記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/8/20
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
ストーマとはいわゆる「人工肛門」のことですが、この人工肛門にはもともとの肛門のように排便を抑える機能がないため、排便に備えて「ストーマ袋」という専用の排出袋をつけておく必要があります。
ところで、私たちの体は便や尿だけでなく、溜まったガスも定期的に排出しています。このガスもストーマ袋に溜まってしまうことがありますが、その場合はどうやってガス抜きを行うのでしょうか。
ストーマ袋にガスが溜まって膨らむことを「バルーニング現象」と呼びます。一般的に消化管ストーマの場合、ストーマ袋の上部には脱臭フィルターがついているため、袋内のガスは自然に脱臭されながら抜けていくようになっています。しかし、以下のような原因によってフィルターからうまくガスが抜けなくなってしまうと、袋内にガスが充満してしまうことがあります。
このような場合、バルーニング現象をそのままにしておくと、ガスの圧力によって面板や皮膚保護剤が剥がれてしまうことがあります。そのため、ストーマ袋がガスで膨らんでいることがわかったら、何らかの方法でガスを抜く必要があります。
もっとも簡単で根本的な対処法は、1日1回装具を交換することです。また、二品系装具というストーマ袋と粘着式面板が分離しているタイプの装具(ツーピース装具とも呼ばれる)を使用し、ストーマ袋だけを頻繁に交換するようにするのも、フィルターが頻繁に新しくなり、目詰まりするリスクが大きく減るため効果的です。
また、完全に交換しなくても、二品系装具の場合、嵌合部を少しだけ外すとそこからガスを排出できるため、簡単に対処することもできます。同じように、排出タイプのストーマ袋を使っている場合、ストーマ袋の排出口を少しだけ開き、過剰なガスを抜いてあげると良いでしょう。
このように溜まるガスの原因は約70%が食事の際に一緒に飲み込んでしまう「空気」です。空気を飲み込んでしまう原因となる「話しながら食事をする」「すするような食べ方をする」という2点を意識的に避けることで、ガスの量をぐっと減らすことができます。
では残りの30%はなにかというと、腸内細菌による食材の分解です。つまり、ガスを減らすためのもう一つの方法として、食事から見直すという手もあります。食事の内容を記録しておけば、バルーニング現象が起こったときの食材を特定し、避けることもできるでしょう。とくに、以下のような食材はガスが出やすいとされています。
例えば、食物繊維は腸内細菌(善玉菌)の良いエサとなりますが、言い換えれば分解されてガスも出やすいということです。緑黄色野菜や豆類も同じように食物繊維が豊富なため、ガスが排出されやすい食材です。具体的には、カリフラワー・キャベツ・ネギ・貝・ヤマイモ・ラーメン・サツマイモ・魚介類などに注意しましょう。
炭酸飲料やビールにはもともと炭酸ガスが含まれているため、飲むと炭酸ガスがそのまま排出されます。これらの飲料を飲むのを無理にやめる必要はありませんが、バルーニング現象が起こり続けるようであれば、控えたほうがよいでしょう。
反対に、ガスを抑えられる食材は以下のようなものです。
これらはいずれも整腸作用があるとされるもので、ガスの発生を抑えるとともに、発生したガスのにおいを抑える働きがあります。ぜひ、積極的に摂取するようにしましょう。
バルーニング現象への対処法として、装具を頻繁に交換する、二品系装具にしてストーマ袋を頻繁に交換する、排出タイプのストーマ袋の排出口からガス抜きする、などの方法があります。
それでもガスが溜まりがちな場合、食事の方法や内容を見直すのがおすすめです。話しながら、すすりながら食べることをしない、という空気を飲み込まない工夫はもちろん、ガスの出やすい食材を控え、抑える食材を積極的に食べると良いでしょう。