記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2022/5/26
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
日光に含まれる紫外線は皮膚に悪い影響をもたらす、と耳にすることが多いかもしれませんが、実は健康上良いメリットもあります。今回は赤ちゃんが生まれたばかりの方向けに、日光浴や外気浴デビューのタイミング、それぞれのメリットや注意点などを解説していきます。
「外気浴」は、よく耳にする「日光浴」とは別のものです。日光浴は、日差しを浴びることを目的としているのに対し、外気浴は赤ちゃんを新鮮な空気に触れさせることを目的としています。生後まもない赤ちゃんはまだ皮膚が薄く敏感であり、外の環境にも慣れていないので、いきなり日光浴から始めるのではなく、外気浴から慣れさせることがすすめられています。
外気浴には、皮膚や気道を鍛える役割があります。音、光、風、温度、湿度の刺激にさらされる、外出の準備の一つです。
例えば、寒い時に手足が赤くなったり冷たくなったりするのは、外気の温度や環境に合わせ、毛細血管が拡張・収縮して体温を一定に保つ役割をしているからです。しかし、赤ちゃんをずっと一定の温度が保たれている室内で過ごさせてしまうと、自律神経の調節機能が外の環境に適応できなくなってしまう可能性があるので、自律神経が正常に働くようにするためにも、皮膚に刺激を与えることは赤ちゃんの健康を保つために必要と考えられています。
おおまかな目安としては、生後1ヶ月ごろから、部屋の窓を開けて外気を入れてあげるところからスタートしましょう。最初は5分程度の短い時間から始め、少しずつ時間を増やしていき、ベランダや庭に出てみるといったステップアップが推奨されています。赤ちゃんが慣れてきたら、人がいない歩道や近所の公園などに短時間連れ出してみてもいいでしょう。
なお、外気浴は毎日必ず行わないといけないものではありません。赤ちゃんが眠い時や機嫌の良くない時は避け、暑い時期は気温の比較的低い朝、寒い時期は日中の暖かい時間帯に軽く行うようにしましょう。
日光に含まれる紫外線には、健康上のメリットとデメリットの両面があります。
デメリットは、長時間浴びると将来的にシミやソバカスなどができる原因になる点です。一方の主なメリットは、紫外線が皮膚に作用することで「ビタミンD」が生成される点、②体内時計のサイクルが整いやすくなる点です。
ビタミンDは、骨の成長に必要なカルシウムを体内に取り込みやすくし、骨化を正常に進行する働きがあります。急速に発育が進む新生児や乳幼児、成長期の子供にも欠かせない栄養素で、ビタミンDが不足すると「くる病」(足の骨がO脚に変形し、歩行しづらくなることもある病気)を発症する恐れがあります。
ビタミンDは食べ物からも摂取できますが、骨の成長に欠かせないビタミンDを合成するには、適度な日光浴で紫外線を浴びることも大切です。ただ、過度に紫外線を浴びすぎると、健康上の悪影響を引き起こす恐れもあるので、紫外線量の強い時間帯(10~14時)に長く外遊びするのは避け、帽子をかぶって紫外線対策をする、といった対策を行いましょう。
お腹の中から生まれてきたばかりの赤ちゃんは、まだ昼夜の区別がついていません。外気や光の刺激を受けることで、体内時計が働き始めるようになります。朝から昼間は明るい環境で過ごし、夜は静かな暗い環境で過ごす生活を習慣づけることで、生後2~3ヶ月頃から、夜になると体内時計に働きかけて眠気を誘うホルモン「メラトニン」の分泌を高められるようになっていきます。
なお、朝起きた後に紫外線を浴びると、夜にメラトニンの分泌が増え、良質な睡眠につながりやすくなるとされているので、日光浴の時間帯は朝がおすすめです。
日光浴のスタート時期は明確には決まっていませんが、おおまかには生後1ヶ月を過ぎ、外気浴に慣れてきた頃から進めていくといいでしょう。最初は5分程度の短い時間に収め、徐々に10分、20分と延長していくイメージです。赤ちゃんの様子を見ながら、適宜時間を調整していってください。
ビタミンDを生成するには適度な日光浴も大切ですが、赤ちゃんのくる病の発症を予防するためには、食事や授乳でもビタミンDを補給することが欠かせません。
現在は昔よりも栄養状態が改善され、離乳食も普及し、粉ミルクにも十分量のビタミンDが添加されるようになっています。母乳ではなく完全に粉ミルクで授乳している赤ちゃんの場合は、ビタミンD不足を心配する必要はないでしょう。
一方、母乳は粉ミルクよりもビタミンDの含有量が少ないとされていますが、吸収率が良いことも知られています。母乳からは赤ちゃんに必要な量の半分程度が摂取できますので、母乳育児のお母さんは特にビタミンDの多い食品(卵黄・魚・乾燥しいたけなど)を積極的に摂取するようにしましょう。
生後5~6カ月で離乳食を始めたら、1歳半頃までに、母乳だけで不足しがちなビタミンDを食事から摂れるようにしておくのが良いでしょう。
離乳食期に取り入れるのにおすすめの食材が、ビタミンDが豊富でカルシウムも同時に摂取できる「しらす」です。しらすは塩抜きをすれば柔らかく食べやすいですし、ご飯や卵焼きに混ぜたり、おひたしなどに和えてあげるのもいいでしょう。さまざまなバリエーションを加えやすいのも、しらすの優れた点です。
ビタミンDは脂溶性ビタミンであり、過剰に摂取しすぎると健康被害をもたらすリスクもあります。食品から摂取する程度なら、多少食べすぎたとしても特に心配は要りませんが、サプリメントなどで一度に大量に摂取してしまうと、過剰摂取になってしまう場合がありますので、注意が必要です。
母乳育児の方は、赤ちゃんのビタミンD不足を心配されるかもしれませんが、赤ちゃんには胎児期に体内に蓄えられたビタミンDもあるので、すぐにくる病を発症することはありません。お母さんがビタミンDの含まれた食事を意識することが大切なので、もし、どうしてもサプリメントを摂取したい場合は、食事から摂取する量も考え合わせ、過剰摂取にならないよう気をつけましょう。
また、アレルギーがあるなどで離乳食や幼児食に制限があり、ビタミンD不足が懸念される場合は、主治医に相談してください。
外気浴や日光浴はそれぞれ異なるメリットがあり、生後間もない赤ちゃんは、まず外気浴からスタートすることが大切です。外気浴に慣れてきた頃から日光浴を徐々に始め、また授乳や食事からも、骨の成長に重要なビタミンDを補うように心がけていきましょう。