不眠症

2017/10/17

二宮 英樹 先生

記事監修医師

東大医学部卒、セレオ八王子メディカルクリニック

二宮 英樹 先生

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

概要

夜、なかなか寝付けない、夜中に何度も目が覚める、朝早くに目が覚めてしまう、寝ているのに眠った気がしないなど睡眠が十分に取れないために、日中に眠気や集中力の低下などが起こり、仕事や日常生活に支障が起こる状態を不眠症と言います。

健康的な生活のためには十分な睡眠を取ることが重要です。不眠症は精神的および肉体的に影響を与える可能性があり、日中に集中したり仕事をすることが難しくなります。十分な睡眠を定期的に取らなければ、高血圧、心臓病、糖尿病などの病気のリスクが高くなります。
大人で毎晩約7〜8時間の睡眠が必要です。通常、昼間眠くなければ十分睡眠を取っているといえるでしょう。必要な睡眠量は、成人期を通して一定していますが、睡眠パターンは年齢とともに変化する可能性があります。例えば、高齢者は夜間に眠りが浅く、日中に昼寝することがあります。

症状

一口に不眠症と言っても、症状は人それぞれです。大きく分けて4つのタイプがあります。
1.入眠障害:夜、なかなか眠れない
2.中途覚醒:夜中に何度も目が覚めてしまう
3.朝早くに目が覚めてしまう人
4.熟眠障害:睡眠時間は十分なのに眠った気がしないまた、夜なかなか眠れず、やっと眠ったと思ったら1時間ほどで目が覚めてしまったという複合型の不眠を訴える人もいます。

また不眠症の中には、不眠を引き起こす病気が隠れていることもあります。夜中眠っているときに呼吸が一時的に止まってしまうため熟睡できず、日中に強い眠気が起こる「睡眠時無呼吸症候群」や、横になると足に虫がはっているようなむずむず感やしびれ感を感じて夜眠れない「むずむず足症候群」といった変わった症状が原因で不眠症になることがあります。

原因

不眠症を引き起こす可能性のあるものには、以下のものがあります。
・ストレス
・不安
・うつ病
・体の痛みや痒み、咳などの体調不良
・運動不足
・カフェイン、アルコール、またはニコチンの過剰摂取
・勤務シフトの変化
・騒音や部屋の明るさ、寝具の問題など睡眠環境
・不規則な睡眠スケジュールなどの睡眠不足
・眠れないほどの心配ごと
うつ病や特定の薬(心臓・血圧の薬、アレルギー薬、コルチコステロイドなど)も不眠症の原因となります。

不眠症の原因が明らかでない場合は、睡眠日誌に記入するよう指示されることがあります。いつ寝るか、寝るまでにどれくらいの時間がかかるか、夜に起きる頻度、何時間眠るかを記録します。睡眠日記は、睡眠に影響を与えるパターンや状態を特定するのに役立ちます。

診断

一般的には、
・1週間に何回眠れない時があるか?
・日中に眠気はあるか?
・日常生活に支障はあるか?
など不眠の状態について詳しく伺った上で診断します。

睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は、睡眠中の呼吸状態などを検査する睡眠ポリグラフ検査を行うことがあります。

治療

生活スタイルについて見直し、夜の睡眠を妨げている生活の改善を行ったり、夜の睡眠を促す生活指導を行います。生活指導や生活改善だけでは不十分な場合は、睡眠導入剤や睡眠薬などの薬による治療を行います。
睡眠薬はクリニックに通院しながら適切に使用すれば安全に使えます。また依存性を怖がる方もいらっしゃいますが、最近では依存性がなく、ふらつきなどの副作用が少ない新しい睡眠薬も出ています。
患者さん自身に自分の睡眠について把握してもらうために睡眠の状況を記録する睡眠日誌をつけてもらうこともあります。

 

予防

生活・自宅で気を付ける事

不眠症にならないために

「8時間睡眠でなければいけない」などと睡眠時間に強いこだわりを持っておられる方が多くいますが、必要な睡眠時間は、人によって違い、6時間睡眠で十分の方もいれば、10時間必要な方もいます。
睡眠時間に強くこだわりすぎると、脳が興奮し、夜の睡眠を妨げてしまいます。睡眠時間に決まりはありません。「自分は睡眠不足では?」と気になったときは、昼食後の眠けは別にして、日中に眠気が起こらなければ睡眠は足りていると考えるようにしましょう。

また一般的にも、毎日決まったようにグッスリ眠れる方は少なく、グッスリ眠れる日もあれば、眠れない日もある方がほとんどです。眠れなかったことを意識しすぎると、「今夜も眠れなかったら?」と睡眠への不安が強くなり、眠れなくなってしまいます。眠れない日もあるのが当たり前と考えるようにしましょう。

カフェインが入っているコーヒー、紅茶、緑茶

夕方以降に飲むと、カフェインの覚醒作用は6~7時間持続するため、夜眠りにくくなってしまいます。飲む場合は、自分自身の就寝時間を考えて飲むようにしましょう。

寝る前のアルコール

眠れないからと言って、アルコールを飲む方がいます。アルコールは確かに寝つきを良くしますが、睡眠自体は浅くなり、睡眠途中で目が覚めやすくなります。

食事

遅くても就寝時間の2~3時間前までには済ませましょう。
仕事が遅くなったりして、夕食後すぐに眠る生活を送っておられる方がいますが、食後は、消化吸収のため、胃腸が活発に動きます。胃腸が活発に動いているときに眠ると、睡眠が邪魔され、グッスリ眠ることができません。
どうしても帰宅が遅くなり、食事と就寝までの間の時間が十分確保できない場合は、消化の良いものを食べるようにしましょう。

部屋の明るさ

明るい環境では眠りにくいことは皆さん良ごご存知の事と思いますが、実は、暗すぎてもグッスリ眠ることはできません。月明かり程度の明るさが、最も睡眠に適した明るさと言われています。
照明器具を調整するなどして、ほんのり明るい環境で寝るようにしましょう。

朝日を浴びる

夜、暗くなってくると、「メラトニン」と呼ばれる睡眠を促すホルモンが分泌され、夜、眠ることができています。この夜眠るために必要なメラトニンが十分に分泌されるためには、規則正しい生活と朝日を浴びることが必要です。不規則な生活をしていたり、休日だからと寝だめをしたり、夜型の生活で起きるのは昼なんて生活をしていると、「メラトニン」の分泌が悪くなって、夜、眠れなくなってしまいます。
毎日、決まった時間には起床して、朝日を浴びるようにしましょう。

昼寝

昼食後~午後3時までの間で、30分から1時間程度の昼寝であれば、夜の睡眠に影響を与えることはありません。昨日はあまり眠れなかったという日は、昼寝をして体の疲れを取るようにしましょう。
※眠れなくても横になって体を休めるだけでも良いです。

関連知識

良質な睡眠をとるために

年を取るにつれて、必要な睡眠時間が少なくなることを覚えておいてください。また、睡眠時間が5〜6時間しか必要ない人もいますが、ほとんどの人は7〜8時間必要です。睡眠は通常3時間周期で起こるので、少なくとも3時間の睡眠を連続して得ることが重要です。

受診の目安

夜眠れない日が続き、「今夜もまた眠れないのでは?」と思うようになったら、それは不眠の始まりです。専門機関を受診しにくい場合は、早めに、かかりつけの医師に相談しましょう。

医師に相談するための質問

・自分の不眠の原因は何ですか?何か不眠の原因となる病気はありますか?
・睡眠薬以外で、どのようなことに気をつければ不眠が改善しますか?
・睡眠薬の副作用はなんですか?
・睡眠薬は依存性がありますか?一度始めたら、睡眠薬なしでは眠れないようになりませんか?

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