記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/9/13
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
脳を構成する組織のひとつである下垂体は、さまざまなホルモンの分泌に関わりのある臓器です。この記事では、下垂体の働きや分泌に関わるホルモンの種類、分泌不足による体への影響などを解説します。
下垂体は、脳下垂体とも呼ばれる器官で、脳の間脳(かんのう)を構成するひとつで、さまざまなホルモンの働きをコントロールしています。
脳の中には、脳室とよばれる4つの空間があり、左側脳室、右側脳室、第三脳室、第四脳室と呼ばれています。間脳は、脳幹の中央奥にある第三脳室を囲む部位をいい、視床、視床上部、視床下部、視床後部、松果体(しょうかたい)、下垂体から構成されています。
下垂体は、間脳の中でも前方にあり、1cmにも満たない小さな器官です。女性の小指の先ほどの大きさともいわれる下垂体は、下垂体前葉と下垂体後葉の2つに分けられます。下垂体前葉、後葉から分泌されるホルモンは、骨や筋肉などの成長促進や、さまざまな代謝に関わっています。
下垂体前葉は、視床下部で合成されるホルモンの刺激を受けて、ホルモンを合成し分泌します。一方、下垂体後葉は、視床下部で合成され運搬されたホルモンを分泌しています。
下垂体は、人間のからだに必要なさまざまなホルモンを分泌しています。
下垂体から分泌されるホルモンの中で、最も多く存在するホルモンです。骨や筋肉の成長をうながします。また、脂肪を分解したり、血液中のコレステロールを低下させたりします。また、集中力の低下や気分の落ち込みと行った精神面のコントロールにも関わっています。
生殖器官を刺激して、精子と卵子の生成や性ホルモンの生成をうながします。
甲状腺を刺激して、甲状腺ホルモンの生成をうながします。甲状腺ホルモンは、心臓や肝臓、腎臓などの全身の臓器に運ばれて代謝を活発にしています。
副腎皮質を刺激して、コルチゾールなどのホルモンの生成をうながします。
乳房を刺激し、乳汁の生成を促進します。
腎臓に作用して、体内の水分量の調整を行います。
乳腺の筋肉収縮をうながして、乳汁を排出させます。また、出産時に子宮を収縮させる作用があります。
下垂体の機能低下が起こると、各種ホルモンの生成や分泌が滞ることになります。ホルモン量が不足することで、次のような症状が起こる可能性があります。
子どもでは、身長が伸びず、全体的な成長が悪くなります。成人では、コレステロールが増加し動脈硬化や心筋梗塞、狭心症のリスクとなります。また、内蔵脂肪が増えると、インスリンの働きが悪くなり、糖尿病を引き起こすこともあります。ほかに、筋肉量や骨密度の低下が起こり、疲れやすくなったり、骨が弱くなったりします。
女性では月経障害、男性では清掃が萎縮して精子の産生低下が起こります。男性、女性ともに不妊の原因となります。
甲状腺刺激ホルモンがないため、甲状腺ホルモンの生成が減少します。冷え性、体重増加、便秘、皮膚の乾燥のほか、イライラするなどの精神症状があらわれます。
副腎は、さまざまなストレスに抵抗する抗ストレスホルモンの分泌が減ります。ストレスに対して抵抗しづらくなり、食欲不振、倦怠感、低血圧、低血糖や、低ナトリウム血症による意識障害といった症状があります。
出産後の乳汁(母乳)が減少したり、出なかったりします。プロラクチン欠乏症は男性でも起こる可能性がありますが、症状としてははっきりしません。
下垂体は、脳の下部にある小さな器官です。複数のホルモンを分泌して、骨や筋肉の成長をうながしたり、他の臓器にはたらきかけてホルモン分泌をうながしたりしています。下垂体の機能低下が起こると、下垂体からのホルモンの分泌が障害されます。食欲不振や倦怠感といった症状や、生殖機能への影響など、さまざまな全身の症状があらわれることになります。