記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
ひとりの子どもが、将来大学を卒業するまでにかかる金額について、しばしば話題になります。しかし、まず妊娠して子どもを出産するまでにも、多くのお金がかかります。さらに産まれたならすぐに、乳幼児教育を受けさせるかどうかについての検討もする必要があります。出産までのお金のいろいろについてまとめてみました。
まず、妊娠しているかどうかの診断を受けます。妊娠が決定したなら、血液や感染症などいくつか済ませる必要のある検査があります。遺伝的な問題のある可能性があるなら、さらに検査が加わります。ひと通りに初期の検査が終了したら、今度は定期検診です。3カ月までは流産の危険性があるので、通常でも月2回の診断が必要です。その後妊娠中期までは月1回、後期になったらまた月に2回程度は医師の診断を受けます。最低でも15回は診断を受けるとして、最低5,000円はかかるでしょう。そうすると少なく見積もっても8万円近くかかります。それに初診時の診療と基本の血液検査やその他の検査で数万円はかかります。ということは、何事もない健康で順調な人でさえ、最低10万円は必要ということです。
自治体によっては妊婦に対する補助があるところもありますので、もう少し低くなる人もいるでしょう。いずれにしても決して負担の少ない額ではありません。
出産費用の心配はあるものの、妊婦が最優先することは、母子ともに健康でいることです。「妊娠食」といわれるバランスがとれて母子の栄養を考えられた献立の情報を色々な組織や団体が提案しています。妊娠すると急に食べ物の好みが変わることはよくあることです。しかし、毎日食べるものが、お腹の中の赤ちゃんの歯をつくり、骨をつくり、筋肉をつくり育てているのです。タバコなどは厳禁です。アルコールなどの嗜好品も控えて、必要な献立の資金にまわしましょう。
献立はその日のものをその日に考えるのではなく、できれば1週間分を考えて計画的に食材の購入をしましょう。バーゲン情報を入手して、冷凍食品や長期保存のきくものをまとめて購入することが家計の軽減につながります。献立の消化は1週間の中で実現すればいいと、柔軟的にとらえた方がうまく長続きします。赤ちゃんのための食生活はもう始まっていることを、パートナーにも協力してもらいましょう。
自治体や保健組合からの出産補助があるとしても、現在、出産自体には30万円は最低かかるといわれています。入院する病院や、部屋やサービスによって桁違いの金額の差が出ますから、一概にはいえません。普通分娩以外の必要があったらさらにお金がかかります。出産後のケアの大小にも左右されますが、予測できることと、できないことがありますから、余裕をもった資金計画を立てたいものです。しかし、この負担は決して小さいものではありません。
赤ちゃん用品の購入にも大きいお金がかかります。それ以前に、赤ちゃんを迎えるにふさわしい清潔で静かな環境を確保するのにも、お金がかかります。最近の調査によれば、購入した赤ちゃん用品で最もお金がかかったものは、車のベビーシート(チャイルドシート)だそうです。シートベルトのできない乳幼児は、法律でベビーシートの装備が義務づけられています。このベビーシートと毎日の移動に欠かせないベビーカー(乳母車)は最近、軽量で操作性と居住性の良い、高機能なものが増えています。このような金額の張るものは、新品ではなく中古のものをオークションサイトなどから購入したり、出産の先輩である知人や友人から借り受けるのも賢い選択です。メーカーや製品番号を確認して、ネジや部品のゆるみなどを事前に確認する必要があります。
祖父母は孫のために役に立ちたいと考えています。曖昧におおよそのことを頼むのではなく、自分たちはこの予算で出産と新生活の準備を考えている。ついてはこの部分は自分たちが賄えるが、どうしても足りないこの部分について援助してもらえないか。と具体的に頼むことです。何もかも自分たちで解決することが必ずしも良いとは限りません。家庭にもよりますが、助ける余力と気持ちが祖父母にあるなら、率直に頼むのは恥ずかしいことではありません。
お金のことを考えると、めまいがしてきそうです。でも子どもをもつことに決めたふたりには、子どもの将来に責任をもつ大切な日々が始まります。楽しい育児は、経済的な自立に支えられています。そのために貯金が必要なことはいうまでもありません。