記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/6/24
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
肝機能の低下によって高アンモニア血症といった症状がみられたとき、使用が検討されるのがリファキシミンです。この記事では、リファキシミンの働きや現在使用できる治療薬とともに、副作用について解説します。
肝硬変などの肝障害による合併症のひとつに肝性脳症がありますが、その要因のひとつが血液中のアンモニア濃度の過剰な上昇です。
「リファキシミン(高アンモニア血症治療薬)」はリファマイシン系に分類される抗生物質で、アンモニアを生みだす腸内細菌に作用し、血液中のアンモニアを減らすことで肝性脳症の症状を改善します。肝機能が正常であればアンモニアは主に肝臓で代謝されますが、機能が低下している状態では不十分となり、高アンモニア血症になって脳にダメージを与えます。その結果、さまざまな精神神経系の症状(眠気や気分変調、人格変化、異常行動、ふるえなど)が起こり、最悪の場合、昏睡状態に陥ることもあります。
一般に内服薬の多くは小腸などの消化管で吸収されてしまいますが、リファキシミンは難吸収性の性質を持ち、薬剤成分が腸管内に留まって抗菌作用をあらわすことから、「肝性脳症における高アンモニア血症の改善」を効能・効果として承認された日本初の薬剤となっています。
難吸収性抗菌薬のリファキシミンを有効成分とした治療薬として、リファキシミン(商品名:リフキシマ®︎)があります。他のリファマイシン系抗生物質と異なり、飲んでもほとんど吸収されない、腸管内のアンモニア産生菌を抗菌ターゲットとして開発されたものです。初発、再発を問わず、肝性脳症の新たな治療選択肢となり、作用メカニズムの異なる合成二糖類(ラクツロース、ラクチトール)との併用も可能です。
ただし、結核を合併している場合にはリファマイシン系抗生物質に対する結核菌の耐性化を防ぐため使用は控え、他の治療薬を用いるようにします。また、免疫抑制薬のシクロスポリン(サンディミュン®︎、ネオーラル®︎)と併用すると副作用が強く出るおそれがあります。重度の肝機能障害がある方は副作用に注意、慎重に用いる必要があります。このため、持病のある方や、ほかの薬を使用中の方は医師に伝えておくことが必要です。
体内にほとんど吸収されることがないので副作用は少ない薬ですが、便秘、下痢、吐き気などの症状がみられることがあります。そのような場合は放置せず、医師や薬剤師に相談しましょう。まれに重い副作用である大腸炎の初期症状として、激しい腹痛や頑固な下痢、発熱、血便、下血があることがあります。このような症状があらわれたらすぐに受診する必要があります。そのほか、めまいや味覚異常などの精神神経系の症状、まれに発疹などの過敏症の症状があらわれることがあります。いつもと違う、おかしいと感じたら、早目に受診するようにしてください。
リファキシミン(高アンモニア血症治療薬)は、リファマイシン系に分類される抗生物質で、難吸収性の抗生物質です。肝障害の合併症のひとつである肝性脳症の治療薬として、アンモニアを生みだす腸内細菌に作用して血液中のアンモニアを減らすことで、脳へのダメージやさまざまな精神神経系症状を改善します。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。