記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
「糖尿病なんて自分には関係ない」なんて思っていませんか?実は、糖尿病患者と糖尿病予備軍の人数はかなり多いことがわかっています。今回の記事では、糖尿病予備軍の基準となる数値や検査方法、糖尿病の予防法などをご紹介していきます。
厚生労働省の平成28年「国民健康・栄養調査」によれば、「糖尿病が強く疑われる者」の割合は12.1%(男性は16.3%、女性9.3%)、「糖尿病の可能性を否定できない者」の割合は12.1%(男性 12.2%、女性12.1%)です。つまり、糖尿病患者も糖尿病予備軍も、国内におよそ1000万人もいるということがわかっています。
糖尿病には1型と2型がありますが、1型は自己免疫疾患であり、2型は遺伝的要因と生活習慣(過食や運動不足)によるものです。この記事で言う糖尿病予備軍とは、2型糖尿病の予備軍のことです。
2型糖尿病を発症する前には、ほとんどの人がこの「糖尿病予備軍」となっています。糖尿病予備軍とは、血糖値は正常値より高いものの、糖尿病と診断されるほど高くはない状態をいいます。また、医師によっては糖尿病予備軍のことを「耐糖能障害(IGT)」または「空腹時血糖障害(IFG)」とよぶことがあります。この状態の人は、2型糖尿病および心血管疾患を発症するリスクが非常に高くなります。
各数値が下記に該当する場合、糖尿病予備軍と診断されます。
上記の数値を知るためには、「HbA1c検査」「FBG検査」「OGTT検査」を受ける必要があります。
HbA1c(ヘモグロビンA1c)検査とは、採血にて過去2〜3か月の平均血糖値を測定するものです。検査のときに事前の食事を制限したり、当日何かを飲まなければいけないものではありません。基準値は以下の通りです。
採血にて、空腹時の血糖値をチェックします。試験前に少なくとも8時間は、飲食を避ける必要があります(水を除く)。この検査は通常、朝食の前、朝一番に行います。基準値は以下の通りです。
OGTTは、専用の甘い飲み物を飲む前と飲んだ2時間後に採血し、血糖値をチェックする検査です。検査を通して、体がどのようにグルコースを処理するかがわかります。基準値は以下の通りです。
糖尿病予備軍には、はっきりとした自覚症状はありません。このため、多くの方は糖尿病の検査を受けているときに糖尿病予備軍であることを知ります。1年から2年ごとに1回、2型糖尿病の検査を受けるようにしましょう。
糖尿病予備軍の人すべてが、2型糖尿病を発症するわけではありません。早期治療をすれば、実際に血糖値を正常値に戻し、進展を防げることもあります。ある研究によると、以下に挙げたことに取り組むと、2型糖尿病のリスクを大幅に低減できるとされています。
理想的な体重に達することができなくても心配しないでください。 およそ4.5kg~7kg減らすだけでも大きな違いがあります。
減量に向けて、週に1回は体重を計る習慣をつけましょう。定期的な(できれば毎日)運動や、バランスの取れた食事、高カロリーな食事を控えるといったことを心がけてください。
減量にあたっては、食事内容と運動の記録を残すこともおすすめです。特に、食べるものをすべて書き出すことは、食生活での問題点の把握に役立ちます。まずは1週間試してみて、自分がどの段階にいるのかを確認しましょう。スマホの無料アプリを利用してもいいでしょう。
糖尿病予備軍の人数は少なくありません。そして自分もその糖尿病予備軍と知ったら、かなりショックを受けることでしょう。しかし、それは日常生活を改善するチャンスでもあります。糖尿病発症のリスクを減らすためにも、早めに改善の一歩を踏み出しましょう。