セックスしても安全?危険?妊娠中の性行為について

前田 裕斗 先生

記事監修医師 東大医学部卒、産婦人科勤務医(神戸市)

前田 裕斗 先生

二宮 英樹 先生

記事監修医師 東大医学部卒、セレオ八王子メディカルクリニック

二宮 英樹 先生

世の中の妊婦さんが、きっと一度は悩んだことのあるトピックが「妊娠中の性行為について」なのではないでしょうか。

「妊娠中に性行為をしても大丈夫なのかな?でも、赤ちゃんに悪影響があるって聞いたことがあるし…」「結局、妊娠中にセックスするのは安全なの?やめたほうがいいの?」
なんて混乱中の妊婦さんは少なくないはず!

ということで今回はそんなお悩みの妊婦さんたちに向けて、妊娠中の性行為に関するさまざまな疑問にお答えしていきます。

もくじ

妊娠中に性行為をしても大丈夫?

妊娠中の性行為は基本的には安全です。子宮頸部では子宮口を保護し感染を予防する粘液を作り続けており、赤ちゃんはそれに守られた状態なので、ペニスの挿入やオーガズムによって赤ちゃんに悪影響が出たりすることはありません。ペニスのサイズが大きかったとしても同様です。

性行為で子宮が収縮した場合

また、性行為の後、子宮が収縮している感覚がある場合も心配しないでください。この子宮の収縮はオーガズムによるものです。人によっては30分もオーガズムが続くケースもありますが、赤ちゃんに害を及ぼすものではありません。ただし、早産や流産のリスクが高く、医師から性行為を禁止されている方は控えるのが無難です。

性行為に赤ちゃんが反応?

性行為やオーガズムに対して、赤ちゃんがお腹を蹴るなどの反応を示すこともあれば、まったく反応を示さないこともありますが、どちらも正常なことなので特に心配はいりません。「妊娠中の性行為は胎教に悪い」とする説もありますが、セックスや性行為を赤ちゃんが記憶する科学的証拠は全くありません。

妊娠中の性行為によるリスクは?

妊娠中の性行為は基本的に安全ですが、以下のリスクが伴います。

出血

妊娠中は、子宮頸部が傷つきやすく、血管が充血しているため出血を引き起こすことがあります。出血してしまった場合は病院を受診し、しばらくの間は性行為を避けるようにしてください。

尿路感染症

セックスによって生殖器近くのバクテリアが尿道に押し込まれ、尿路感染症を引き起こすケースもあります。予防のために、性行為の前後に排尿することをおすすめします。

性感染症(STD)

妊娠中に不衛生な性行為を行ったり、性感染症を持つ人と性行為をしたりすると、下記の性感染症に感染する恐れがあります。

クラミジア

早産や流産、赤ちゃんの眼病や肺炎を引き起こす可能性があります。

性器ヘルペス

可能性は低いものの、出産時に母体から赤ちゃんにウイルスが引き継がれてしまう可能性があります。妊娠または出産時に性器ヘルペスに感染すると、胎児または新生児に脳の損傷や網膜症を引き起こす可能性があります。そのため日本では出産時に性器ヘルペスにかかっている場合、帝王切開で分娩する必要があります。

ヒトパピローマウイルス

尖圭コンジローマとして妊娠中に発症することがあります。胎児には出産時に感染することがあり、咽頭や喉頭に再発性若年性呼吸乳頭腫症という良性腫瘍を発症し、治療が必要となることもあります。
分娩の際は必ずしも帝王切開は必要とせず、分娩前に手術で切除した上で経腟分娩を行うことが多いでしょう。

淋病

淋病を未治療のまま放置すると、流産、早産などのリスクを高め、目や関節の病気、血液感染を引き起こす恐れがあります。

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)

HIVとは後天性免疫不全症候群(AIDS エイズ)につながる状態を意味します。HIV感染者の妊婦さんから生まれた赤ちゃんは、妊娠中にHIVに感染してしまうことがありますが、妊婦さん自身に投薬を行うことで、事前にある程度予防することができます。

梅毒

梅毒は最近日本でも男性だけでなく女性にも罹患者が増えてきており、注意が必要な感染症です。梅毒は胎盤を通過し、赤ちゃんに先天性欠損などさまざまな病気をもたらしたり、死産を引き起こしたりする可能性があります。しかし、妊婦さんが抗生物質を服用することで治療可能です。特に妊娠初期で判明し、治療を開始できた場合の予防効果は高いことが知られています。日本では妊娠初期の検査に必ず含まれていますから、感染予防のためにも必ず初期検査を受けてください。

トリコモナス症

赤ちゃんの膜を弱くして早期に破裂させたり(前期破水)、早産のリスクを増加させたりします。

上記の性感染症の具体的な症状は各感染症によってさまざまですが、腟周囲のかゆみ、性行為中の痛み、排尿時の不快感、性器付近の水疱などが見られたら病院を受診するようにしてください。

性感染症かどうかはすぐ診断することができ、妊娠中に安全に治療することができます(基本的には妊娠初期検査の際に性感染症の検査を受けるケースが多いので、その後発症する可能性は低いです)。検査や診断が早くなればなるほど、早い段階で赤ちゃんを守ることができます。

その他の性行為について(大人のおもちゃ・アナルセックス・オーラルセックス)

ペニスを腟に挿入する、といった通常のセックス以外の性行為の安全性について、以下で解説します。

バイブレーター

妊娠中も、バイブレーターを使用した性行為を行って構いません。子宮頸部の粘液栓が赤ちゃんを保護しているので、バイブレーターの挿入によって胎盤が貫通することはありません。ただし、使用時は必ず煮沸や抗菌石けんで洗うなどの消毒を行ってください。

また、痛みを引き起こす可能性があるため、腟の深すぎるところまで性玩具で貫通させたり、先端が尖ったものを挿入したりするのは避けましょう。

アナルセックス

妊娠中のアナルセックスも基本的に安全です(痔の方は避けてください)。
ただ、アナルセックスの後に消毒していないペニスを腟に挿入しないでください。腟から有害なバクテリアが入り、赤ちゃんに悪影響を及ぼす恐れがあります。

オーラルセックス

医師から性行為の許可を受けている妊婦さんであれば、陰部を吸ったり舌を挿入したり、フェラチオをしたり精液を飲み込んだりといったオーラルセックスをしても問題ありません。ただし、腟に空気を吹き込むのは避けてください。空気塞栓症(気泡が静脈や動脈に入り、閉塞して心臓発作、脳卒中、呼吸不全を引き起こす症状)を引き起こす可能性があります。

性行為で出産が早まる?

妊娠後期の妊婦さんの場合は、精液に含まれるプロスタグランジン(ホルモン物質)によって子宮頸管の準備が促進されたり、オーガズムによって子宮が収縮しオキシトシン(筋肉縮小ホルモン)が放出されたりすることで子宮の収縮が起こる可能性はありますが、適切に行えば早産になる可能性はなく、満期に性行為を行ったからといって陣痛が出て早めに分娩できるという証拠はありません。

妊娠中の性行為はむしろカラダにいい?

妊娠中に性行為をすると、下記のようなメリットがあると考えられています。

オーガズムを感じやすくなる

血流によって性欲が高まりやすくなるため、オーガズムを感じやすくなると考えられています。

睡眠の質が向上する

セックスによりリラックスすることで、妊婦さん自身がよい睡眠をとることができます。また、セックス中の振動で揺さぶられることによって、赤ちゃんもよく眠れるようになるとする説もあります。

免疫力が高まる

セックスにより、「免疫グロブリンA」という風邪や感染症を予防する抗体を強化できることがわかっています。

幸福感の増加

オーガズムによってエンドルフィンが放出され、幸福感が増しリラックスできることがわかっています。

親密性の増加

先述のオキシトシンの効果で、パートナーとの親密度が上がるといわれています。

産後の回復が早まる

性行為によるオーガズムで出産に向けて骨盤床の準備が促進され、産後の回復を早めることができると考えられています。

妊娠中の性行為の体位は?

「妊娠中に行ってはいけない体位」というものは特にはありません。ただ、ある程度お腹が大きくなった段階で性行為をしようとすると、お腹が大きすぎて足を広げられなかったり、パートナーが胸に寄りかかれなかったりして、特定の体位が難しくなってしまうことがあります。

妊娠中でも比較的負担が少ない体位として、まず挙げられるのは「側臥位」です。側臥位とは横になって向かい合う、もしくは片方が背中を向ける体位です。背中に体重がかからず、お腹の重みを支える必要もありません。お互い寝転がることができるのでゆっくりとリラックスした状態で性行為ができます。

また、「後背位」(バック)でのセックスも、妊婦さんのお腹にぶつからずペニスが挿入できるので、妊娠中に性行為をする場合は参考にしてみるといいでしょう。

パートナーに性行為を怖がられたら?

「性行為に積極的だった夫が、妊娠してからセックスを避けるようになった」――妊娠以来、旦那さんやパートナーがセックスに消極的になるという話は少なくありません。

妊娠中、つわりや疲労などで性欲が減退する方もいますが、変わらず性欲が持続する方もいます。そんな妊婦さんにとって、パートナーの拒絶反応は辛いものなのではないでしょうか。

パートナーが性行為を避けてしまう理由は、「妊婦さんや赤ちゃんを傷つけるのが怖い」「赤ちゃんが近くに感じられてしまい、後ろめたさを感じる」などさまざまです。

ただ、理由がなんであれ、そこまでショックを受ける必要はありません。まずはお互いの気持ちについて、パートナーと話し合ってみてください。
パートナーが赤ちゃんへの影響を心配している場合は、妊娠中の性行為は基本的には安全であり、セックスをしても胎教に悪影響はないということを伝えてみるといいでしょう。

おわりに:妊娠中に性行為をしても基本的には問題ナシ!

性器が不衛生な状態で性行為をすると感染症にかかったり、といったリスクはあるものの、医師から特別な注意を受けたりしていない限りは、妊娠中の性行為は安全だと考えて問題ないでしょう。

「ペニスが挿入されると赤ちゃんが傷つきそうで怖い…」「オーガズムによって早産になってしまうのでは?」などと不安を抱えている方もいるかもしれませんが、赤ちゃんは子宮の粘液でしっかり守られている状態なので特に心配する必要はありません。また、妊娠中の性行為は睡眠の質を向上させたり免疫力を上げたりなどのメリットもいっぱいあります。負担の少ない体位で、安全な性行為を楽しんでくださいね。

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