夏に腎臓に負担がかかりやすい理由と腎機能が低下している人の水分補給の注意点

2024/7/17

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

腎臓は、老廃物を集め尿として排出することがおもな役割であり、環境に急激な変化が起きると負担がかかりやすくなり、腎機能の低下を引き起こすこともあります。この記事では、夏に腎臓に負担がかかりやすくなる理由と腎機能が低下している人の水分補給の注意点について解説していきます。

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腎臓の働き

腎臓のおもな役割は、血液をろ過して体中のさまざまな組織の活動で生じた老廃物をこし取り、尿を作ることです。そのほか以下の役割もあります。

  • 体内の水分・電解質(ナトリウムなど)の調節
  • 血液が極度に酸性やアルカリ性に傾かないよう調節
  • 血圧を調節するホルモンや、赤血球を造るホルモンの分泌
  • タンパク質代謝物の排泄、骨を造るホルモンの分泌

このように、腎臓は老廃物をこし取って尿を作るフィルターとしての役割だけでなく、血液や水分、電解質、ホルモンなどの調節を行い、体内環境を全体的に調整することにも関わっています。

夏に腎臓に負担がかかりやすい理由

上記で紹介したように、腎臓は水分・電解質・ホルモンなどによって体内環境を調整しているため、夏の暑い時期は、大量に発汗するので脱水に陥りやすい・アルコールを摂取する機会が増えやすいなどの理由で、腎臓に負担がかかりやすいといわれています。

アルコールを摂取する機会が増えると腎臓に負担がかかりやすくなるのは、アルコールに利尿作用があることが関係しています。アルコールを摂取して排尿量が増えると、体内の水分のより多く排出されることになります。体内の水分量が減ることで尿量も減り、老廃物をきちんと排出できなくなることで腎臓に老廃物が溜まり、腎臓に負担がかかるようになります。また、体内の水分量が減ると、血液の水分量も減るため、腎臓へ供給される血液量が不足しやすくなります。腎臓の血液供給量が不足することも、腎臓に負担がかかる原因になります。なお、アルコール摂取は尿酸値が上昇する原因にもなり、利尿作用との相互作用によって尿酸が腎臓内で結晶化し「尿酸結石」という尿路結石の一種ができてしまうこともあります。

暑さで大量に汗をかき脱水状態に陥ると、尿の量が減ることで腎臓に老廃物が溜まりやすくなり、腎臓に負担がかかりやすくなります。また、腎臓内で「シュウ酸」と「カルシウム」が結合し、尿路結石ができやすくなることもあります。

腎臓がこのような負担を長期にわたって受け続けると、体内の老廃物や毒素をろ過して排出する能力が低下していき、最終的に慢性腎臓病に陥ることもあります。慢性腎臓病はある程度進行するまでは自覚症状がほとんど現れないため、症状が出て気づいた頃、あるいは健康診断などで指摘される頃には既に腎機能が回復不可能で、透析や腎移植が必要な状態にまでなっていることもあります。

腎臓の機能低下の兆候

初期の慢性腎臓病には自覚症状がほとんどないとされていますが、腎臓の機能低下の兆候として現れる可能性のある症状はいくつかあります。以下のような症状が複数見られるようなら、腎機能が低下している可能性があるため、早めに医師に相談しましょう。

  • 疲れやすく、立ちくらみがよく起こる
  • 二日酔いになるほどアルコールを摂取することがしばしばある
  • 塩分の多い食事が好きで、よく食べる
  • 足がよくつる
  • 夜間によくトイレに行く

腎機能が低下している人の水分補給の注意点

腎機能の低下のみを指摘されていて、人工透析や移植などが必要なレベルまで進行していないという状態なら、真水の水分補給についてとくに制限は必要ないといわれています。しかし、経口補水液などの塩分を含む飲料水などについては、医師の指示を仰ぎましょう。また、食事などから塩分を過剰に摂取しすぎないよう、食生活についての指導を受ける必要があります。ただし、心不全や肺水腫などを合併発症している場合については、水分制限が必要となることもあります。水分や食事については、必ず主治医に相談しましょう。

透析を受けている人の場合、水分量も厳格に制限する必要があります。排尿量にもよりますが、人工透析を受けるレベルの人は自ら排出できる尿量が非常に少ないため、飲んだ分の水がどんどん体内に溜まってしまうことが大きな問題になります。基本的には、透析から透析の間までの体重増加(飲んだ水分によって増えた体重)がドライウェイトの3~5%以内におさまるようにするのが目安になり、例えばドライウェイトが50kgの人であれば1.5kg~2.5kg程度の体重増加が一般的な許容範囲となります。

人工透析を受けている人の場合、汗をかいたからと水分や塩分をどんどん摂取してしまうと心臓に負担をかけてしまいます。全く水分補給をしないのも熱中症の危険性がありますので、体重増加をこまめにチェックしながら、少しずつ水分を補給するようにしてください。
※医師の指示に従うことが大切です。自己判断せず、必ず医師に指示を仰いでください。

おわりに:大量発汗やアルコール摂取の機会が増えるのは腎臓に負担がかかる原因になる

夏になると大量に汗をかくようになり、アルコール摂取の機会も増えます。アルコールには、利尿作用により脱水のリスクを高め、尿酸値を上昇させる原因にもなります。これらは腎臓に負担をかける原因になり、腎臓の老廃物が増えたり、尿路結石ができたりするリスクも高めます。負担による腎機能の低下を予防するには真水での水分補給が大切になりますが、人工透析など、すでに腎臓の治療を受けている場合は摂取制限があるため、水分の摂取量や食事の内容については必ず医師に指示を仰ぎましょう。

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