記事監修医師
東大医学部卒、セレオ八王子メディカルクリニック
二宮 英樹 先生
2017/9/14
記事監修医師
東大医学部卒、セレオ八王子メディカルクリニック
二宮 英樹 先生
外傷性脳損傷(Traumatic Brain Injury; TBI)は、事故や転倒、スポーツなどで頭を激しく打ちつけた場合に起こります。 頭部を打撲すると、脳震とう、脳挫傷、頭蓋内血腫など様々なことが起こる可能性がありますが、外傷性脳損傷(TBI)はそれらを総称した呼び方です。
人によって損傷した部位や重症度が違い、治療方針や後遺症の可能性も異なります。
・脳震とう:脳の激しい揺れや頭蓋骨に脳がぶつかることにより、記憶喪失や頭痛、吐き気などの症状が現れます。それらの症状は1週間ほどで治りますが、もっと長く続くこともあります。
・脳挫傷:頭のCTやMRIで脳の損傷が確認できる状態です。脳内に傷や小さな出血が見られます。脳震とうと同じような記憶障害、頭痛、吐き気などが起こります。他にも意識が悪くなったり、性格の変化などもっと重い症状が現れることもあります。
・頭蓋内血腫:いわゆる脳出血の中で、外傷を原因としたものです。出血が多ければ、手足の麻痺や言葉の障害、意識が悪くなるなど、症状が悪くなります。場合によっては重い後遺症が残ったり、あるいは助からない可能性もあります。
・外傷性くも膜下出血:細い血管が切れたりして、脳と頭蓋骨の間にあるくも膜下腔に出血が見られます。
・急性硬膜外血腫:頭蓋骨が骨折しているときに起こります。頭蓋骨と硬膜の間のスペースに出血して、脳が圧迫されて、意識が悪くなるなどの症状が出ます。出血が止まらない場合は、緊急で手術する必要があります。
・急性硬膜下血腫:頭蓋骨の内側にある硬膜と、脳の間のスペースに出血します。出血量が少ないと症状は軽いですが、出血量が多いと頭痛や意識が悪くなるなどの強い症状があらわれます。また脳自体も損傷していて、脳挫傷や頭蓋内血腫になっていることも多いので、重篤な状態であることが多いです。
・頭蓋骨骨折:名前の通り、頭蓋骨の骨折です。頭蓋骨の骨折があるときは、急性硬膜外血腫が起きていないか、気をつける必要があります。
・頭皮や顔面の血腫:頭蓋骨の外に出血している状態で、頭皮や額に固い塊を形成します。 黒い目は、目の周りの皮膚の下に出血があるときに形成される別のタイプの血腫です。 これらの血腫は、ほとんど損傷は残らず治癒します。
外傷性脳損傷の症状には、以下のものがあります。頭を打った後に以下のよな症状が現れた場合は、必ず医師の診察を受けてください。意識が悪かったり、全く呼びかけに応じないような場合は、救急車を呼んでください。
・意識消失
・記憶消失、記憶障害
・意識障害(会話のつじつまが合わない)
・頭痛
・吐き気
・めまい、ふらつき
・疲労感
中等度または重度の症状には、上記の症状に以下が含まれます。
・嘔吐、特に何度も繰り返す嘔吐
・手足の麻痺
・呼びかけに応じない
医師による診察、特に神経の異常がないかを調べます。さらに頭のCTやMRIで頭蓋骨や脳の損傷を調べます。
CTやMRIで分かる損傷がないけれども、上記のような症状があるときは、脳震とうと診断されます。その他の頭蓋内血腫や外傷性くも膜下出血、急性硬膜外血腫、急性硬膜下血腫はCTまたはMRIで診断できます。
外傷性脳損傷の治療は、診断や症状の重さによって異なります。
脳震とうであれば、そのまま様子を見ます。頭痛や吐き気の症状に対しては、頭痛薬や吐き気止めの薬が使われます。
急性硬膜外血腫や急性硬膜下血腫、頭蓋内血腫で、特に出血量が多く意識が悪いような場合は、手術をして、血腫を取り除いたり、止血したりします。
手足の麻痺や言葉の障害などの症状があらわれた場合は、病状が落ち着いてからリハビリテーションをします。
脳損傷よって失われた動作(歩くこと、話すこと、自分で食事を取ることなど)を取り戻すために、理学療法および作業療法が必要になることがあります。 理学療法は、ストレッチング、強化練習、筋肉トレーニングで構成されており、筋肉の柔軟性および協調性、そして体力向上に役立ちます。作業療法は、入浴、服装、料理、筆記などの日常動作を再学習するのに役立つものです。 作業療法士は、怪我とそれに対処する方法について教えてくれます。
・脳の出血や骨折はありますか?
・治療法はなんですか?
・回復にどれくらいの期間がかかりますか?
・後遺症は残りますか?
・リハビリは必要ですか?