記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/10/6
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
病気の原因は生活習慣やその人の体質、感染症だけではありません。近年では少なくなっていますが、虫が原因で発症する病気も確かに存在しています。この記事では、虫の吸血や寄生で起こる病気の1つ「ツツガムシ病」がどのような病気なのか、引き起こされる症状や治療・予防の方法とあわせて解説します。
ツツガムシ病は、ダニの幼虫が人間を吸血することで起こる感染症のひとつです。病原体となるのは「リケッチア」という微生物で、主に山林などに生息する野生のネズミを媒介とし、感染を広げています。このリケッチアに感染したネズミを、ツツガムシに分類されるダニの幼虫が吸血することで感染し、媒介となって人間への感染も引き起こすのです。
なおツツガムシ病の媒介となるダニの幼虫は、日本の山林や河川敷など、草が多く生えているところに全国的に生息しています。このためツツガムシ病の感染被害は、草木の多い山林や農地に長時間滞在したときに多く報告されているのです。寄生虫よりも小さく、細菌よりもやや大きいサイズのリケッチアは、人体に感染・侵入した後は、リンパ球や組織球など細胞のなかに寄生・潜伏します。
ツツガムシ病に感染すると、10~14日の潜伏期間を経て、以下のような症状が段階的に発生します。
はじめはひどい風邪のような症状がみられますが、早めの適切に治療・対処を行わないと重症化し、脳・肺・心臓・血管など重要な臓器にも影響が出てきます。ツツガムシ病は、感染すると死亡するリスクもある非常に恐ろしい病気なのです。
治療が遅れると死亡することもあるツツガムシ病は、確定診断を待たず、発病疑いの段階から入院して治療を始めていくのが一般的です。具体的には、高熱と脱水による栄養障害への対症療法として点滴を行いつつ、「テトラサイクリン」という抗生物質を投与することになります。テトラサイクリンはツツガムシ病に効果的な抗生物質で、主に内服薬として使用します。
なお、治療にかかる期間は1カ月ほどで、点滴による栄養障害への治療は約1週間、テトラサイクリンの内服は2~3週間ほど必要と言われています。
ツツガムシ病の原因となるダニは、日本の山林や田畑に幅広く生息しています。このため、殺虫剤などを屋外に散布して予防する方法は経済的・環境衛生的に考えても、適切ではありません。また、感染・発病を予防するようなワクチンも開発されていないため、現状できる最も有効な予防策は「ダニに付着・吸血をさせないこと」です。
具体的には、以下の対策で屋外で体にダニを付着させず、ダニが吸血を始めるまでの10時間で、ダニを体から落としてしまうのが良いでしょう。
ツツガムシと呼ばれる幼いダニが媒介となるツツガムシ病は、発病すると死に至ることもある恐ろしい感染症です。病原体となるのはリケッチアという微生物で、吸血したダニから人間の体内細胞に入り込んで寄生し、10~14日の潜伏期間後からさまざまな症状を引き起こします。重症化すると重要な臓器にも深刻な影響が及ぶため、テトラサイクリンという抗生物質での早期治療が必要になります。疑わしい症状が出たら、すぐ病院へ行きましょう。