気管支喘息

2017/10/17

二宮 英樹 先生

記事監修医師

東大医学部卒、セレオ八王子メディカルクリニック

二宮 英樹 先生

概要

気管支喘息とは、空気の通り道(気道)に炎症が続いて、気道が様々な刺激に対して敏感になってしまい、発作的に気道が狭くなることを繰り返す病気のことです。空気の通りが悪くなるため、「ゼーゼー、ヒューヒュー」とあえぐような呼吸となり、息苦しさを感じたり、咳込んだりするといった症状を繰り返すのが特徴です。

喘息の患者さんは、徐々に増えており、子どもの8~14%、大人の9~10%が喘息であるといわれています。子どもの喘息は、ダニなどに対するアレルギーが原因であることがほとんどで(アトピー型)、思春期になる頃には発作がみられなくなることもありますが、約3割が大人の喘息に移行し、一度よくなっても再発する場合があります。大人の喘息の6~8割は、大人になってから初めて発症し、40~60歳代での発症が多いのが特徴です。子どもの喘息と比べて、明らかな原因がわからない場合が多いとされています(非アトピー型)。

原因

アトピー型では、気道にダニやハウスダストなどの物質(アレルゲン)が入ってきた際に、免疫系が過剰に反応し、粘液を分泌したり、気道の周りの筋肉を収縮させたりすることによって、アレルゲンを体外に排出しようとする反応が過大におきてしまう結果、咳、痰、呼吸困難といった症状が起きてしまいます。非アトピー型では、アレルゲンが特定できないものの、風邪やインフルエンザなどの感染症、タバコの煙、気温や湿度の変化、ストレス、一部の解熱鎮痛薬、運動などの様々なものが刺激、誘因となって炎症が引き起こされ、さきほどと同じ症状が起きると考えられています。

症状

発作的に「ゼーゼー、ヒューヒュー」とあえぐような呼吸となり、咳や痰が出て、息苦しくなります(喘息発作)。咳や息苦しさなどの症状は、喘息以外の様々な肺や心臓の病気でも起こりえますが、喘息による症状は、特に夜間や明け方に起きやすく、無症状の時期を挟んで繰り返すという特徴があります。
また、一度目の発作がおさまっても、 3~12時間後に二度目の発作が起きることがあるため、よくなったと思っても、最低1日は注意して様子を見ていく必要があります。

診断

喘息は、典型的な症状を繰り返していて、それが他の病気によるものでないことを確かめることで診断されます。病院での検査では、呼吸機能検査によって、正常の人よりも気道の過敏性が高まっていることや、気管支を広げる吸入薬で息の流れが改善することを確かめたり、血液検査でアレルギー体質かどうかを調べたりすることが診断の参考になります。

治療

喘息の治療は、「長期管理のための日頃の治療」と、「発作がおこってしまった際の臨時の治療」にわかれますが、目標は、あくまで日頃の発作を起こさないようにし、健康な人と変わらない日常生活を送れるようにすることなので、長期管理の治療をしっかりしていくことが大切です。

長期管理のための日頃の治療

喘息は、症状がない期間においても気道の炎症が続いていて、刺激に対して過敏になっています。つまり、日頃から気道の炎症を抑えておく必要があり、そのための基本となる薬は、吸入のステロイド薬です。重症度に応じて薬の量を調節し、必要に応じて気管支を拡張させる薬(長時間作用性吸入β2刺激薬)や、他の抗アレルギー薬(ロイコトリエン受容体拮抗薬、抗IgE抗体など)を併用していきます。喘息発作が一定期間起こらず、運動を含む活動の制限がなくなり、呼吸機能が安定してくれば、薬を段階的に減らしたり、やめたりすることができるようになります。

発作時の治療

発作が起こってしまった場合には、即効性のある気管支拡張薬(短時間作用性吸入β2刺激薬)の吸入が必要となります。数回投与しても改善しなければ、ステロイドの点滴や、酸素吸入などを行い、状態によっては入院が必要になることもありますので、速やかに診察を受けることが大切です。

生活・自宅で気を付けること

・自己判断で薬を中止したりせずに、医師と相談をしながら、喘息の管理を継続して行うようにすることが大切です。自宅では、専用の機器を用いて自分の呼吸機能の状態を把握することで(ピークフローの測定)、自己管理に努めましょう。

・喘息の原因や誘因を避けるため、環境整備をして、ダニ・ハウスダストなどのアレルゲンを遠ざけ、禁煙を徹底し、家族や身近な人の近くでは吸わないようにしてもらうよう伝えておきましょう。

・風邪などの感染症は症状を悪化させるので、流行時期にはマスクをし、人が集まる場所やほこりっぽい場所などにおいてもマスクを着用しておくほうがよいです。

・ストレスにより悪化しやすいので、休養や睡眠時間を確保し、運動や入浴などで発散するようにしましょう。天気や気圧の変化(台風、寒冷前線、春・秋の季節の変わり目など)で悪くなることがありますので、適切な予防を行っていく必要もあります。人によっては、アルコールで発作が誘発されることもありますので、注意が必要です。

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