記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/9/17 記事改定日: 2020/7/6
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
胸腺は、私たちの胸のあたりに存在し、体を守る免疫機能にかかわっている臓器です。今回は胸腺がどのような働きを持つ臓器なのか、胸腺に発症し得る病気やその症状、それぞれの治療方法などとあわせて解説します。
胸腺は左右の肺の間、胸の真ん中に縦に入る胸骨の裏側に存在する臓器です。生まれたときには10~15gほどの大きさですが、思春期には30~40g程度にまで大きく成長し、その後は加齢とともに小さくなっていく特徴があります。
免疫機能に深く関わり、T細胞と呼ばれる免疫細胞が成熟していく過程で、間違って自分の細胞を傷つけてしまわないよう外敵を見分ける機能を与えるのが、胸腺の役割です。
私たちの身体を守るための免疫機能には、T細胞の他にも様々な細胞が関与しています。T細胞以外の細胞は、骨髄の中に存在する造血幹細胞が骨髄の中で成熟することによって産生されますが、T細胞はT細胞のもとになる細胞が胸腺に移動して胸腺の中で成熟していきます。
T細胞にはヘルパーT細胞やキラーT細胞など様々なタイプのものがありますが、胸腺ではT細胞の元となる細胞からこのような様々なタイプのT細胞が分化していきます。
胸腺で起こる代表的な病気として「胸腺腫」と「胸腺がん」が、また、胸腺に起こる病気ではないものの、胸腺に重大な異常がみられる病気として「重症筋無気力症」があります。
どちらも胸腺の上皮細胞と呼ばれる部分に発生する、悪性の腫瘍のことです。厳密な性質はそれぞれ異なりますが、特に胸腺腫は腫瘍細胞の増殖スピードが比較的ゆっくりな一方で、胸腺がんは増殖も転移のスピードも比較的早いとされています。
発症して腫瘍が大きくなってくると、咳や胸痛、呼吸困難などの症状を表すほか、血流を阻害するような位置にできた場合は顔面や首のうっ血やむくみの原因にもなります。
自己免疫疾患の一種で、免疫機能のエラーで末梢神経と筋肉のつなぎ目が破壊され、全身の筋力低下やまぶたの下垂、疲れやすさなどの症状を表す病気です。
基本的には胸腺に発生する病気ではありませんが、発症すると約75%の確率で、胸腺の過形成や胸腺腫など、胸腺に異常が出る合併症が起こります。
胸腺腫・胸腺がん、重症筋無力症の一般的な治療方法は以下の通りです。
胸腺腫・胸腺がんに関しては、基本的には外科手術や放射線照射を施し、少しでも悪性腫瘍を小さくする方向で治療していきます。
抗がん剤では胸腺腫・胸腺がんの根治は望めないため、積極的に使われることはありません。また、症状のコントロールのために、ステロイド剤を使用することもあります。
重症筋無力症に対しては、症状を抑えるための対症療法と、根本的な治療をめざした免疫療法を並行して治療することになります。重症筋無力症に対しての対症療法と免疫療法の内容は、それぞれ以下の通りです。
コリンエステラーゼ阻害薬を投与し、神経から筋肉への信号伝達を増強することで、症状の一時的な軽減を目指します。
しかし、対症療法はあくまで一時的な改善をめざす治療方法であるため、免疫療法までのつなぎとして行われるケースがほとんどです。
自分を攻撃してしまう抗体の産出を抑制・除去し、根本治療をめざす治療法です。基本的には、免疫抑制剤やステロイド剤を投与して体内の抗体除去をめざしますが、患者の状態によっては以下のような方法が選択される場合もあります。
左右の肺の間、胸骨の真裏に胸腺は存在します。重要な免疫細胞の一種であるT細胞に、誤って自己細胞を傷つけないよう見分ける機能を与える、免疫機能上重要な役割を担う臓器です。この胸腺に発症し得る病気しては、胸腺腫・胸腺がんの悪性腫瘍が挙げられますが、自己免疫疾患の一種である重症筋無力症によっても多大な悪影響を受けます。胸の痛みや疲れやすさを感じたら、病院で診断・治療を受けましょう。