記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/3/21
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
乳房組織に発症する腫瘍(できもの)のほとんは良性(癌性ではない)です。ただし一部の乳房腫瘍は癌性ですが、身体の他の部分にはすぐには広がっていきません。 このタイプの乳がんは「上皮内癌」と呼ばれ、ほとんどの場合、治療で治癒することができます。 最も深刻なタイプの乳癌は浸潤性であり、これは癌が身体の他の部分に広がっていることを意味します。
乳がんは女性の中で皮膚がんの次に2番目に多いがんです。 乳がんによる死亡率が過去数年間で減少していることは良いニュースです。 これはおそらく、治療によってほとんどが治る早期に、より多くの腫瘍が見つかるようになったためです。 定期的なマンモグラフィー検査と乳房の検査(自己検診と医師による検査の両方)は、早期に乳がんを見つけるのに役立ちます。
乳がんを引き起こす原因は正確には分かっていませんが、乳がんになる可能性を高めるようなリスク要因があります。 乳がん症例の約10%が遺伝性であると推定されています。 これらの症例の多くでは、変異した(正常な形から変化した)遺伝子がみられます。 この突然変異遺伝子があると、乳癌になる可能性が高まります。
誰もがBRCA1とBRCA2という2つの遺伝子を持っていて通常、これらの遺伝子は、癌腫の増殖を防ぐのに役立ちます。 しかし、時々、異常な(突然変異した)形のBRCA1またはBRCA2を遺伝することがあります。 それが乳がんになるリスクを高めます。 人種にも傾向があり、アシュケナージ系のユダヤ人の女性は、他の女性よりも異常なBRCA1とBRCA2を持っている可能性が高いです。これらの遺伝子の突然変異は卵巣癌にも関連しています。
BRCA1とBRCA2に加えて、乳がんになる可能性が高い他の変異遺伝子もあります。 科学者はこれらの変異遺伝子のいくつかの種類について特定しており、他の遺伝子を確定するために研究をしています。
乳がんにかかりやすい家系とはどのようなものでしょうか。2人以上の第一度近親者が発症した場合は、BRCA1またはBRCA2の突然変異型が家族で遺伝しているという徴候を示しています。 第一度近親者には、両親、兄弟姉妹、子供が含まれます。 遺伝性乳がんのリスクのもう一つの徴候は、50歳までに乳がんになった第一度近親者がいる場合です。例えば、卵巣がんの第一度近親者がいれば、突然変異した遺伝子を持っているリスクがあるということです。
乳がんの人が家族にいる場合に、必ずしも変異遺伝子があるというわけではありません。家族の誰かが乳がんにかかっていても、乳がんを遺伝する可能性は高くありません。BRCA1またはBRCA2の変異型を持たずに乳がんを発症する親、兄弟姉妹または子供が大勢います。 乳がんの既往のある第一度近親者を持つ人は誰でもリスクが高いのですが、ほとんどの人は遺伝性の乳がんを発症しません。
乳がんが遺伝している可能性がある場合、家族歴について医師に相談してください。 例えば、医師は乳がんを発症した家族とご自身がどのような血縁関係であるかを知りたいと思うでしょう。 また、医師は乳がんが診断されたときの親戚の年齢を知りたいと思っています。
乳がん遺伝子検査を受けるかどうかの選択はご自身と医師に任されます。医師は、遺伝子検査が有用かどうかを判断するのを手助けすることができます。 医師と検査を受けることのメリット、デメリットについて話し合うことができます。 遺伝子に関して専門の遺伝カウンセラーと話すことも役に立ちます。
BRCA1遺伝子やBRCA2遺伝子が異常であり、乳がんのリスクが高いと診断された場合、ご自身がどのように感じるかを考えてください。 変異遺伝子の1つを自身が持っているかどうかを知りたがっている人もいます。悩むより、 知ることによって、乳癌のリスクに対処できます。 また、医師が癌の早期兆候についてより注意深く見ることが可能になります。 しかし、対処するのが非常に難しいため、異常な遺伝子を持っていることをむしろ知りたがらない人もいます。 検査をするかどうかは、医師に相談してください。 突然変異したBRCA1またはBRCA2遺伝子を持っていても、乳がんを発症する可能性が高いわけではありません。
乳房のしこりを見つける最良の方法は、2つのことをすることです。
以下の2つのことを行うことで、できるだけ早くがんを見つける最良の機会が得られます。 早期に乳がんを発見すると、治療がずっと簡単になり、より効果的になります。
1.定期的なマンモグラフィー検査を行います(通常50歳から2年ごとに行います。50歳未満の場合は、家族歴を含む乳がんの危険因子について医師に相談し、マンモグラフィー検査が適切かどうかを判断してください)。
2.乳房検査が必要かどうか、かかりつけ医に相談してください。
マンモグラフィーとは、乳がんを早期に発見する最も効果的な方法であり、この検査によりしこりを感じるのに十分な大きさになる2年程前に発見可能です。 マンモグラフィーは乳房の特殊な種類のX線です。 X線で使用される放射線の量は非常に少なく、有害ではありません。
マンモグラフィーは、がんが乳房の正常な部分よりも高密度(濃い)であるため、がんを検出することができます。 放射線科医が、がんやその他の乳房の問題の兆候がないかをX線で調べます。
マンモグラフィー検査では、患者の胸は棚の上に置かれ、圧力が感じられるまでX線装置がゆっくりと乳房に押し付けられます。 この圧力は、より良いX線撮影ができるように乳房を広げるために必要です。 X線撮影には1〜2分かかり、全工程で通常約20分を要しません。
マンモグラムは不快なことがあります。 しかし、あまり時間がかかりません。 月経の直後にマンモグラフィー検査を受ける計画を立てると、検査がそれほど不快ではないかもしれません。乳房はその時期にはあまり柔らかくないからです。
50歳以上の女性は、2年ごとにマンモグラフィーを受けるべきです。 乳がんの家族歴など、乳がんのリスク要因がある場合、医師はマンモグラフィーをより頻繁に撮影したり、より早く検査を開始するかもしれません。
乳房の自己検診が乳がんの予防に役立つという証拠はありませんが、乳房の正常な状態がよく分かるようになり、変化に気付きやすくなります。 以下のリストに示したような変化がある場合は、医師に相談してください。
・新しいしこり(痛みを伴うこともあれば痛くないこともあります)
・胸の異常な肥厚
・乳頭からのネバネバした、あるいは血性の分泌
・乳頭や乳房の肌の変化、例えばしわやへこみ
・片方の乳房のサイズの異常な増加
・片方の乳房の高さがもう一方の乳房よりも異常に低い
・乳がんの危険にさらされていますか?
・乳癌遺伝子を持っているかどうかを調べるために遺伝子検査を受けるべきですか?
・乳癌遺伝子を持っています。乳癌遺伝子を持っているかどうかを調べるために自分の家族に検査を受けるよう話すべきですか?
・乳房の自己検診をしたときに何かを見つけました。どうすればいいですか?
・マンモグラフィーはどのくらいの頻度で受けるべきですか?
・乳がんがあります。治療法の選択肢は何ですか?また、娘も乳がんになる可能性は高いですか?
・どのくらいの頻度で胸の自己検診を行うべきですか?