塩分濃度を知ることが健康維持に大切なのはどうして?

2019/6/26 記事改定日: 2020/4/10
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

人間の体に欠かせない塩分ですが、摂りすぎると体にさまざまな悪影響を及ぼします。不調を招かないために、わたしたちはどのくらいの塩分濃度を心がければいいのでしょうか。塩分摂取のコツとともに解説していきたいと思います。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

塩分濃度の調べ方と調味料ごとの違いとは?

濃度は、液体や気体に含まれているある成分の濃さのことです。なかでも、重さを基準にしたものを質量パーセント濃度といい、塩分濃度は、ある物質や溶液100gに溶けている食塩の重さを算出して、%(パーセント)という単位を使って示します

たとえば、3gの食塩が150gの水に溶けているときは、水1gあたりに含まれる食塩の重さを計算して、100をかけてやれば算出できます。計算式は、塩3g÷水150g×100=2%となります。

塩分の気になる食品や調味料について、一般的な塩分濃度は次のとおりです。

  • 梅干し 20%前後
  • 醤油 薄口 16~18%
  • 醤油 濃口 14~15%
  • みそ 10~13%
  • 海水 3.5%

醤油は濃口のほうが塩分も強いという印象があるかもしれませんが、実際には薄口のほうが塩分濃度は高くなります。また、みそは、地域ごとに特徴が異なり、大豆、米、麦などの材料と塩の配合が違います。最も塩分が高いのは赤みそで、白みそは低めとなっています。

体内の塩分ってどんな働きをしているの?

塩分は、人間のからだにとって必要な成分です。人間の体液の濃度は基本的には0.9%に保たれており、このバランスが崩れることで体調不良を引き起こすことがあります。体内では、塩化物イオンとナトリウムイオンというイオンの状態で存在しています。血液や骨の中に含まれており、大人の場合は体重の0.3~0.4%含まれているといわれます。

からだの中の塩分は、次のような働きをしています。

細胞を保つ

塩分は、血液や消化液、リンパ液などに含まれて、細胞の中と外の圧力を調整して、細胞が壊れることなく一定のバランスを保つようにコントロールしています。圧力を適切にコントロールすることで、栄養を体内に取り込むことができます。

神経伝達

脳からの司令は神経細胞を伝わって送られ、細胞同士がイオンを受け渡しすることで情報を伝えていきます。ナトリウムイオンは特に必要なイオンのひとつです。

消化と吸収

食べ物の消化のために胃で分泌される胃液のもとになるのが、塩分からつくられる塩化物イオンです。また、小腸で栄養素を吸収するときにも、ナトリウムイオンの存在が必要です。
塩分はからだの働きに必要な物質です。大量の汗や嘔吐、下痢などで体内から急激に塩分がなくなると、口のかわきや頭痛、吐き気、脱力感といった脱水症状があらわれます

塩分を摂りすぎてしまうとどんなリスクがあるの?

塩分を摂りすぎると、血液の電解質濃度が高くなります。その結果、本来なら尿と共に排泄されるはずの余分な水分が身体の中に留まるようになるため、むくみが生じるようになります。

また、体内の水分が多い状態が続くと血圧が高くなり、動脈硬化を引き起こして心筋梗塞や脳卒中などを発症する原因となることも少なくありません。また、腎臓にも負担がかかるため、長い間放置されると腎不全を引き起こし、尿の生成能力が低下することでさらに体内に水分が溜まりやすくなるといった悪循環に陥ることもあります。
そのほか、近年では塩分の摂りすぎが認知症や骨粗鬆症、胃がんのリスクになることも徐々に分かりつつあり、全身に様々な悪影響を及ぼすと考えられています。

適切な量の塩分を摂るためにできることは?

塩分の摂取量が少なすぎることは良いことではありませんが、日本では食習慣の関係もあってどちらかというと塩分の摂取量が過剰になりやすいです。

塩分摂取量をコントロールするためにも、以下のことに気をつけましょう。

調味料の塩分量を把握する

塩分は、醤油やみそ、ケチャップやソースといった身近な調味料や、ハムやソーセージなどの身近な食材に意外とたくさん含まれています。まずは、どんな食材に、どの程度の塩分が含まれているかを知り、調理方法や食べ方を工夫して、たくさん食べ過ぎないようにしましょう。

具だくさんにする

調味料に頼りすぎないようにしましょう。たくさんの具材を入れると、具材から出る旨味によって味わいが深くなるので、塩味に頼らない味付けができます。

スパイスを活用する

ハーブやスパイス、唐辛子、生姜などを活用すると、塩が少なくても味にメリハリをつけやすいです。

外食や加工食品を控える

外食のメニューや加工食品は塩分濃度が比較的高いです。なるべく外食や加工食品に頼らないことが理想ですが、難しい場合は加工食品の使いすぎに注意し、外食ではスープを残したり、味の濃いものを控えめにするなどして対処しましょう。

漬物や塩辛、つくだ煮に注意

漬物や、塩辛、つくだ煮は塩分濃度が高くなりがちです。食べるときには少量を小皿に取り出しておくと、食べ過ぎの予防になります。

カリウムが含まれた食品を食べる

カリウムは、塩分をからだの外に出すはたらきがあります。意識して食べないと不足しがちになるので、積極的にとるようにしましょう。わかめ、アボカド、さといもなどに含まれています。

おわりに:塩分は体に必要な栄養素。でも、摂りすぎないよう濃度に気をつけよう

生物のからだを維持するためには、塩分は欠かせない成分です。しかし、過剰にとりすぎれば、さまざまな不調を招き、脳血管障害や心臓疾患など命にかかわる病気にもつながりかねません。塩分は、ふだんの食事を意識することでとりすぎを防ぐことができます。日頃使う調味料や食品の塩分濃度や塩分量を知っておくようにし、塩分の摂取量をうまくコントロールしましょう。

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