記事監修医師
前田 裕斗 先生
2017/4/11 記事改定日: 2019/4/8
記事改定回数:1回
記事監修医師
前田 裕斗 先生
妊娠中の女性がオウム病で亡くなるというニュースがありました。「オウム病」という聞きなれない病名に戸惑った方も多いのではないでしょうか。
この記事では、オウム病について解説するとともに、そのほかに気をつけたい感染症(トキソプラズマ)についてご紹介します。
オウム病は、オウム病クラミジア(ハトやインコなどに生息しています)によって発症する感染症です。病原菌を持つ鳥のふんを吸入して感染したり、噛まれたりして感染することもあります。
オウム病の潜伏期間は1~2週間です。オウム病は高熱で突然発症する場合が多く、その後、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛、関節痛などがみられます。また、不整脈や肝機能障害、咳や血痰(けったん)、チアノーゼが出ることもあります。
症状が軽い場合、気管支炎で治まることもありますが、重症の場合、重症肺炎や髄膜炎、肝臓や腎臓などの多臓器障害、ショック症状などが現れ、最悪の場合命を落とす場合もあります。
免疫力や体力が低下しがちな妊娠中にオウム病に感染すると、重症化して敗血症などを引き起こすリスクが高くなることが分かっています。その結果、流早産の原因になるだけでなく胎児死亡につながることも少なくなりとされており、2017年には妊婦自身が重症化したオウム病によって死亡するという事例も報告されました。
妊娠中は、むやみに野鳥などの動物に触れず、こまめな手洗いや手指消毒を徹底することが大切です。そして、何らかの体調の変化を感じた場合には、悪化する前にかかりつけの産婦人科で相談するようにしましょう。
ペットとして鳥を飼っているようでしたら、妊娠中は必要以上に鳥に触れるのを避けたり、口移しでえさを与えるようなことはやめましょう。そして、いつもより元気がないなど、鳥の様子がおかしいと思ったら、動物病院へ連れていき、診察を受けましょう。
また、外出中に弱っている鳥を見つけたときは近寄らないようにしてください。
トキソプラズマは、トキソプラズマ原虫(主に動物のふん(ネコなど)や、生肉に生息しています)と呼ばれる寄生虫が原因の感染症です。トキソプラズマに感染しても、大人であれば症状が出ない場合がほとんどです。ただ、微熱、リンパ節の腫れ、軽い疲労感、発疹などの症状が現れる人もいます。
トキソプラズマに感染しても母体への影響はほとんどありませんが、胎児に感染するリスクは妊娠週数により異なると言われています。
妊娠初期に母体が感染した場合、胎児”は”感染する可能性は低いものの、感染した場合生後3年間で胎児に症状が現れる可能性は高くなります。一方、母体が妊娠後期に感染した場合、胎児にも感染するリスクは高くなりますが、胎児に症状が現れる可能性は低くなります。トキソプラズマに感染した胎児は、視力や聴力に障害が残ったり、発達障害を抱える可能性もあります。また、妊娠中の場合は、流産、死産の可能性もあります。
赤ちゃんをトキソプラズマから守るためには、まずお母さん自身が感染しないことが大切です。以下のような点に気をつけて過ごしましょう。
トキソプラズマに感染した疑いがある場合は、医者の診察を受けてください。
妊娠中は免疫力が低下するため、ペットのふんや生肉などに含まれる菌や寄生虫などが原因の感染症にかかるリスクが高くなります。赤ちゃんへのリスクを避けるためにも、ペットとのスキンシップはできるだけ控え、食べ物にはしっかり火を通しましょう。