記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/8/12
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
透析(人工透析、血液透析)とは、体内の老廃物をろ過して排出するという腎臓の機能が低下したことにより、体外の機械を通すことで老廃物を除去する治療法です。人工透析を受ける人は、水分制限を行わなくてはなりません。
では、なぜ透析患者さんは水分量を制限しなくてはならないのでしょうか?また、ムリなく上手に水分制限するにはどんなことに気をつければ良いのでしょうか?
人工透析を受けるほど腎機能が低下している人は、尿が出ないか、またはごく少量しか出ないことが多いです。腎機能が正常な人では、摂取した水分のうち余分なものの多くは尿としてどんどん排出されるのですが、腎機能が低下している人では、摂取した水分量が多すぎても汗や涙などでしか排出されないため、体内に水がどんどん溜まってしまうのです。
そこで、人工透析を始めるときには、体に余分な水分がない状態で透析後に達成すべき目標体重「ドライウェイト」を設定します。ドライウェイトは血圧・心胸比・心エコー検査などの所見をもとに総合的に判断され、月1回程度の検査値によって定期的に見直されます。
透析患者さんは体内に溜まる水分量がそのまま体重の増減につながりますので、透析患者さんにとって体重管理とは水分管理のことと言っても過言ではありません。透析と透析の間のドライウェイトの増加は、間が1日の場合で3%以内、2日の場合で5%以内に抑えるよう気をつけましょう。摂取する水は主に飲み水ですから、体重の増加を確認しながら水を飲むのがおすすめです。
水分制限のコツとしては、まず飲み水を制限することが重要です。1日500~600mL程度を目指すと良いことから、ペットボトル1本を持ち歩き、そのペットボトル以外は飲まないと決めておく、なども良いでしょう。もちろん真水だけでなくお茶・ジュース・コーヒー・お酒も含まれますので、これらの水分も含めて500~600mLに抑えられるのが理想です。水を飲む代わりに氷をゆっくり舐める、お茶を熱くしてごく少量にする、などの工夫もおすすめです。
また、可能なら食事に含まれる水分も控えめにすると良いでしょう。例えば、鍋ものや汁もの・麺類などはどうしても食事とともに水分を摂取してしまいます。焼く・揚げる・炒めるなど、水分を含みにくい調理法もおすすめです。できれば主食も、お米より水分量が少ないパンやお餅に変えていくと良いでしょう。
その他、水分量が多く控えめにした方が良い食品は以下のとおりです。
水分の増加は単なる体重増加の問題ではなく、むくみや呼吸困難、血圧上昇などのさまざまな合併症状を引き起こします。症状が進行すると心不全や肺水腫の原因になることもありますので、過剰に水分を摂りすぎないよう注意しましょう。
また、水分を摂りすぎないようにするためには、塩分量の制限も必要です。塩分を摂取しすぎるとのどの渇きを覚えやすくなり、つい水をたくさん飲んでしまいます。そのため、塩分量は1日6g以下に抑えましょう。調味料や食品に含まれる塩分量をよく把握し、無理のないよう減塩食を作ったり食べたりしていきましょう。
具体的な減塩のポイントには以下のようなものがあります。
これらのポイントを心がけ、上手に減塩食生活を送りましょう。
夏場は気温が上がり、汗をたくさんかくため、普段は水分補給を制限しなくてはならないような透析患者さんも、普段どおりの制限された水分量のみでは脱水症状を引き起こす可能性があります。さらに、クーラーなどによる屋内外の気温差で下痢をすることもありますので、体から出ていく水分量にとくに注意すべき季節です。
脱水症状を起こすと、熱中症や脳梗塞・心筋梗塞などの危険性が高まります。とはいえ、必要以上に水分を摂取するのも心臓に負担がかかってしまいます。そこで、透析患者さんは以下のような点に気をつけて水分補給を行いましょう。
屋外での肉体労働や運動など、大量に発汗した場合は通常の500~600mLを守る必要はありませんので、適度に水分補給しましょう。体重を測りながら少しずつこまめに補給を行い、決して一度に大量に水を飲まないよう気をつけることが大切です。また、水分補給はスポーツドリンクでも構いませんが、スポーツドリンクには糖分や塩分が多いため、飲みすぎないよう注意しましょう。
塩分に関しては、多量の発汗・下痢・嘔吐がなければ、それほど意識して摂取量を増やさなくても構いません。とくに、熱中症対策用の飴や経口補水液などは塩分濃度が高いため、まず飲む必要はないでしょう。普段どおりの食事で構いません。ただし、多量の発汗に加えて風邪などで下痢や嘔吐の症状があった、など大量の水分が一度に失われた場合は、医師に相談しましょう。
透析患者さんは、体内に余分な水分が溜まりやすいため、汗の量が少ない秋や冬、春先などでは1日500〜600mL程度の水分を摂取すれば十分と考えられます。そのため、飲み水や食事に含まれる水分量に気をつけましょう。
とはいえ、夏場は大量に発汗して水分が失われやすい季節です。夏は発汗量に応じ、体重を測りながらこまめに水分補給を行いましょう。