記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2020/8/29
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
ランニングは、健康増進に効果的とされていますが、膝の痛みの原因となることも多いスポーツです。
今回は、ランニングによる膝トラブルの原因と対処法、予防法について詳しく解説していきます。ランニング初心者の人はもちろん、慣れてきている人にも参考になりますので、セルフケアに役立ててください。
ランニングと膝の痛みとの関係を知るためには、まず膝の構造から理解しておいたほうがいいでしょう。
膝関節は、以下4種類の骨と半月板(膝関節を安定させ、関節への負荷をやわらげる役割がある軟骨組織)、複数の靱帯・筋肉で構成されています。
ランニング中は、常に膝を曲げ伸ばしする動作が伴い、体重や着地の際の負荷もかかり続けることになるため、炎症や損傷が起こりやすいです。
関節軟骨や半月板、靭帯、筋肉が、膝の動きをなめらかにしたり、安定性を高めることで、負担を軽減して膝トラブルを防いでいるのです。
自分の体力や筋力の限界を超える運動をして軟骨や半月板、靭帯、筋肉に問題が起こると、問題の起こった組織から痛みが発生します。組織に問題が起こることは痛みをさらに悪化させ、別の膝トラブルを生み出す原因になることもあります。
また、膝関節はバランスをとるために「適度なゆるみ」を持っていますので、重心がぶれている、筋肉のバランスが悪い、フォームが正しくない状態で走ると、偏った負荷がかかりやすくなり、捻挫などの膝トラブルを引き起こしやすくなります。
ランニング中の膝の痛みは、膝の組織自体に問題が起こっていることが多く、以下のような問題が起こっている可能性があります。
膝の外側にズキズキとした痛みが起こることが特徴で、陸上競技=ランナーに多くみられることからランナー膝やランナーズニーと呼ばれることもあります。
膝の屈伸運動の繰り返しによる負担がおもな原因であり、大腿骨外側上顆(大腿骨の足方外側にある骨の出っ張り)と腸脛靭帯が擦れ合う摩擦で炎症が起こり、痛みが発生します。
一定の距離を走ると痛みが出るようになり、膝に負担がかかりやすい下り坂で痛みが強くなりやすいといわれています。ランナー膝と呼ばれていますが、登山やサイクリング、バスケットボールなど「膝の屈伸を繰り返す・膝に負担がかかる運動」であれば発症リスクがあるので注意が必要です。
初期ではランニング中に軽く痛む程度ですみますが、慢性化すると運動後にも痛むようになり、日常生活に支障をきたすほどの痛みになることもあります。
膝蓋靱帯とは、大腿四頭筋(太ももの前側の筋肉)の足側の先が靭帯になったもので、膝蓋骨を覆うようにして膝関節をまたぎ、脛骨につながっています。
膝蓋靱帯炎は、ジャンパー膝と呼ばれるように、バレーボールや走り高跳びの選手などジャンプを繰り返す運動をする人に多い障害ですが、ランニングをする人にも多くみられます。
膝を伸ばすときの「大腿四頭筋収縮」による負担が蓄積することで発症し、膝の前側、膝蓋骨の下付近にうずくような痛みが出るようになります。
軽いものであれば自然治癒しますが、運動できないほど痛みが強くなることもあり、膝蓋靭帯の断裂が起こると手術が必要になることもあります。
関節軟骨や半月板がすり減り、膝の関節が変形して痛みが出る障害です。過去に靭帯や半月板を痛めたことがある人は発症リスクが高くなります。動き始めに痛むのが特徴ではありますが、症状が進むと正座や階段の昇り降りが難しくなり、最終的には動いていなくても痛みが続きます。
ランニングによる負担も原因になりますが、加齢によるものも多く、肥満や筋力低下が進むと膝への負担も増加するので注意が必要です。また、冷えによる血行不良で症状が悪化することがあります。
鵞足炎は、縫工筋、半腱様筋、薄筋の付着部にある筋肉や腱、滑液包などに炎症が起こり痛みが発生する障害です。ランニングをはじめ、膝に負担がかかるスポーツ全般で発症例が多いといわれています。
膝の下部内側(脛骨近位端)に痛みが起こり、運動した後に痛みが出ることが多く、日常生活では階段の昇り降りで痛みが出やすいといわれています。悪化すると安静にしていても痛みが続き、日常生活に支障がでることもあります。
膝に痛みが出始めたらすぐにランニングを中止し、氷嚢やアイスパックなどでできるだけ早くアイシングを行い、安静に過ごしましょう。痛みがあるのにランニングを続けると、痛みがひどくなり、慢性化して治りにくくなってしまいます。
痛みがある部位に腫れたり熱感がある場合は、炎症がかなり強く、損傷の度合い大きい可能性があります。できれば早めに整形外科で診てもらうようにしてください。
消炎鎮痛薬や湿布薬などで痛みを抑えることもできますが、変形膝関節症のように膝の骨自体が変形している場合や、変形がなくとも損傷が重度の場合は、専門的な治療も必要です。安易に薬で痛みを抑えてしまうと、悪化を進めてしまう原因になりかねません。
痛みや腫れ、熱感がそこまでひどくなくても、1週間以上痛みが続く場合や何度も繰り返す場合は、念のため整形外科で検査してもらうことをおすすめします。
また、サポーターや固定具の使用やマッサージ、ストレッチは、適切な方法で行わないとかえって状態を悪化させてしまうこともあります。医師や理学療法士などの専門家に相談し、自分の状態にあった方法で対策しましょう。
ランニングによる膝の痛みを防ぐには、股関節と太ももの前側の筋肉の柔軟性を向上し、筋力トレーニングで膝の安定性を高める必要があります。以下の筋肉のストレッチやトレーニングを習慣化しましょう。
ただし、痛みがあるときは行わないようにし、ストレッチやトレーニング中に痛みが出たときはすぐに中止してください。
※慣れてきたら、重りやゴムバンドを使って負荷を上げましょう。
※腰が反ると腰を痛めてしまうので、下腹部とお尻にも力を入れ、反り腰にならないようにする
曲げ伸ばしを繰り返し、膝に全体重をかけて行うランニングは、膝関節の痛みを起こしやすいです。もし、ランニング中に膝に違和感や痛みを感じたら、すぐにランニングを中止して、アイシングをして膝を休ませてください。1週間安静にしても痛みが良くならないときは、整形外科に相談しましょう。
膝のトラブルを防ぐには、柔軟性と安定性を高めることや足や膝にやさしいシューズを使うことが大切であり、膝サポーターやインソールなど膝を守るグッズを使うことが役立つこともあります。街歩きに使うシューズも工夫し、下半身回りのストレッチやトレーニングを気長に続けていきましょう。