記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
脳性麻痺(以下、CPという)は、生後数年の子どもに生じる障害です。 CPをもっている子どもは、筋肉をコントロールしたり、からだの動きを調整したりするのに問題があります。 筋肉が硬くて弱いため、筋肉の動きが異常になることがあります。
CPをもっている赤ちゃんは、転がったり、座ったり、笑ったり、歩いたりするのが通常よりも長くかかります(運動発達遅滞)。
CPは軽度の場合も重症の場合もあります。 軽度のCPをもつ子どもは、おかしな動きをするかもしれませんが、ほとんどもしくは全く手助けがいらない可能性があります。 しかし、重度のCPでは歩行や会話が困難になり、生涯にわたるケアと支援を必要とするかもしれません。
CPには以下の3つの種類があります。また、複数のタイプの徴候を示すことがあり、 これは「混合型CP」と呼ばれます。
1.痙直型痙直型脳性麻痺は CP の最も典型的な種類です。 筋肉が硬くなり、運動が困難になります。痙直型脳性麻痺は、からだの片側、両脚、または両方の腕と両脚に影響を及ぼすことがあります。
2.アテトーゼ性脳性麻痺は痙直型脳性麻痺ほど多く見られるのもではありません。これは、ゆっくりとした不随意運動を引き起こし、全身に影響を及ぼします。
3.失調性脳性麻痺は、CPの最もまれな種類で、からだのバランスと協調に影響します。
症状は以下が含まれます。また、CPは時間の経過とともに悪化するものではありません。
・硬い、もしくは緊張(トーヌス)の低下した筋肉
・動作を自分で制御できない(不随意運動)
・協調性の欠如(失調)
・歩行困難(たとえば、片足または脚をひきずる)
・細かい運動制御が困難(たとえば、書くことやシャツのボタンをはめることが困難)
・発語、嚥下、食べることが困難
・過度によだれを垂らす
・けいれん発作
※CPをもっている子どもは、視力に関する問題、聴覚障害または 発達遅延等のほかの健康上の問題を抱えていることがあります。
CPの原因となる脳の損傷は、子どもが生まれる前、生まれるとき、または生後数年のうちに発生する可能性があります。 ほとんどの場合、CPは出生時に存在します。 通常、脳はからだにどのように動くかといつ動くかを伝えるメッセージを送信します。 CPをもつ子どもは、これらを送信する脳の部分に障害があります。 この障害が、CPをもつ子どもがしゃべったり、歩いたり、動いたりすることに影響を与えます。
風邪や水痘(すいとう)など妊娠中特有の感染症は、発達中の赤ちゃんの脳損傷の危険性を高め、CPを引き起こす可能性があります。 ときには、新生児の脳が子宮内で適切に発達せず、CPにつながることもあります。 なぜこのようなことが起こるのは解明されておりませんが、場合によっては母親が特定の有害物質に曝(さら)されることに関連する可能性があります。
出産・分娩における異常はCPを引き起こす可能性があります。 これは、出生時に新生児の脳に酸素がいきわたらないことで起こります。 新生児で未治療のまま放置されている重度の黄疸も、CPを引き起こす可能性があります。
髄膜炎またはウイルス性脳炎を有する新生児は、CPにつながる可能性があります。 髄膜炎は、脳および脊髄の周囲の膜の炎症です ウイルス性脳炎は脳の炎症を引き起こす病気です。
CPは、生後数カ月または数年の間に起こった脳損傷とも関連しています。
CP発生には以下の要因があります。
・風疹など妊娠中の女性特有の感染症
・出生前の脳における血液循環の問題
・異常な脳の発達
・早産または低出生体重
・分娩の初期に殿位姿勢(逆子)の赤ちゃん
・出産・分娩における異常と多胎分娩
・妊娠中の母親の中の有害物質への曝露(ばくろ)
・新生児の重度の黄疸
・細菌性髄膜炎などの出生後の新生児の感染症
・出産後の頭部外傷
CPの治療法はありません。 子どもがCPをもっている場合、医師は以下を含む治療計画を作成するのを手伝います。
・理学療法: 運動と筋肉トレーニングは、バランス、柔軟性、協調性、そして丈夫な体づくりに役立ちます。 理学療法はまた、必要に応じて松葉杖、装具、副木(ふくぼく)、または車椅子の使用方法を学ぶのに役立ちます。
・言語療法: 話すことや手話、飲み込んだり食べることを言語療法士が手助けします。
・作業療法: 子どもが自分自身で身の回りの世話をしやすくする方法を教えてくれます。 それは子どもが自宅や学校で毎日の活動を行うことにも役立ちます。 また、書くことのような細かい運動技能を学んだり、上達させるのにも役立ちます。
・薬: 医師は、筋肉の強張り(緊張)を緩和するために筋弛緩剤を処方することがあります。 発作がある場合、医師は抗けいれん薬の投与を提案するかもしれません。
・手術: 筋肉や腱が非常に硬く、腕や脚の動きの範囲を制限している場合、医師は手術を勧めます。
医師は子どもの筋肉、姿勢、反射を検査し、身体発達について尋ねます。 CTスキャンやMRIなどの特殊な検査で、脳に損傷がないかどうかを確認することもできます。
・子どものために私は何ができますか?
・いま住んでいる地域ではどこでサポートを受けることができますか?
・学校に通うことができますか?
・どんな特別な道具が必要ですか?
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