抗凝固薬ってどんな働きをする薬?使い分けの目安は?

2019/6/22

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

抗凝固薬は、血液をサラサラにするはたらきのある薬のひとつです。今回は、抗凝固薬のはたらきやその種類などをご紹介します。

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抗凝固薬とは

体は皮膚などから出血を起こすと、血液が体外へ流れ出るのを防ぐはたらきがあります。血液中の血小板が傷口にくっついて止血されていき、次第に塊となって傷口を塞いでいきます。このとき、この塊をより強くするために必要となるのが凝固因子と呼ばれるもので、最終的には「フィブリン」という糊のようなものを作り出します。

抗凝固薬とは、この凝固因子のはたらきを抑え、フィブリンによって止血されることを防ぐ役割があります。抗凝固薬には血液をサラサラにするはたらきがあるため、主に血液の流れが遅い静脈で起きる肺梗塞や深部静脈血栓症などの血栓症で使用されます。抗凝固薬の中には、フィブリンを作り出すトロンビンのはたらきを抑えることによって効果を発揮するものもあります。またトロンビンの前駆物質であるプロトロンビンなどが作り出される際に必要なビタミンKのはたらきを抑えることにより、血液の凝固を防ぐものもあります。

主な抗凝固薬は?

抗凝固薬は、主にワルファリンと直接経口抗凝固薬(DOAC)の2種類があります。

ワルファリンは抗凝固療法における代表的な薬で、静脈の血栓の予防や進行の抑制のために使用されます。特に心房細動に関係する心原性脳塞栓症などに効果が期待でき、エコノミークラス症候群などの治療にも使用されることで知られています。ただし、血栓そのものを溶かすことはできないこと、薬の量が多すぎると出血、少なすぎると効かないことなどが注意点として挙げられます。

また、DOACではリバーロキサバン(商品名:イグザレルト®)、エドキサバン(商品名:リクシアナ®)、ダビガトラン(商品名:プラザキサ®)、アピキサバン(商品名:エリキュース®)などがあります。

ワルファリンとDOACのメリット・デメリットは?

ワルファリンとDOACのメリット・デメリットとして、主に以下のようなものが挙げられます。

メリット

  • ワルファリン:値段が安い、評価が確立されている、1日1回の服用でいい
  • DOAC:効果がワルファリンと同等以上、頻回の採血が不要、納豆を食べてもいい

デメリット

  • ワルファリン:納豆を食べてはいけない、頻回に採血が必要、効果や副作用がDOACに劣る
  • DOAC:値段が高い、1日2回の服用の場合もある、保険適応が限られている

仕事などで忙しい場合や高齢などの理由により、頻繁に通院するのが難しい場合、またビタミンKを多く含む食品を摂り、食生活のQOLを重視する患者さんの場合、あるいは合併症のために併用する薬が多い患者さんの場合にはDOACが勧められるケースがあります。

一方で、薬価を安く抑えたい患者さんの場合、ワルファリンが推奨されることもあります。どちらを選択するかは、主治医と相談の下、納得してから判断しましょう。

おわりに:主な抗凝固薬には、ワルファリンとDOACがあります

血栓を予防するための抗凝固薬には、主にワルファリンとDOACがあります。それぞれの薬にメリット・デメリットがありますので、主治医からしっかりと説明を受け、指示通りに薬を服用しましょう。

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