記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2020/6/18
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
夏に気分が晴れない、体調も思わしくない、といった状態が続いたとき、まっさきに思い浮かぶのが夏バテだと思います。夏バテも夏に避けたい不調ですが、精神的な落ち込みも伴う場合には夏季うつと呼ばれる症状の可能性があります。この記事では、夏バテと夏季うつとの違いや対処法、予防の可能性について解説します。
夏季うつは、夏に食欲低下や不眠といった夏バテにも似た症状に加え、気分の落ち込みなどの精神的不調が起こる症状です。夏季うつは医学的な診断名ではなく、季節性感情障害(SAD)に分類されています。
季節性感情障害(SAD)は、心理的に明らかなストレスやショックを与える出来事や、進学や就職、結婚、出産などの大きなライフイベントがないにもかかわらず、一年のうちの特定の時期のみに症状が起こるのが特徴です。発症時期は5月~9月ごろ、男性よりも女性に起こりやすいと考えられています。
夏季うつにみられる症状は、いわゆる夏バテと受け止められやすいです。このため、周りの人だけではなく、自分自身でも周囲も気づかないことがあります。しかし、夏季うつは気分の落ち込みや不安といった精神的な症状を伴う点で夏バテと異なります。また、明確なストレスや理由がないのに気分が晴れない場合も、夏季うつの可能性があると言えます。
夏季うつは、夏の高温多湿の気候が影響しているといわれています。また、日差しが強い屋外と冷房のきいた屋内の気温差がからだに負担をかけたり、食欲の低下や偏った食生活から、必要な栄養素が不足してしまう可能性も挙げられます。
季節性のうつ症状は、男性より女性のほうが多いともいわれています。その原因として、周期的な女性ホルモンの変動があります。また、夏の暑さや湿度といった環境から受ける影響は一般的には女性のほうが受けやすいからとも言われます。
夏季うつを含む季節性感情障害は完全に防ぐことは難しいものの、以下のポイントを踏まえて過ごすことでリスクを抑えることは可能です。
夏の強い日差しは、体にとって負担となります。長時間の外出は避けたり、日差しの強い時間帯を避けたりして、日光を浴びすぎないようにしましょう。
猛暑による熱中症を防ぐためにも、エアコンの上手な使用は欠かせません。しかし、エアコンの温度を低くしすぎるのも体には負担となります。寒すぎず、熱すぎない室温に設定するとともに、外出先にはカーディガンやストールなどを持参して、体温調節できるようにしましょう。
睡眠は疲労回復をし、体内リズムを整えるうえで大切です。できるだけ良質な睡眠をとるように工夫しましょう。スマートフォンやPCを寝る直前まで眺めることは止めて、ゆっくりと過ごす時間をとりましょう。肌触りの良い寝具やパジャマを使うのもおすすめです。また、夜間もエアコンを上手に使って室温が高くならないようにしましょう。
食欲がなかったり、料理をする意欲が下がったりして、つい簡単なもので済ませてしまうことがあるかもしれません。しかし、食はからだづくりの基本です。バランスの良い食事を心がけましょう。
特に、睡眠リズムを整えるメラトニンの分泌を促すには、脳内の神経伝達物質である「セロトニン」が欠かせません。セロトニンの合成には、必須アミノ酸であるトリプトファン、ビタミンB6、炭水化物が必要です。特に、トリプトファンを含む枝豆や豆腐といった大豆製品、牛乳やチーズなどの乳製品や、ビタミンB6を含むバナナや、さんま、マグロなどを積極的に取り入れましょう。
夏季うつは、夏の時期だけに起こる症状です。食欲低下や不眠といった夏バテに似た症状に、うつのような症状を伴うことが特徴です。医学的には季節性感情障害に分類されます。男性に比べて女性に多いといわれています。完全に予防することは難しいとはされますが、体への負担を小さくする工夫をして、上手に付き合っていきましょう。