「赤ちゃんには日光浴がいい」は昔の話?今は何をすればいいの?

2019/12/8

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

赤ちゃんには自然の太陽光をたっぷり浴びさせてあげるのがいい、という常識を持っている人は少なくありません。これは、1990年代ごろまでは実際に常識でした。とはいえ、その当時からこの認識が間違っていたということではなく、時代の変化とともに必要なことが変わってきたのです。

では、今は日光浴の代わりに、赤ちゃんに何をしてあげるのが良いのでしょうか?理由とともに詳しくご紹介します。

赤ちゃんに日光浴させる理由は?

1990年代まで、赤ちゃんには日光浴をさせると良い、と言われていました。これは、紫外線を浴びると体内でビタミンDが合成されるので、骨が丈夫になると考えられていたからです。しかし、1日に必要な量のビタミンDは、戸外に短時間いれば生成できること、また、食品からも摂取できることなどがわかってきました。

骨の成長にビタミンDが欠かせないのは事実です。さらには、このビタミンDは紫外線に当たって活性化しないと効果がありません。かつては栄養が不足していたため、僅かなビタミンDを効率よく利用するために日光浴が推奨されていたというわけです。ただ、粉ミルクは完全栄養のものが多いため、ビタミンD不足に陥ることはあまりないと考えて良いでしょう。

すると、紫外線をたくさん浴びるメリットは薄れ、害の方が大きくなってくるのです。とくに欧米の研究では既にそのような結果が出ていて、紫外線を浴びる「日光浴」ではなく、「外気浴」で爽やかな風を感じたり、窓を開けて新鮮な空気を入れ替えたり、散歩をしたりといったことが勧められるように変わってきました。

紫外線はシミやソバカスの原因となるなど、美容面でのマイナスもさることながら、オゾン層の破壊など環境破壊の影響で紫外線が皮膚に到達しやすくなったことで、ヨーロッパやオーストラリアなど白人系人種が多い地域ではとくに皮膚がんなど、浴びすぎると健康被害を受けるリスクが高まることが指摘されています。

白人系人種は皮膚のメラニンが少なく、紫外線の影響を受けやすいのです。つまり、大人に比べて皮膚が薄い赤ちゃんも同様に紫外線の影響を受けやすいと考えられ、紫外線の浴びすぎによるデメリットがメリットを大きく上回ったと考えられることから、日光浴ではなく外気浴へと変更されることになったのです。

日光浴は日光を身体に浴びることが目的ですが、外気浴は赤ちゃんを新鮮な空気に触れさせるのが目的です。現在では、生後1カ月ごろから庭やベランダなどで5分程度、外気浴をし始めるのが推奨されています。

外気浴のメリットは?

前述のように、日光浴は紫外線の影響を受けやすく、避けておいた方が良いとされました。しかし、全く日光を浴びず、ずっと室内にこもって過ごすのも、また健康を害する一因になってしまいます。つまり、日差しの強いときや夏などに何時間も外にいて過剰に日光を浴びすぎるのはデメリットが多いのですが、適度に外気に触れることは、メリットの方が多いのです。

これはどういうことかというと、赤ちゃんをずっと一定の温度、一定の環境である過ごしやすい室内で過ごさせてしまうと、皮膚が外界の環境に適応できなくなってしまうのです。寒いときに手足が赤くなったり冷たくなったりするのは、外気の温度や環境に合わせ、毛細血管が拡張・収縮して体温を一定に保つ役割をしているからです。

このような人間の身体に備わっている自律神経の調節機能(環境適応)が、外気を遮断し自然環境に一切触れないままではうまく働かなくなってしまうのです。自律神経が正常に働くようにするためにも、外気の刺激を与え、皮膚に一定のストレスをもたらすことは、赤ちゃん自身の健康を保つために必要なことと言えます。

日光浴をしないことで考えられるデメリットは?

全く日光に触れないというのもデメリットがあります。最初にご紹介したように、ビタミンDは骨の成長に欠かせないわけですが、このビタミンDは紫外線を浴びて「活性化ビタミンD」という形態に変わらないと骨を形成する働きができないのです。近年では、栄養状況が良くなったため、ビタミンDそのものが不足する子どもは少なくなったものの、「活性化ビタミンD」が不足する子どもは増えていると言われています。

ビタミンDは、骨の成長に必要なカルシウムを体内に取り込みやすくするだけでなく、骨化を正常に進行する働きもあります。しかし、近年増えている「活性化ビタミンD不足」の子どもの体内ではこれらの働きが行われないため、骨の発育不良を起こす「くる病」やその予備軍が増えているのです。つまり、今度は紫外線を浴びなさすぎて活性化ビタミンD不足になっているというわけです。

白い肌を守るため、そして皮膚がんなどのリスクを減らすため、日常生活においても常に日焼け止めを欠かさないという子どもが主に「紫外線を浴びなさすぎて活性化ビタミンD不足」になりやすいと考えられます。日焼け止めは紫外線を遮断してしまいますから、日焼け止めを塗った状態で外遊びをしていてもやはり体内のビタミンDは活性化ビタミンDに変化できないのです。

皮膚にある色素細胞は、紫外線を浴びると、過度の紫外線から身体を守るために黒色のメラニン色素を作り出し、これが日焼けとなります。つまり、きちんと日焼けをする子どもは皮膚が紫外線から身体を守っていると言えます。ですから、子どもの頃はあまり神経質になりすぎずに、多少は日焼けするくらい外で遊ばせてあげるのが良いかもしれません。

ビタミンDは、紫外線を10分程度浴びると活性化されるそうですから、短時間の外遊びや散歩などでは日焼け止めを使わず、積極的に日光を浴びていくのが良いでしょう。

不足しやすいビタミンDを補うには?

私たちの身体は、ビタミンDを食べ物から栄養として摂取したり、前述のように紫外線を浴びて体内で合成したりしています。かつて栄養状態も日当たりも悪い家が多かった時代では、乳幼児のくる病は珍しい病気ではなく、ビタミンDを多く含む「肝油」を飲ませたり、できるだけ日光浴をさせるようにしたりしていました。

しかし、現在では栄養状態が改善され、アルミサッシなどで家の中が明るく、日当たりが良くなり、離乳食も普及し、ミルクにはビタミンDが添加されて完全栄養となり、そのミルクで育つ赤ちゃんも増えてきたことから、日本でくる病にかかる赤ちゃんはほとんどいなくなりました。そのため、医師も大衆もビタミンD不足はそれほど意識しなくても良くなったのです。

ミルクに対し、母乳はビタミンDの含有量が少ないとされていますが、吸収率が良いこともまた知られています。母乳からは赤ちゃんに必要な量の半分程度が摂取できますので、母乳育児のお母さんはとくにビタミンDの多い食品(卵黄・魚・乾燥しいたけなど)を積極的に摂取するようにしましょう。

また、母子ともに極端に紫外線を避けすぎず、帽子をかぶって散歩したり、外気浴をしたりすることで、ビタミンDの不足やくる病を避けられます。生後5~6カ月で離乳食を始めるのが一般的ですが、1歳半ごろの完全断乳までに、母乳だけで不足してしまうビタミンDは食事から摂れるようにしておくのが良いでしょう。

離乳食のビタミンD補給には何がいいの?

昔はくる病の子どもに飲ませていたように、魚の肝臓から抽出した液体やそれを濃縮した「肝油」はビタミンDが豊富に含まれています。しかし、赤ちゃんの離乳食には肝油は使えませんし、お母さんの食事としても頻繁に魚の肝臓や肝油を使うのはなかなか難しいものです。そこで、ビタミンDが豊富でカルシウムも同時に摂取できる「しらす」がおすすめです。

しらすは塩抜きをすれば柔らかく食べやすいので、離乳食から使えます。ご飯や卵焼きに混ぜてもいいですし、おひたしなどに和えても構いません。このように、さまざまなバリエーションを加えやすいのもしらすの良いところでしょう。

とはいえ、これらで摂取できるビタミンDは、すべて活性化される前のビタミンDです。ですから、しらすを食べた後は外気浴を積極的に取り入れ、日光を適度に浴びることも忘れないようにしましょう。

サプリメントでビタミンDを補ってもいい?

ビタミンDは脂溶性ビタミンであり、摂取しすぎると健康被害をもたらすリスクもあります。食品から摂取する程度なら、多少食べすぎたとしてもとくに心配は要りませんが、サプリメントなどで一度に大量に摂取してしまうと、一気に過剰になってしまう場合がありますので、注意が必要です。

母乳から与えられるビタミンDが半分程度とはいえ、赤ちゃんには胎児期に体内に蓄えられたビタミンDもありますので、母乳栄養だけだからといってすぐにくる病を発症するわけではありません。前述のように、お母さんがビタミンDの多い食事を多少意識する程度で良いのです。もし、どうしてもサプリメントを摂取したい場合は、食事から摂取する量も考え合わせ、過剰摂取にならないよう気をつけましょう。

また、アレルギーがあるなどで離乳食や幼児食に制限があり、ビタミンD不足が懸念される場合は、主治医に相談してみましょう。

おわりに:赤ちゃんには日光浴でなく、外気浴をさせよう

かつて日本で赤ちゃんの日光浴が推奨されていたのは、栄養不足の家庭が多く、体内でビタミンDを合成することで不足しやすいビタミンDを補い、骨の成長を促していたためです。しかし、近年では栄養不足の心配はなくなり、食品からもビタミンDを摂取できます。

そのため、赤ちゃんには日光浴ではなく、外気浴をさせましょう。とはいえ、骨の活性化に必要な活性化ビタミンDを作るためにも、適度に日光も浴びさせましょう。

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