記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
扁桃(へんとう)は、喉の奥の方の両側にある、ピンク色の楕円形の部位です。細菌が鼻や口から侵入するのを防いだり、細菌による感染症を防ぐ働きがあります。
扁桃炎は、ウイルスや細菌に感染したときに発症します。 これにより、扁桃は炎症を起こし腫れます。 ほとんどの場合、喉の痛みや咽頭炎があると、扁桃炎もあります。
扁桃炎の症状として、以下のようなものが挙げられます。
・扁桃が赤くなる、腫れる
・喉の痛み
・嚥下障害
・首のリンパ節(腺)の腫れ
・熱
・寒気
・耳の痛み
・頭痛
・口臭
・声が出ない(喉頭炎と呼ばれる)
・子どもの場合、腹痛(一般に、扁桃炎が細菌によって引き起こされる場合に起こる)
扁桃が非常に腫れている場合は、他の症状もみられることがあります。 睡眠時無呼吸(呼吸が睡眠中に短時間停止すること)になったり、食物を飲み込みにくくなったり、声がかすれたりします。
子どもの具合がとても悪い場合や、呼吸や嚥下がしにくい場合、また、喉の痛みが取れない場合は、熱がなかったとしても医師に診てもらってください。
また、成人で扁桃炎の症状が見られる場合、特に以下のうちの1つ以上にあてはまる場合は医師に診てもらってください。
呼吸ができない場合や、嚥下できずによだれがあふれてしまう場合は、大人も子どもも関係なく救急治療が必要です。
・腹痛があってもなくても、2日間以上咽頭痛が続く場合
・39.5℃以上の熱が出た場合
・首が凝ったり曲がらなくなった場合
・衰弱している場合
扁桃炎の大半はウイルスによって引き起こされます。 例えば、伝染性単核球症を引き起こすウイルス(エプスタイン-バーウイルスと呼ばれる)は、扁桃炎の原因のひとつです。 扁桃炎のうち、約15%~30%の症例は細菌によってのみ引き起こされています。 細菌性扁桃炎の最も一般的な原因は、ある種の連鎖球菌(または「ストレプトコッカス(streptococcus)」)細菌にあります。 この場合、この病気を「連鎖球菌性咽頭炎 (れんさきゅうきんせいいんとうえん)」と呼ぶこともあります。
医師は、どのような症状が出ているかを尋ねます。 耳、鼻、喉を検査して、感染の兆候を検査することもあります。
医師は、綿棒を使って喉の後ろから検体を採取することがあります。 この検体は、連鎖球菌検査や咽喉培養のために使用されます。 この検査では、感染が連鎖球菌によって引き起こされているかどうかがほんの数分でわかります。 咽喉培養は、連鎖球菌や他の細菌に感染しているかどうかを調べることができますが、この試験の結果が出るまでには24時間以上かかります。
場合によっては、医師は血液検査を行い、感染の原因を突き止めることがあります。 たとえば、血液検査によって伝染性単核球症かどうかを確認することができます。
扁桃炎がウイルスによって引き起こされる場合、抗生物質は効果がありません。 しかし、家庭でできる治療法により、症状を緩和することができます。 以下を試してみてください。
・蜂蜜やレモンを入れたスープ、ブイヨン、紅茶など、温かい鎮静作用のある飲み物を飲む
・温かい塩水でうがいをする(200cc程度のの温水に塩を小さじ1/4入れたもの)
・発熱と痛みに効くアセトアミノフェンまたはイブプロフェンを服用する。子どもにはアスピリンを服用させない
→アスピリンは、18歳未満の小児にライ症候群(要説明)と呼ばれる重篤な病気を引き起こす可能性があるため。
・のど飴や硬い飴をなめる
・加湿器を使用する
・声を休める
扁桃炎が細菌によって引き起こされている場合には、抗生物質が効果的です。 抗生物質を処方されたら、必ず医師の指示に従ってすべての薬を服用してください。 そうしないと、再発の可能性があります。 また、適切に抗生物質を服用すれば、他の人に感染する危険が減ります。 完治してから24時間が経過すると、他の人にうつる危険性はなくなります。
扁桃が腫れて呼吸困難になっている場合、医師はステロイド治療を行うかもしれません。
以前は、扁桃摘出手術(扁桃切除術と呼ばれていた)が一般的でしたが、現在は、重篤な症例や扁桃炎が頻発する場合(慢性扁桃炎と呼ばれる)にのみ推奨されます。 扁桃摘出術は通常外来手術であり、病院に入院する必要はありません。 もっとも、成人で扁桃切除術が必要な場合はほとんどありません。
扁桃炎を放置すると、喉のさらに奥の扁桃の後ろに、膿瘍と呼ばれる膿がたまってしまいます。 膿瘍がある場合、医師は針で膿を出す必要があります。 重症化すると、膿瘍を取り除くために膿瘍切除術が必要になることがあります。
扁桃炎は、ほかの人と接触することによって広がります。 頻繁に手を洗うことで、細菌やウイルスの拡散を防ぐことができます。 飲み物や食器を共有しないでください。 また、病気の人との緊密な接触を避けてください。
・子供が何度も扁桃炎になります。 扁桃を取り除いたほうがよいですか?
・抗生物質を飲んだほうがよいですか?
・子供が扁桃摘出術を受けた後、どのような問題がありますか?
・症状を和らげるために、何かできることはありますか?
・痛みや発熱を抑える薬はありますか?
・連鎖球菌性咽頭炎になると、扁桃炎になりますか?
・検査を受けてからどれくらいすれば、扁桃炎かどうか分かりますか?
・いつ医師を受診するべきですか?
・夜に何度も目が覚めます。 これは扁桃炎によるものですか?