記事監修医師
前田 裕斗 先生
2017/5/16 記事改定日: 2020/4/23
記事改定回数:4回
「膀胱炎は女性の病気」というイメージがあるかもしれませんが、男性でも膀胱炎を発症することがあります。しかも、男性の膀胱炎には他の病気が隠れている可能性が少ないので注意が必要です。
この記事で男性の膀胱炎について詳しく見ていきましょう。
一般的には男性よりも女性のほうが膀胱炎にかかりやすいですが、男性も膀胱炎になることはあります。男性は膀胱炎を発症しにくいものの急性細菌性前立腺炎に発展するなど重症化する可能性が高くなるため、むしろ女性以上に注意が必要な場面もあるかもしれません。
また、前立腺組織の奥深くに細菌が潜んでいると再発しやすく、排尿を困難にさせる何らかの異常(糖尿病など)がある場合はさらに再発しやすいといわれています。
女性の膀胱炎は大腸菌が膀胱に侵入することで起こるケースが多いですが、男性の膀胱炎は以下で挙げるような「他の病気」が原因となっていることが多いです。
膀胱炎になると、膀胱の粘膜に炎症が起こり以下のような症状が見られます。
膀胱炎になると、排尿時に尿道口がヒリヒリとした痛んだり、しみるように痛むことがあります。排尿が終わった後や排尿の後半に痛むことが多いといわれています。
頻尿は、膀胱炎の初期に現われることが多い症状です。排尿する回数が増え、排尿してもまだ出し切っていないように感じる残尿感を感じることがあります。
尿が白く濁ったり、アンモニア臭を強く感じるようになります。
膀胱炎は排尿痛以外にも下腹部の痛みを引き起こすことがあります。また、膀胱炎が腎盂腎炎に発展すると腰背部に痛みが出ることもあります。
膀胱の粘膜が炎症を起こすと、そこから出血することで血尿が出ることがあります。血尿には見た目でわかるほど色が変わるものもありますが、病院で検査しなければ発見できない顕微鏡的血尿(顕微鏡的潜血尿)もあります。
一般的には尿の出始めよりも出し切る直前の尿(膀胱がからっぽになるタイミングの尿)のほうが尿に混じる血の量が増える傾向があります。
男性のクラミジア感染症は尿道炎として発症することが多く、膀胱にまで炎症が進むことは少ないと考えられています。これは、男性は女性に比べて尿道が長いためです。女性は尿道が短いため膀胱内まで炎症が進展しやすく、膀胱炎を発症しやすいです。
しかし、尿道から膿のようなものが出たり、排尿時に痛みが生じるなどの症状がある場合にはクラミジアなどの性感染症を発症している可能性があるため、膀胱炎の発症の有無に限らず性行為を控える必要があり、早急に病院を受診しましょう。
膀胱炎は治らずに悪化すると腎盂腎炎に進行してしまう可能性があるため、抗生物質などを中心とした薬物治療が行われるのが一般的です。しかし、薬を飲んでも治らなかったり、排尿痛や下腹部痛が残る場合は手術が行われることもあります。
膀胱炎の大半が大腸菌の感染が原因といわれているため、ニューキノロン系(クラビット®など)やセフェム系(フロモックス®)の抗生物質が主に使われます。5日程度の内服を指示され、症状がなくなって尿検査で異常が見つからなければ完治したとみなされます。
ただし、耐性菌が原因になっている場合はどの薬物が効果を得やすいかという検査に基づいて薬が変更される可能性があります。
いずれの場合でも、処方された抗生物質は服用期間の最終日までしっかり飲み切るようにしてください。
膀胱炎の多くは薬物治療で完治しますが、薬を飲んでも治らなかったり排尿痛や下腹部痛が残る場合は、内視鏡を使った膀胱水圧拡張術が行われることがあります。
また、腎結石や前立腺肥大などの病気が原因の膀胱炎と診断された場合は原因となる病気の治療のために手術が行われることが多いです。
男性の膀胱炎の多くは、上で述べたような病気が原因となって引き起こされます。
そのため、膀胱炎の再発や発症を予防するためには原因となる病気の予防に努めることが大切です。そのためには次のような対策をしましょう。
男性の膀胱炎は発症率が低いですが、発症すると女性よりも症状が深刻になる可能性があります。
排尿時の痛みを感じたりトイレに行く回数が増えたりしていたり、下腹部や背中の痛みや違和感が続いているときは早めに病院で診てもらいましょう。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。
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