記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
2017/5/17 記事改定日: 2018/3/23
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モデルの道端アンジェリカさんが自身のインスタグラムでスッピン姿を公開し、有名になった皮膚疾患「乾癬(かんせん)」。この乾癬の原因は一体何なのでしょうか?治療方法や日常生活で気をつけたいポイントなどもご紹介します。
乾癬とは、皮疹を伴う慢性の皮膚疾患です。主な症状は皮膚が赤くなる「紅斑(こうはん)」、皮膚が盛り上がる「浸潤(しんじゅん)・肥厚(ひこう)」、銀白色のうろこ状のかさぶた「鱗屑(りんせつ)」、かさぶたがボロボロ剥がれ落ちる「落屑(らくせつ)」です。
乾癬の患部では皮膚のターンオーバーが過剰になり、通常のおよそ10倍のスピードで皮膚が作られていることで皮膚が厚くなっているのですが、これは、免疫機能の異常が原因で起こると考えられています。本来免疫機能は私たちの体を守ってくれていますが、免疫機能に異常が生じると、自分自身を攻撃し、炎症を起こすようになってしまうのです。具体的には、TNFαなどのサイトカイン(細胞間の情報伝達に関わる物質)が過剰に生産されたことが原因で乾癬の症状が起こると言われています。
乾癬の発症には、複数の遺伝子が関係していると言われています。国内の調査では乾癬が家族内で発症する頻度はおよそ4%であり、乾癬の種類によって関連する遺伝子は異なるとされます。
実は、肥満やメタボリックシンドロームと乾癬には関連性があると考えられています。脂肪分の多い食事や高カロリーな食事は、なるべく避けましょう。
乾癬の原因は免疫異常と考えられていますが、この免疫異常を引き起こす原因の一つにストレスがあります。また、乾癬が顔や腕など目立つところに発生するとそれもストレスとなり、さらなる症状の悪化につながる恐れがあります。
特定の薬剤の投与中に乾癬を発症したのであれば、薬剤の影響で乾癬になった可能性があります。国内の研究によれば、カルシウム拮抗薬やβ遮断薬などの高血圧の薬や、非ステロイド性抗炎症薬が原因で乾癬を発症した事例が報告されています。
乾癬の原因である免疫異常は、遺伝的要因と環境的要因によって引き起こされると考えられています。遺伝的要因と環境的要因の例として、上記以外では、喫煙習慣や冬の乾燥、外傷、妊娠・出産、糖尿病、脂質異常症などが挙げられます。また、乾癬の種類の一つに「滴状乾癬」というものがあるのですが、こちらは扁桃炎などでの溶連菌の感染が原因で起こると言われています。
乾癬は慢性の皮膚疾患のため、改善と悪化を繰り返したり、ストレスや体調不良によって再発したりすることも多いです。乾癬の根本的な治療法は見つかっていないのが現状ですが、適切な治療を行うことによって、乾癬による皮膚症状をほとんど目立たなくすることはできます。
病院で受けられる治療方法としては、ステロイド外用薬や活性型ビタミンB3外用薬などの塗り薬による治療や、過剰な免疫反応を抑制する内服薬による治療、紫外線を照射することで過剰な免疫反応を抑制する光線療法、TNFαなどのサイトカインの抑制を抑える点滴・注射型の生物学的製剤などがあります。
日常生活においては、まず食事内容を改善しましょう。先述の通り乾癬はメタボリックシンドロームとの関連性がある病気とされているため、カロリーが控えめな食事を心がけてください。また、香辛料などの刺激物によってかゆみが悪化することもあるので、こちらも控えましょう。
おすすめの食材はDHAやEPAなど、中性脂肪を下げる作用のある成分が豊富に含まれた青魚やマグロです。魚を中心とした献立を考えてみてください。
そのほかには、禁酒や禁煙、適度な運動習慣・保湿を心がけたり、ストレスをこまめに発散しましょう。また入浴時はゴシゴシ洗うと皮膚症状が悪化するので、手で優しく撫でるように洗ってください。肌の刺激が少ないよう、40℃以下のぬるま湯に温度設定することも大切です。
乾癬の発症には遺伝子が関連していると考えられていますが、そのほかにもストレスや食事との関連性も指摘されています。乾癬の人もそうでない人も、健康的な食事や生活を心がけることが大切です。