《フィクション》丸の内OLブランドを振りかざすユキ。そんなユキの些細な悩みとは・・・

2017/7/1 PR

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

「えー、すごーい!知らなかったー!!」
同世代との飲み会ではなかなか行けないようなお洒落なイタリアンで、ユキはわざとらしいくらい大きなリアクションをあげた。ユキの歓声を聞いた男性は、得意満面に次から次へと話を続けている。ユキがちらっと男性の隣を見ると、友人のトモミが無表情に話を聞いている。その間もユキは完璧な笑顔をキープしている。

しばらくして会話のきりがいいところで、ユキとトモミは化粧室にたった。
「凄いよね、あの人の言ってた話って本当なのかなぁ」
「え、トモ知らなかったの?あれ有名な話じゃん!」
ユキの返事に、トモミは驚きを隠せずに言った。
「ええ!?だって、ユキ知らなかったって言ってなかった?」
「そんなの嘘に決まってるよー!ああやって大きなリアクションしておけば、男のプライドも満たされるしさ。男なんてよく聞いてくれて、すごーいって言ってくれる女が好きなのよ。」
大学を卒業して、2年。この2年間で行った数えきれないほどのコンパやデートで、ユキはリアクションは大きければ大きいほど男ウケすることを理解している。
「…そっか、そういえばそんな動画もあったもんね。」
「あーあのドルチェのウェブCMでしょ。あんなの当たり前だよ、みんな適度にああいうの入れてるんだよ。トモもそうしないと損だよ。真面目に聞いてるのトモだけなのに、リアクション小さいから印象に残らないもん。」

そう言われてからユキを見てみると、耳についたピアスは普段より長くてユキの動きに合わせてよく揺れ、白いブラウスも上品ながら鎖骨が見えるようなタイプで、確かに男性が好みそうなファッション要素を全て押さえている。この見た目で、話していて楽しければ男は放っておかないだろう、とトモミも思う。

二人は大学の語学のクラスが一緒で、それ以来社会人になってからも、こうしてユキがセットする飲み会に、人が足りない時にはトモミが声をかけられる。ユキは美人で社交的、24歳の若さと自由を謳歌している。毎週金曜には必ずコンパか、数あるお気に入りの男達から一人を選んで食事に行っている。本人は少しも悪びれることなく、目的に応じて男達を使いわけながら、よりよい男を探し続け、狙った男がいたらあの手この手でアプローチしゲットしてしまう猛禽女子そのものである。

「さ、トモ、そろそろ戻ろっ!今日のは顔は全然好みじゃないけど、商社マンだから繋ぐだけは繋いでおいても損じゃないからさ。」
そう言って颯爽とトイレから出ていくユキを、慌ててトモミがついて出る。

その翌週の平日に、新丸ビル内のカフェで二人はランチをすることになった。トモミはユキと違い真面目な性格で、メーカーの営業として品川に勤務している。丸の内に来る時には、今回のようにユキと連絡してランチをする。トモミからはコンパのアレンジが出来ない分、こうしてランチなどでも会おうとすることで、友達としての印象値をあげないとならないのである。
「なんかさ、最近ちょっとヒリヒリするんだよね、トイレの時に。なんなのかなー。」
「ヒリヒリ?何だろうね…調べてみたの?」
ユキが唐突に言ったので、トモミは驚きつつも聞いてみた。
「調べるって病院に行くってこと?しないよ、そんなの!大袈裟だなぁ、トモは。ちょっとヒリヒリするのと、トイレに急に行きたいな、っていう事が増えたことくらいだもん。」
自分の事なのに深く気にしている様子もないユキは、インスタに映えるようなランチメニューを選ぶことに余念がないようだ。
「え、それってもしかして膀胱炎かもしれないよ?前に友達が同じような事を言っててググったら膀胱炎の症状だったの。」
事実であった。その友達も、ヒリヒリする痛みを放っておけなくなって病院に行ったら、すぐに膀胱炎と診断されたのだった。
「…でも私、膀胱炎になるような事してないよ。」
トモミは携帯で膀胱炎の症状とその原因について調べてみた。
「ほらユキ見てよ、排尿時の痛みとか頻尿って症状の一つみたいだよ。」
「ええー、そうなの…。原因とかって書いてある?」
「いろいろあるみたいだけど…」
言いにくそうにしているトモミの様子を察して、ユキはトモミの携帯画面をのぞき込む。
そこに書かれている原因の中で、思い当たるものが幾つかある。
「性行為前後にシャワーを浴びて清潔に保つって、大事かもしれないけど、毎回は出来ないよ!あ、雑菌が理由なら、この前、海水浴に行った時とか、海の家の簡易トイレ使った時に雑菌が入っちゃったのかな…。」
トモミは、膀胱炎を患った友人が、その後も繰り返しそうな時に飲んでいたというお薬があったことを思い出した。
「ユキ、この腎仙散っていう生薬のお薬、試してみれば?そんなに症状も重くなくて気になるなら、まずは市販されている薬で試してみればいいんじゃない。」
ユキは相変わらず気の進まない表情を見せながらも、トモミの友人の話も聞くと少し怖くなった。
「そうだね、今日薬局にいってみるよ。」

「えー、すごーい!知らなかったー!!」

その翌週の金曜日、この前の商社マンから繋がった外資コンサルで勤務する30歳とのコンパがある、と呼び出されたトモミは、ユキの変わらない様子に驚きを隠せなかった。
大きなリアクションと笑顔、それに今回はさりげないボディタッチまで織り交ぜている。きっと、こちらのコンサル男子の方がユキのお気に入りなのだろう。

 

しばらくして会話のきりがいいところで、ユキとトモミは化粧室にたった。
「ユキ、凄いね、もう全然大丈夫なの?」
「うん、ありがとね!別にヒリヒリも感じなくなったよ。7日間も飲み続けたからね。」
あのユキが7日も飲み続けたということは、本人も不安だったんだな、とトモミは思った。
「さ、トモ、そろそろ戻ろっ!今日のも顔は全然好みじゃないけど、コンサル男子だから繋ぐだけは繋いでおいても損じゃないからさ。」
あんなに楽しそうなのにまだ好みじゃないの?!
トモミは驚きながらも、颯爽とトイレから出ていくユキを、慌ててついて出ていくのであった。

※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実物のものとは関係ありません。

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