記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2020/8/26
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
ダイエットや生活習慣病予防のためにランニングを始めた、始めたいという人も多いでしょう。
ただ、ダイエットでランニングする場合、食事制限は必要なのでしょうか。
今回は、ランニングダイエットするときの食制限について、食事の見直し方のコツや極端な食事制限のリスクについて詳しく解説していきます。健康的に体脂肪を減らしたいという人は参考にしてください。
ランニングやジョギングは、有酸素運動に分類される運動です。脂肪が燃焼しやすい運動のためダイエットに非常に適した運動と言えます。
ただ、体脂肪を減らすには、それなりのカロリーを消費する必要があります。食事量や内容にもよりますが、運動だけで体重を落とすのは難しい場合もあるでしょう。実際に、運動をしても目標の体重まで落とせなかったという人もいるのではないでしょうか。
1日の摂取カロリー量よりも消費するカロリー量が上回れば、自然に体重は減っていきますので、ダイエットのためにランニングを始めるときは、食事内容と摂取カロリー量も見直したほうがいいでしょう。
体脂肪を1kg落とすのに必要なカロリー量は約7000kcalといわれています。これは、もし1カ月で1kg体脂肪を減らしたい場合は、1日につき約230kcalを消費する(消費カロリー量が摂取カロリー量を上回る)必要があるということです。
メッツ値(運動によるカロリー消費量が安静時の何倍になるか示す値)を使った計算式で、体重60kgの人が30分ランニングすることで消費するカロリー量を導き出すと、283.5kcalになります。
基礎代謝と身体活動レベル(1日にどれくらい体を動かしたかの指標)を考慮したとき、1日に必要なカロリー量は、女性で1400~2000kcal、男性で2000kcal〜2400kcalと考えられています。
あまり厳密に計算する必要はないでしょうが、1日の摂取カロリー量が平均の必要カロリー量を大幅に超えているようなら、食事内容を見直すことをおすすめします。
ただし、食事量を減らし過ぎてしまうと、体を壊してしまうだけでなく、かえって太りやすい体質になってしまうことがあるので注意しましょう。
体を慣れさせるためにも、まずは無理のないペースのランニングを始め、少しずつ食事量を減らしていくことをおすすめします。
食事で100Kcal、ランニングで100kcal消費できるように計画すると続けやすくなるでしょうから、参考にしてみてください。
ダイエットのためにある程度の食事制限は必要な場合もありますが、特定の食べものしか食べない、完全に食事を抜くなどの「極端な食事制限」は、健康のためにもダイエットためにもプラスになりません。
このような極端な食事制限は、短期的に見れば即効性の高いダイエット効果が得られますが、体に必要な栄養が十分に摂取できなくなるため、以下のようなデメリットをもたらします。
エネルギーが不足すると、生命機能を維持するためにタンパク質を分解してエネルギーとして利用するようになります。タンパク質やタンパク質を構成するアミノ酸は、筋肉をはじめ、臓器、髪、皮膚、血液、ホルモン、免疫細胞の原料として使われます。
ランニングに限らず、運動をすれば筋肉が壊されます。筋肉を再生するためにはタンパク質が必要ですし、効率よくタンパク質を筋肉に変えるためにも、糖質を代謝するためにもビタミン類が必要になります。
また、タンパク質はヘモグロビンを作るのにも必要なため、不足すると運動機能も落ちる可能性があります。
ランニングするためにも、基礎代謝を上げるためにも、ある程度のエネルギーは必要です。ダイエット中であっても、必要なカロリー量を摂るようにしてください。また、食品に含まれる栄養は複雑に絡み合って体に機能していますので、いろいろな食品をバランスよく食事に取り入れるように心がけましょう。
ダイエット目的でランニングを始めるときは、食事の「量」を減らす前に、1日に必要な総カロリー量がきちんと摂れているか確認したうえで、以下のポイントを参考に食事の「内容」を見直すことから始めましょう。
まずは、脂肪分が多い食品や脂肪に変わりやすいGI値の高い食品を減らし、ランニングで消費されるビタミン類やミネラルを補うためにも野菜類や海藻類、きのこ類をたっぷり食べるようにしましょう。
脂肪分を減らすために肉を魚や大豆製品に置き換えてもいいですが、肉を完全に断つ必要はありません。
健康の基本は「バランスの良い食事」です。筋肉の回復にはタンパク質が必要なので、ランニング後にプロテインを飲むことはかまいませんが、タンパク質をすべてプロテインだけで摂ることはおすすめしません。
サプリメントや健康補助食品は、あくまでも「食事の補助」として使うようにしましょう。
野菜がたっぷり摂れてカロリーを制限でき、お腹もふくれるスープ類はダイエットにおすすめです。ミネストローネやポトフ、野菜や海藻のお味噌汁など、毎日の食事に取り入れましょう。ただし、インスタントスープ類のなかには、塩分、砂糖、脂肪の量が多いものもあります。できれば自炊するようにし、インスタント製品を使う場合は成分表を確認するようにしてください。
食事のタイミングには諸説あるため、厳密に決める必要はありませんが、ダイエット効果を上げたい場合は、ランニング前の食事を「走る3時間前まで」に済ませたほうがよいといわれています。朝にランニングする人は前日の夕食をしっかりと摂り、必ず水分を補給してから走り始めましょう。夜にランニングする場合は、昼食をしっかりと食べて走るようにしてください。
また、ランニング後30分以内は胃腸が弱っているので、消化が良く栄養価が高い豆乳やフルーツ類(バナナ、果汁100%のジュースなど)を摂るようにしてください。すばやくタンパク質を補うために、プロテインを利用しても良いでしょう。
30分後以降は胃腸の働きも回復していますので、カロリー量に気をつけつつ、タンパク質とビタミン類、ミネラル類をたっぷり補えるメニュー作りを心がけましょう。
ランニングは有酸素運動であり、体内の脂肪をエネルギーとして消費します。継続的に行うことで体脂肪を減らし、筋肉量を増やすことのできますので、ダイエットにおすすめできる運動といえるでしょう。
ただし、ランニングだけでダイエットが成功するかは、食事内容と摂取カロリー量が関係してきます。明らかに摂取カロリー量が多いようなら、食事内容を見直し、必要に応じて適切な食事制限をしましょう。
ただし、持病で食事制限・栄養制限・運動制限が必要と指導されている場合はこの限りではありません。医師や栄養士の指導に従いましょう。