記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
痛風は、関節炎の中でも最も痛い症状で、「痛風になると風が吹いただけで痛くなる」と言われるほどです。では、なぜ痛風になると痛みを感じるようになるのでしょうか?また、どんなふうに痛むのでしょうか?この記事では、痛風の原因や症状の特徴、痛風を和らげる薬などについてご紹介します。
痛風は、体内に「尿酸」が増えすぎてしまうことが原因で発症します。尿酸は「プリン体」と呼ばれる物質が分解したものです。プリン体は体のどの組織にも存在しており、レバーや乾燥豆、アンチョビ、ニシンといった食品の中に多く含まれています。
通常、尿酸は血液中に溶けて腎臓でろ過され、尿として排泄されます。しかし、尿酸が増えすぎてしまったり、腎臓でろ過できない尿酸があったりすると、血液中に蓄積する可能性があります。そして血液中の尿酸値が高くなると、「高尿酸血症」と呼ばれる状態になります。
高尿酸血症になると、溶けずに蓄積された尿酸はナトリウムと塩を作り、結晶化します。この結晶は「尿酸結晶」と呼ばれ、徐々に関節の内面へと沈着していきます。そして、この尿酸結晶に白血球が反応し、攻撃を加えた際に痛みが生じるようになります。
痛風になるとどんな痛みを感じるのかというと、主に足の親指の付け根あたりに、足を動かせないほどの激痛を感じます。まるで打撲や捻挫をしたレベルでの痛みで、尿酸結晶ができやすい夜間や明け方に痛みを感じることが多いのが特徴です。痛みを感じる部分の関節は赤く腫れ、1時間ほどで足の甲まで腫れ上がり、2〜3日は歩行困難になることも珍しくありません。
多くの場合、1週間ほど経つと痛みが徐々に減っていき、しばらくすると全く症状がなくなります。
しかし、治療せずに放置していると1年ほど後に痛みが再発するケースがほとんどです。
痛風は多くの場合、足の親指の付け根の関節で発症しますが、足の甲やくるぶし、足首、膝、手首、肘で起きることもあります。体の中で負担がかかりやすい関節に起こるので、その人の仕事内容や姿勢によって発生箇所が異なるのです。
また、関節以外に、かかとに痛みを感じることもあります。これは、痛風発作を繰り返すうちに尿酸結晶がコブ状の塊になり、かかとの皮膚の下に「痛風結節」ができたからです。靴底が固い靴を履いている方などは、かかとに痛風結節を生じやすくなります。
以下に該当する人は、痛風の発症リスクが高いです。
・高尿酸血症(尿中の尿酸濃度が高い状態)である
・関節液に尿酸結晶がある
・急性関節炎を1回以上発症している
上記に加えて、以下のような要因も痛風を発症する原因になります。
・家族に痛風を発症している人がいる
・男性である
・太っている
・アルコールを大量に飲んでいる
・プリン体を多く含む食べ物をたくさん食べている
・プリン体を分解しづらくなる酵素欠損がある
・鉛にさらされる環境にいる
・臓器移植をしている
・利尿剤、アスピリン、シクロスポリン、レボドパを含む薬を服用している
・ナイアシンを摂取している
そのほか、ストレスの多い出来事が重なったり、または他の病気がきっかけで発症することがあります。
まず、病院では痛風かどうかを特定するために、血液検査や尿検査、X線検査、症状や病歴、痛風の家族歴などの問診を行います。痛風であることがわかったら、尿酸クリアランス検査を行い、尿酸が増えた原因を特定し、「尿酸の排泄を促す薬」や「尿酸ができにくくなる薬」など、どんな薬が適しているか判断します。
しかし、痛風発作がすでに起きている場合は、急激に尿酸値を下げると痛みが再発する恐れがあるため、基本的には発作を抑える薬を処方します。具体的には以下の薬です。
・非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
・副腎皮質ステロイド薬
・コルヒチン
コルヒチンは、最初に急性発作が起きてから12時間以内に服用したときに最も効果的です。場合によっては、今後の発症を防ぐために、NSAIDやコルヒチンを毎日少量ずつ服用できるように処方することもあります。また、血液中の尿酸値を低下させる薬もあります。
以下のような点に気をつけて過ごすと、痛風が再発するリスクを抑えることができます。
・医師の指示通りに処方薬を服用する
・医師に普段服用している薬やビタミン剤を伝える
・症状を確認してもらえるよう、定期的に医師の診察を受ける
・健康でバランスの取れた食事を摂る
・ノンアルコールの飲み物(水がお勧めです)をたくさん飲んで、尿酸を排泄する
・プリン体を多く含む食べ物を控える
・定期的に運動して、健康的な体重を維持する
・減量を検討している場合は医師に相談する(急激に減量すると血液中の尿酸値を上昇させる可能性があるため)
痛風で痛みが生じるのは、プリン体の過剰摂取などによる尿酸の増加が主な原因です。日ごろからバランスの取れた食事を摂り、水分をたくさん摂って尿酸の排出を促したり、適度に運動して太りすぎないよう気をつけましょう。生活習慣を少しずつ改善して、痛みにくい体を手に入れましょう。