記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
前回は、食中毒を引き起こすそもそもの原因菌やウイルスをご紹介してきました。
今回はその原因菌が人に感染するまでのルートを、原因ごとに詳しく解説していきます!
食中毒そのものの原因はバクテリア(細菌)やウイルスなどにありますが、そういった微生物に人が感染してしまうのにはさまざまな理由があります。食中毒が広がる原因を以下にまとめました。
バクテリアが広がる原因として、以下の要因が考えられます。
バクテリアは調理中にも感染対象を広げる恐れがあります。例えば、調理する人が手や調理器具、まな板、調理台の上をよく洗わずに生の食材に触れた場合、汚染されている食べ物についているバクテリアがほかの食べ物に広がるという二次感染が起きる可能性があるのです。
なお、特に食中毒の原因になることの多い生肉は、調理時に十分注意をしてください。例えば、調理済みの食べ物の上に生肉を置いてしまい、生肉から出た汁が下にある食べ物に付いてしまうと、調理済みの食べ物だったとしてもバクテリアが付着してしまう恐れがあります。
温かい食べ物が十分に温められていなかったり、冷たい食べ物が十分に冷やされていなかったりした場合、バクテリアは倍増します。バクテリアは食べ物の温度が4~60℃のときに急激に増殖する性質があるので、食中毒予防のために、冷たい食べ物は4℃以下に、温かい食事は60℃以上でそれぞれ保存・調理しましょう。
バクテリアは冷蔵されている間に少しずつ増殖していきますが、冷凍すると増殖スピードはゆっくりになるか、増殖が止まることもあります。しかし、冷凍された食べ物であっても、室温に戻るとバクテリアは再び活発になるので注意が必要です。
調理済みの食べ物だとしても、長時間放置していることが原因でバクテリアはあっという間に増殖してしまいます。食べ物ごとに適切な温度のもと保存・調理することを心がけてください。
ウイルスや寄生虫は、主に感染者の便、嘔吐物に多く存在しています。つまり、感染者が料理をしたり、トイレの後によく手を洗わなかったりしたことが原因で、食中毒は拡大する恐れがあります。
また、汚染された水源で育った魚介類や野菜を食べるなど、感染者を経由しないルートでも、ウイルスや寄生虫に感染し食中毒になることがあります。
面倒くさくて、料理を冷蔵庫にしまうのを先延ばしにしてしまったり、同じまな板や包丁を使いまわしてしまったり…という方は少なくないのでは?しかし、そういったちょっとしたことが原因で、食中毒の感染リスクは上昇してしまうものなのです。苦しい食中毒に感染する前に、日頃の調理方法や食品保存、衛生管理についてこれを機に見直してみてくださいね。