虐待による頭部外傷

2017/3/15

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

概要

虐待による頭部外傷は、揺さぶられっ子症候群とも呼ばれます。 これは、命にかかわったり、生涯にわたって障害を残す可能性のある児童虐待の一種です。 ほとんどの場合、この種の虐待の被害者は1歳未満ですが、5歳までの子供にも起こり得ます。

症状

乳幼児や幼児の虐待による頭部外傷が重症化すると、意識不明、けいれん発作、ショックを起こすことがあります。

虐待による頭部外傷の他の初期症状には、以下のようなものがあります。
・嘔吐
・異常な眠気
・しゃぶったり、飲み込みがうまくできない
・食べることに関心がない
・表情がかたい
・意識の変化
・笑ったり、声を発したり、話したりしない
・左右の瞳孔の大きさが異なる
・頭を上げることができない
・目の焦点を合わせたり、動きを追いかけることができない

多くの場合、虐待による頭部外傷は、子供の身体や知性に長期的な影響を与えてしまいます。 虐待による頭部外傷を経験した子供は、その後も医療、特殊教育、社会サービスに依存してしまう可能性があります。

頭部外傷を抱えての生活

外傷の重症度に応じて、子供を時間をかけて監視する必要があります。虐待による頭部外傷の経験者は、以下のような長期的な健康問題に苦しむ可能性があります。
・永久的な難聴
・視覚障害(失明を含む)
・けいれん発作
・発達、発語、知能発達の遅れ
・重度の知的障害
・記憶障害と注意障害
・脳性まひ

原因

虐待による頭部外傷は、赤ちゃんを激しく揺さぶったり、頭をぶつけたり、投げたり、落としたりしたときに起こります。これは、赤ちゃんが長時間泣いたり、小さな子供の要求に親や保護者がどう対処したらよいか分からない場合に起こります。
幼い子供を激しく揺さぶったり、頭をぶつけたりすると、子供の脳が頭蓋骨の中で前後に揺れます。これは、首の筋肉が完全に発達していない赤ちゃんに特に当てはまります。この動きによって、子供の脳は、血管、神経、組織が裂けて腫れ、傷つき、出血します。

診断

子供が虐待による頭部外傷に苦しんでいると思われる場合は、すぐに緊急治療室に連れて行ってください。 虐待による頭部外傷のいくつかの症状(例えば、嘔吐やいらいら)は他の病気でもよくみられますので、子供が揺さぶられたか、頭をぶつけたかどうかを医師に知らせることが重要です。医師は何が起こったかについて質問します。ですが、残念ながら、虐待の責任者は、自分の行動について正直に話すとは限りません。

医師は、被害がどれほど深刻であるかを見つけるために、多くの視診と検査を行います。視診では、出血がないか子供の目をチェックしたり、 頭蓋骨や腕、脚に傷がないか探します。また、首や胸の周りに傷跡がないかどうかも確かめます。 画像検査(X線、CTスキャン、MRIなど)は、脳の腫脹や出血の証拠を示すことがあります。これらの検査によって、頭蓋骨や肋骨の骨折を確認することもできます。

治療

虐待による頭部外傷が軽症の場合、服薬、入院、および在宅での観察が必要な場合があります。 最も重篤な症例では、病院の救急室または手術室で救命措置を講じて治療を開始することがあります。 この場合、呼吸チューブを子供の喉から挿入するか、出血を止めるか、または子供の脳の腫脹を減らすために手術を行うことが含まれます。

予防

虐待は、保護者が行動に移さなければ起こらないものなので、虐待による頭部外傷を防ぐことは絶対に可能です。赤ちゃんや幼児の世話をするすべての人が、赤ちゃんがなかなか泣きやまないといった、ストレスの多い状況とどのように向き合っていくかが重要です。

ストレスに対処する1つの方法は、ベビーベッドなど、赤ちゃんにとって安全な場所を見つけ、自分を落ち着かせるために10〜15分間、赤ちゃんとは別の部屋にいることです。自分自身をコントロールできなくなったときは、友人や家族に電話して、お子さんの世話を手伝ってもらったり、精神状態が落ち着くよう、助けてもらってください。 虐待をしてしまったらどうなってしまうかを理解することは、虐待を防ぐのに非常に効果的です。

泣いている子供をなだめるのは簡単ではありませんが、以下のようなことが効果的な場合があります。
・歌う
・揺り動かす(要チェック「揺さぶる」ことと混同)
・布でくるむ
・乗り物に乗せたり散歩に連れて行く
・哺乳瓶やおしゃぶりをあげる
・母乳をあげる
・赤ちゃんのおなかを膝の上に置き、背中を穏やかにこすったり撫でたりする
こうしたことを、ホワイトノイズやリズミカルなサウンド(音楽、ヘアドライヤー、衣類乾燥機などの音)と組み合わせてみてください。また、消化を助けるために、子どもの左側を下にして、あるいは背中を下にして昼寝をさせてください。これらのすべてがうまくいかない場合は、病気にかかっている可能性もあるため、医師に相談してください。

ベビーシッターに世話をお願いする場合は、赤ちゃんを揺さぶることの危険性について教えることが重要です。また、子供の世話をしていてストレスを感じた場合の対処法を知っているかどうか確かめてください。ベビーシッターは慎重に選び、子供の安全を監視してください。

医師に質問すべき事項

・赤ちゃんの症状が虐待による頭部外傷によるものか、一般的名病気によるものかどうかはどうすればわかりますか?
・脳の損傷を回復させることはできますか?
・両親の対応に役立つ地域の資源(リソース)はありますか?

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