糖尿病に合併する腎疾患~糖尿病性腎症~

2017/5/18

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

糖尿病は、放置すると網膜炎、腎症、神経障害などの合併症を起こします。日本では、高齢化と生活習慣の変化によって糖尿病患者が急増しており、糖尿病合併症がクローズアップされてきています。ここでは、糖尿病合併症のなかでも重症化すると腎不全となり、透析を余儀なくされる「糖尿病性腎症」についてお話します。

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糖尿病と腎臓病の関係

消化された食べ物は、腎臓の何百万もの小さな血管の集まる糸球体(しきゅうたい)を通ってを「ろ過」されます。糸球体は、老廃物を尿とともに体外へ排出するフィルターの役目があります。糖尿病による高血糖が持続すると糸球体のろ過構造が障害され、タンパク質が尿中に漏れ出します。このタンパク質の一種のアルブミンを微量に含む尿を微量アルブミン尿といいます。

早期に腎臓病と診断され、微量アルブミン尿を治療することで腎臓病の悪化を防ぐことができますが、放置すると慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)や腎不全となります。末期の腎不全では最終的に腎臓は機能せず、人工透析や腎移植が必要となります。

糖尿病性腎症とは

糖尿病によって高血糖状態が長く続き、糸球体がフィルターとしての機能ができなくなったものが糖尿病性腎症です。糖尿病患者すべてが糖尿病性腎症を発症するわけではありません。腎臓病の要因としては遺伝、血糖値、血圧などがあります。つまり、糖尿病と血圧を適切にコントロールすれば糖尿病性腎症を発症する可能性は低くなります。

血圧の上昇は軽度でも糖尿病性腎症の進行に大きな影響を与え、重症化する可能性があります。血圧を下げるためには、体重を減らし、塩分を控え、アルコールやタバコを避け、規則的な運動をすることが大切です。

運動とともに重要なのが、低タンパク食をとるように食生活を改善することです。低タンパク食に変えることで、尿中に漏れ出すタンパク質を減少させ、血中タンパクを高めることができます。低タンパク食は、医師の指示のもとで行ってください。

糖尿病性腎症病期分類

日本腎臓学会と日本糖尿病学会の糖尿病性腎症合同委員会による「糖尿病性腎症病期分類」によれば、糖尿病性腎症は以下のように分類されています。

尿タンパク(アルブミン)/推算糸球体ろ過量(eGFR)

第1期(腎症前期)

正常30mg未満/eGFR 30mL以上

第2期(早期腎症期)

微量アルブミン尿30~299mg/eGFR 30mL以上

第3期(顕性腎症期)

顕性アルブミン尿300mg以上あるいは持続性タンパク尿0.50mg以上/eGFR 30mL以上

第4期(腎不全期)

尿タンパク(アルブミン)は問わない/eGFR 30mL未満

第5期(透析療法期)

透析療法中

(参考:日本腎臓学会 https://cdn.jsn.or.jp/academicinfo/ckd/dm_nephro.pdf

おわりに:防ごう!! 糖尿病性腎症

日本では、透析を受けている人の数は30万人以上いるとされ、その約40%が糖尿病性腎症によるものです。2016年、厚生労働省は糖尿病性腎症の重症化予防の取り組みとして、日本医師会、日本糖尿病対策推進会議とともに「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」を作成し、国レベルで支援しています。
ただ、おしっこが出なくなるだけでなく生活の質(QOL)まで低下する糖尿病性腎症・・・いまからでも遅くはありません! 食生活を見直し、適度に身体を動かして予防していきたいですね。

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