記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
2017/3/21 記事改定日: 2018/7/25
記事改定回数:1回
記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
不妊症は男性にも原因があることをご存知ですか?
今回は、男性不妊症についてご紹介します。検査方法や治療法、自分でできる対策を紹介していくので、不妊についてお悩みの方はぜひ参考にしてください。
妊娠へと至るプロセスは複雑で、男性・女性の双方に、複数の要素が望ましい方向に進む必要があります。
不妊症は、女性の場合、1年間避妊しなかったものの妊娠しなかった場合。男性は、精子の数が少なすぎる場合、または精子が卵子との結合を阻害する場合、不妊とみなされます。
男性不妊症の原因の最も一般的なものは、精索静脈瘤です。精索静脈瘤は、精巣の周りの陰嚢にできる肥大化した静脈で、片側または両側に形成されます。静脈瘤は陰嚢の内側の温度を高め、同じ側にある精巣の精子産生を減少させるおそれがあります。
その他の原因は、以下の通りです。
妊娠の可能性に影響を及ぼすその他の要因には、喫煙、過度のアルコール摂取およびその他の違法薬物の乱用、精神的ストレス、肥満および年齢(35歳を超える男性)が含まれます。男性不妊症の原因は特定できないことがありますし、遺伝的問題の可能性もあります。
男性不妊症の検査は大きく分けると、精液検査と泌尿器科分野の検査の二つを行います。
男性不妊の原因として大きな割合を占める精子の異常を調べるのが精液検査です。これは、採取した精液中の精子の数や運動率、運動の性質、精子の形状などを調べるものです。一般的には病院を受診して、採精室などの個室で精液を採取しますが、病院によっては朝自宅で採取した精液を病院に届けて検査を行うこともあります。
また、泌尿器科分野の検査では、精索静脈瘤や前立腺肥大などの造精能や射精に障害を与える病気がないかを検査します。内診や腹部超音波検査、CT検査などが行われます。精液検査で無精子症や乏精子症と診断された場合には、精子の通り道である精路に閉塞がないか、精巣の機能は正常かを評価するためにホルモン検査などが行われることもあります。
男性不妊は、その原因によって様々な治療が選択されます。
前立腺肥大や精路の閉塞など、射精障害を引き起こす病気が原因の場合には、それに対する手術を行います。これらの場合には、精子は正常に生成されているため、治療後には自然妊娠を望むことが可能です。また、精索静脈瘤は造精機能が低下するため、静脈瘤の原因となる血液の逆流を防ぐために血管を縛る手術が行われます。手術を行うと造精機能は回復するため、自然妊娠の可能性が高くなります。
一方、これらの原因がないにも関わらず精子の数が少なかったり、運動率が悪い場合には精巣の組織の一部を採取したり、精巣を切り開いて精巣内に微量に存在する精子を採取する治療が行われます。こうして採取された精子はパートナーから採取された卵子とで体外受精が行われます。
男性不妊は治療以外にも生活習慣を改善することが必要です。
まず、精巣は高温多湿の環境下に晒され続けると造精機能が低下することがあるため、通気性の良い下着や衣類を着用すること、蒸れやすい長時間の座位やサイクリングなどの運動を避けるといった対策が必要です。
また、喫煙や過度なアルコール摂取を控える、栄養バランスのとれた食事を心がけることも精子の状態を良好に保つことにつながります。
不妊の悩みが続くと夫婦の関係、個人の感情にストレスをあたえさらに不妊が続くことになりません。検査で男性不妊症を引き起こしている根本的な医療上の問題が見つかることもありますので、不妊に悩むカップルは早めに検査を受けて、適切に対処していきましょう。