薬には以下のようなものがあります。
ドーパミン受容体作動薬は長期内服すると、4カ月~半年ごろに「内服しているのに症状が悪化する」という「促進現象」や「反跳現象」がみられることがあります。抗てんかん薬のランドセン®︎やリボトリール®︎ではさらに少し早い段階で生じることがあります。いずれの場合も、無断で薬を増減することはせず、これらの症状が出た場合は医師に相談しましょう。
ランドセンやリボトリールは強い抗不安作用を持つため、睡眠障害を伴うレストレスレッグス症候群によく用いられます。しかし、これらの薬剤は耐薬性・依存性が高く、処方はできるだけ少量にしておく必要があります。
レストレスレッグス症候群の症状が軽い場合、投薬などによって積極的に医療が介入しなくても、生活習慣の見直しで症状が改善することもあります。じっと座っているとなんとなく脚がむずむずする、夜寝ている時にけいれんや不快感がするという人はまず生活習慣を見直してみましょう。
症状が重く、日常生活に支障をきたす場合は投薬治療も有効です。医師に相談し、用法・用量を守って正しく投薬治療を行いましょう。