夏になると甘いものが恋しくなる理由は?食べすぎないコツはある?

2019/8/13

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

夏と言えばスイカやかき氷、お祭りの屋台の水飴やわたあめなど、甘いものに縁がある季節です。実は、単なる風物詩というだけでなく、夏に甘いものが恋しくなる、美味しく感じるのには理由があります。この記事では、夏に甘いものを食べたくなる理由とともに、食べすぎを防ぐコツをご紹介します。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

夏になると甘いものが食べたくなるのはどうして?

甘いものの働きのひとつに「発散させる」というものがあります。トロピカルジュースやトロピカルフルーツなど、南国の食べ物や飲み物は比較的甘いものが多く、北国ほど甘い食べ物よりも塩辛い食べ物の方が多い傾向にあるのは、この働きを経験則的に利用していると考えられます。

南の方(赤道に近い方)の国々では、気候が温暖なぶん体内に熱もこもりやすく、その熱を発散させなくてはなりません。熱を発散させないままだと、体内にこもった熱がのぼせや熱中症を引き起こすこともありますので、甘い果物や食べ物の力を借りて暑さを「発散」する文化が残ったとも言えます。

また、甘いものには心のストレスや緊張を発散し、リラックスさせたり、張り詰めてしまった気持ちを緩めたりする働きもあります。また、肉類や塩味は引き締めるタイプの食材なので、こうした食材が多いときにも甘いものでバランスを取ろうとすることがあります。

しかし、精製された砂糖は習慣化しやすい性質もあります。幼い頃から砂糖類・菓子類を習慣化しすぎないよう、適量を守ることが大切です。また、夏野菜と言われるトウモロコシ・トマト・キュウリなどの野菜やスイカなどの果物も、ほてった体の熱を発散させてくれます。お菓子だけでなく、こうした野菜や果物を上手に取り入れていきましょう。

糖分を摂りすぎると体にどんな影響がある?

糖分を摂取しすぎると、主に以下のような影響が現れます。

糖分をたくさん欲しがるようになる
糖分は摂りすぎると「糖分依存」を引き起こします。糖分を摂りすぎると、多いときはハイに、少ないときは落ち込むようになります。気持ちのアップダウンが激しくなることで、気分をよくするために糖分を摂らなければ、という錯覚を起こしてしまいます。また、味覚が麻痺して少しの甘味では満足できなくなることもあります。
体重が増える
そもそも甘い物=糖分は非常にカロリーが高く、太りやすい食べ物です。甘いものにはタンパク質や食物繊維が少ないため、満腹感を得にくく、大量に食べてしまいがちです。また、糖分摂りすぎの状態が続くと、インスリンを多く分泌しすぎてしまい、やがて正常に働かなくなることもあります。
気分の浮き沈みが激しくなる
1番目の項目と重複しますが、波のようなホルモン反応によって甘いものがあるときはハイに、無いときは落ち込んだりイライラしたりします。これは「シュガーハイ」とも呼ばれる状態で、砂糖で気分が上がった後に一気に下がるため、落ちこんだりイライラしやすくなります。また、糖分の摂りすぎは体内の炎症を引き起こしやすくするため、抑うつ症状のリスクを高めることも明らかになっています。
肌荒れが目立つようになった
糖分の摂りすぎによって体内のインスリンレベルが高まると、ホルモンバランスが乱れます。これにより、ニキビや「酒さ(しゅさ)」が発生しやすくなってお肌に悪影響を及ぼします。
虫歯が増えた
甘いものを食べた後、歯の間に残ったカスをバクテリアが食べると、酸が発生して歯を蝕みます。
エネルギー不足を感じるようになった
糖分を一度に大量に摂ると、血糖値のアップダウンも激しくなるため、エネルギー不足を感じやすくなります。糖分を摂りすぎている反面、タンパク質や食物繊維を十分に摂取できず、エネルギー不足になっている可能性もあります。

糖分を摂取すると、腸から素早く吸収され、血糖値がぐんと上がります。血糖値が上がると、上がりっぱなしを防ぐために「インスリン」という血糖値を下げる働きのあるホルモンが分泌されます。すると、今度は一気に血糖値が下がります。こうしたジェットコースターのような血糖値のアップダウンは気分のアップダウンともだいたい重なるため、激しく気分が上がった後、一気に下がることになります。

つまり、上がった直後に一気に下がることで、気分の落ち込みやイライラ感をより激しく感じてしまうということになります。また、このような急激なアップダウンを繰り返していると、インスリンを分泌する膵臓の細胞が弱ってしまったり、各組織や細胞に対してインスリンが効きにくくなったりします

もちろん、糖分を絶対に摂取してはいけない、ということではありませんが、一度に大量の糖分を摂取することはできるだけ控えましょう。

夏の糖分摂りすぎを防ぐには?

最初にもご紹介したように、夏は体内に熱がこもりやすく、発散のためについつい甘いものを食べたくなってしまう時期ですが、食べすぎると体に悪影響を及ぼします。日ごろから食べすぎないよう、甘いものはたまのお楽しみにとっておきましょう。

お菓子を減らすのはストレスがたまりそう、と不安なときは、コーヒーやジュース、清涼飲料水、スポーツドリンクといった飲み物から減らしていくのがおすすめです。甘いジュースにはビタミンやミネラルが少ないことはもちろん、砂糖が思っている以上に多く含まれていることが多いです。夏は水分補給が欠かせませんが、できるだけミネラルウォーターや砂糖の入っていないお茶などを選びましょう。ただし、激しい運動で大量に汗をかいたときです。スポーツドリンクなど、甘みのついたドリンクで水分補給してください。

 

果物やイモ類、トウモロコシ、ニンジン、カボチャなどは、糖分だけでなく、食物繊維やビタミン類も多く含まれています。お菓子の代わりに取り入れましょう。血糖値が急激に上がりにくい食材を選ぶと急激なアップダウンを防げるため、気分や体調に不調をきたしにくくなります。

食べても血糖値が急激に上がりにくい食材のことを「GI値が低い」と言いますが、多くの果物類が低GI値の食材にあたります。また、白米よりも玄米や雑穀入りのご飯、うどんよりそば、白砂糖より黒砂糖というように、色の濃い食材は比較的GI値の低いものが多いため、色の濃い食材を選ぶというのも一つの目安です。

おわりに:夏は「発散」のために甘いものが恋しくなる。摂り方に注意

「トロピカルジュース」や「トロピカルフルーツ」など、南国の食文化に甘いものが多いのと同じように、夏の気温が高い時期には甘いものが恋しくなります。これは、甘いものには熱やストレスを発散する働きがあるからだと考えられています。

しかし、甘いものの食べ過ぎは逆に精神や体に大きな負担をかけてしまいます。甘いものを摂取する際は食べ過ぎにならないよう、日常生活の中から見直していきましょう。

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