“在宅医療”の実情 〜第1弾〜

2017/6/8

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

在宅医療は年々、その重要性が高まり、少しずつ認知もされるようになってきました。
しかし、実際に実施するとなると告知の問題や経済的な問題など、様々なハードルがあるといえます。
今回はそんな“在宅医療”について、在宅医療経験のある医師・山本康博先生にインタビューしました。シリーズ第1弾です。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

在宅医療とは

在宅医療は一般的にどのような方が受けられるのでしょうか?

在宅医療は多くの場合、今まで通院できていたけど病気がかなり進行してしまって、通院が困難になってしまったり、自宅で過ごされることを希望された患者さんに適用されます。やはり病気の性質からは進行した癌の患者さんが多いです。
癌以外の病気でも、通院している間に徐々に体力が減少し体が弱ってくる方、終いには寝たきりになってしまう方が在宅医療に切り替えられる場合がほとんどです。

−在宅医療は、24時間緊急で病院側が対応してくださる環境ではあるのですか?

選択制なので、そのような環境を選ぶことは可能です。夜間でも電話などのやり取りは可能です。
ただし、呼吸が苦しいなど余程のことでない限り、緊急で往診(=医師が患者の自宅や老人ホームなどに行って診察すること)はしないですね。

−山本先生も在宅医療のご経験があるということですが、それは医師だからできたという側面はありますか?

在宅医療はチームで行っているんです。医師もいますし、看護師や薬剤師、ヘルパーさんなど様々な職種の方々で構成されています。医師もそのチームの一人として働いています。

−在宅医療と病院での医療とでは、どのような点が異なるのでしょうか。

在宅医療は、病院での医療とは少し目的が異なる事が多いです。
癌患者さんに限って申し上げますと、病院の医療というと抗がん剤の投与や手術など、“治す”ことを目的とした治療が行われます。しかし、残念ながら中には抗がん剤も効かなくなってきて治療を続ける体力もなくなってきた、という方がいらっしゃいます。そうなると緩和ケア医療の方に少しずつシフトしていきます。緩和ケア治療は、痛み止めを使うとか患者の辛い気持ちに寄り添うなど、苦しみを取り除くための医療をさします

イメージでいうと、癌と診断されて当初は100%抗がん剤などの積極的な治療がウエイトを占めます。しかし、徐々に癌が進行するとグラデーションのように緩和ケアのウエイトが大きくなっていき、最後は緩和ケアが100%になる。
緩和ケアは癌の直接的な治療にはなりませんが、患者にとってはとても重要なのです。

ですので、もちろん病院でも緩和ケアは行われますが、特に療養の場が自宅に移っている在宅医療では緩和ケアなどの支持療法のウエイトが大きいと言えると思います。

在宅医療と緩和ケア

−先ほど仰られた緩和ケア治療について具体的に教えてください。

癌が末期にもなると、眠れない、気持ち悪い、食欲がなさすぎる、呼吸が苦しいといった精神的な苦痛がありますし、癌が骨に転移した場合は、少し体を動かしただけでもとても痛むといった肉体的症状も伴います。そんな症状に対する治療を行うのが緩和ケアですね。
痛み止めも細かく調整しないと効きすぎてしまったり、逆に全然効かなくて辛い思いをすることもあります。癌が末期の人は、抗がん剤を使うよりも先ほど述べた緩和ケア治療のほうがより重要だと感じるので、とても大事なのです。緩和ケア専門医という方もいらっしゃいます。
入院中でも、緩和ケアが必要な患者さんはたくさんいらっしゃるので、最近では特に大きい病院には緩和ケアチームというチームが設けられています。

“在宅医療“というオプション

−在宅医療は患者本人の希望で受けられるのですか?それとも医師から勧めることが多いのでしょうか?

こちら(医師)から勧めることが多いですね。やはり医療者と患者さん側で情報のミスマッチがありますのでこちらから提示する事が多いです。
大体病院にかかっているはずなので、「通院が困難ではないですか」「今後の寿命も数ヶ月単位なので、最後自宅で過ごしたいなら在宅医療という道もありますよ」、といった風に病院側からリードすることがほとんどです。

−それにより患者はご自身の病状を悟ったりしないのでしょうか?

病状については、多くの場合ご自身にしっかり病状をお話しした上で緩和ケアを行う事が多いです。患者さんと医療者で共に苦痛を和らげる方法を考えていくという考え方があるからです。
ホスピス(緩和ケア病棟)も入院に際しては告知が必要である事が多いです。
そのため患者さんからは、ご自身のことについてご理解いただいています。

 

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在宅医療を受けるまでの流れは?適用される保険は?

“在宅医療”の実情 〜第2弾〜


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