血液製剤はどんなときに使われる?安全性や副作用の症状って?

2019/5/31 記事改定日: 2020/10/14
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

血液製剤をご存知でしょうか。輸血と比べてなじみがなく、初めて聞いた人もいるかもしれません。この記事では、血液製剤とはどんな医薬品か、種類や成分、安全性と起こりうる副作用についてまとめました。

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血液製剤の「輸血用血液製剤」と「血漿分画製剤」の違い

血液製剤とは、人の血液と血液の有効成分を用いた医薬品のことです。主に輸血用血液製剤と血漿分画製剤に分けられます。

輸血用血液製剤

人の血液または人の血液から赤血球、血小板や血漿(けっしょう:プラズマとも呼ばれる)などの成分を分離し、調製した製剤のこと。現在の医療の現場では、主に成分製剤が使用されています

血漿分画製剤

血液内の血漿から、必要な血漿タンパク質を種類ごとに分離(分画:ぶんかく)し、精製したものです。血漿分画製剤の役割は他の物質では代替できません。

次章でそれぞれの製剤についてより詳しく説明していきます。

4種類の輸血用血液製剤の特徴と使用法

輸血用血液製剤には、赤血球製剤、血小板製剤、血漿製剤、全血製剤の4種類があります。

① 赤血球製剤

採血後、21日間使用可能な製剤で、血液から血漿や白血球、血小板の大部分を除去し、ほぼ赤血球のみにしたものです。出血や造血障害などで赤血球が不足している状態の改善のために使われます。

② 血小板製剤

採血後、4日間使用可能な製剤で、止血作用を持つ血小板を、成分採血装置で採取したものです。血小板の減少や、その機能低下による出血時に使われます。

③ 血漿製剤

採血後、1年間使用可能な製剤で、品質保持のために採取後マイナス20℃以下で凍結されます。血漿製剤は、血液から血漿を取り出したものです。血漿は、出血防止に必要な各種凝固因子が含まれます。血液凝固因子の欠乏による出血や、出血傾向が強い場合に用いられます。

④ 全血製剤

採血後、21日間使用可能な製剤で、人の血液に保存液を加えたものです。大量出血をした場合、血液の全成分が不足します。その際に、赤血球や血漿などの補給のために使用される医薬品です。しかし、現在は必要な成分だけを輸血する「成分輸血」が主流となっているため、全血製剤はあまり使われていません。

血漿分画製剤とは

そもそも、血漿分画製剤の材料となる「血漿」には、以下の成分が含まれています。

血漿の成分
  • 各種タンパク質
  • 脂質
  • ブドウ糖
  • 電解質
  • 金属イオン
  • ビタミン
  • ホルモン  など

とくにタンパク質は100種類を超えることが分かっており、これらのタンパク質の中でも、重要なタンパク質は物理化学的に各成分に分けられています。そして、成分ごとに精製したものが「血漿分画製剤」と呼ばれます。

血漿分画製剤の主な種類
  • 免疫グロブリン製剤
  • アンチトロンビンIII製剤
  • アルブミン製剤
  • 血液凝固因子製剤
  • フィブリン糊製剤 など

血液製剤の安全性と副作用は?

輸血用血液製剤と血漿分画製剤を使うとき、まれに副作用起こることがあります。

輸血用血液製剤の安全性

血液製剤は、主に日本赤十字社から供給された血液が原料です。献血で集められた血液は、徹底した検査が実施されているため、血液製剤は安全性が高いと言われています。ただ、頻度は低いものの、副作用が出る場合があります。

副作用の主な症状

  • アレルギー
  • 蕁麻疹
  • 発熱
  • C型肝炎
  • B型肝炎
  • HIV感染
  • 未知の病原体による感染   など

そのほか、放射線照射をしていない血液で、輸血後GVHD(血液供血者のリンパ球が、輸血を受けた人の体組織を攻撃することで起きる病態)が起こることもありますが、非常に頻度は低いです。

血漿分画製剤の安全性

血漿分画製剤は安全対策を行いながら製造されています。しかし、ある種のウイルスを完全不活化し、全て除去することはできません。そのため、ウイルスに感染する可能性はゼロではないのが現状です。

副作用や合併症

  • アレルギー反応
  • 感染症(A型肝炎ウイルス、ヒトパルボウイルスなど)
  • 合併症(ショック症状、心不全、肺水腫、無菌性髄膜炎、溶血性貧血、急性腎不全など)

副作用や合併症の症状

  • 顔面紅潮
  • 発熱
  • 悪寒
  • じん麻疹
  • おう吐
  • はき気
  • 倦怠感
  • 頭痛 など

検査で分かる副作用

  • GOT・GPT上昇
  • 好酸球増多
  • 腎障害
  • 血小板減少   など

どちらかというと、血漿分画製剤のほうが副作用が比較的出やすいとされています。

輸血、血漿分画製剤の使用と同意書

輸血や血漿分画製剤の使用は上述したように様々な副作用を引き起こします。また、現在は献血された血液への検査の精度が以前に比べて格段に向上しているとは言え、血液を介して感染するウイルスなどを100%の確率で検出することは不可能であり、輸血や血漿分画製剤の使用は少なからずリスクを伴います

そのため、輸血や血漿分画製剤を使用する場合は事前に副作用や感染症のリスクに関する説明を医師から聞いたうえで、「それらのリスクを承知の上で治療を受けること」に同意するという同意書への署名を求められることがあります(緊急時では事後に行うこともあります)。

同意書へ署名すると、医療機関側に何らかの重大な過失がない限りは輸血や血漿分画製剤によるトラブルが生じても責任を問うことはできなくなります。
輸血や血漿分画製剤を使用する際には医師の説明をしっかり聞き、メリットとデメリットをよく理解したうえで同意書に署名するようにしましょう。

おわりに:輸血用血液製剤と血漿分画製剤は血液の成分を補うもので副作用を理解しましょう

輸血用血液製剤と血漿分画製剤は、大量出血の際に失血死を防いだり、血が止まらない症状を改善してくれたりする医薬品です。

副作用の心配もないといわれていますが、まれにアレルギー症状や発熱、悪寒といった副作用がみられることがあります。使用にあたっては医師の説明を十分に聞くとともに、使用後に体調の不良を感じる場合は、速やかに相談しましょう。

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