記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
新日本プロレスの柴田勝頼さんが硬膜下血腫を発症して試合後に緊急入院し、長時間にわたる手術を受けていたことがわかりました。手術は無事成功し、術後の経過も順調とのことですが、脳の損傷ということもあり、無事回復してリングに戻ってこられるのか、気になるところです。ここでは硬膜下血腫の原因や症状、治療法や手術後の回復についてご紹介します。
硬膜下血腫は、柴田さんのように頭部にひどい外傷を負った直後に発症する(急性硬膜下血腫)こともあれば、軽い外傷を負ってから数日または数週間後に発症する(慢性硬膜下血腫)こともあります。
硬膜下血腫の主な症状として、以下のようなものがあります。
・頭痛の悪化
・てんかん発作
・発声障害
・複視(ものが二重に見える)
・体の片側だけ麻痺している
・歩行障害
・混乱
・人格の変化
・目を開けていられないほどの眠気を感じる
・意識消失
なお、急性硬膜外血腫や重症の急性硬膜下血腫ではlucid interval(意識清明期)と呼ばれる、受傷直後は平然としているのに、数時間経つと急に意識障害などの症状が進む現象が知られています。強く頭を打った時は、大丈夫に思えても一度受診してみることをオススメします。
急性硬膜下血腫は、激しい殴り合い、自動車事故、転落などで頭部にひどい外傷を負ってしまうことが原因で発症します。脳の血管や脳そのものが損傷したことで、頭蓋骨と脳の間の空間(硬膜下腔)で出血して血液がたまることがあります。血液がたまると血腫ができて脳に圧力がかることがあり、これが脳の損傷を引き起こすことがあるのです。
一方、慢性硬膜下血腫は60歳以上の方や血液をさらさらにする薬(抗凝固薬、抗血小板薬など)を飲んでいたり、アルコールを過度に摂取している場合に発症するもので、外傷の程度が軽くても硬膜下血腫が発症する可能性があります。
薬を服用している人は血液が固まりにくくなるため出血がひどくなることが原因で起こります。また、60歳以上の方やアルコールを過度に摂取している人は、脳の血管が破綻しやすくなっていることが原因で発症します。
硬膜下血腫は、手術で治療するのが一般的であり、代表的な手術法として以下の2種類があります。
この手術は、柴田さんのように急性硬膜下血腫を発症した場合に用いられます。外科医が血腫を取り除くため、頭蓋骨の一部を一時的に取り除きます。血腫を取り除き終えると、頭蓋骨を元の位置に戻してねじで固定します。
こちらは慢性硬膜下血腫を発症した場合に用いられます。頭蓋骨に小さな穴を開け、その穴にチューブを通して血腫を取り除きます。血腫の量が少なかったりする時は漢方・利尿剤から治療を試みてみることもあります。
硬膜下血腫は脳の損傷がどのくらい深刻だったかによって、回復にかかる時間や回復の程度が変わります。
また、回復の途上でスポーツをしたり、自動車を運転したりすることはリスクが高いため、控えたほうがよいでしょう。
場合によっては、気分障害、集中力や記憶障害、発声障害、てんかん発作といった後遺症が現れます。もし手足の衰弱が表れている場合、運動機能を回復させるためにリハビリが必要な場合もあります。
硬膜下血腫は、頭部に受けた激しい損傷が原因で発症する深刻な病気です。また、当面は運動も控えたほうがよいため、再び柴田さんの姿をリング上で見ることができるまでに時間がかかるかもしれません。今は柴田さんが順調に回復することを願いましょう。