記事監修医師
東大医学部卒、セレオ八王子メディカルクリニック
二宮 英樹 先生
2017/3/16 記事改定日: 2020/9/3
記事改定回数:4回
記事監修医師
東大医学部卒、セレオ八王子メディカルクリニック
二宮 英樹 先生
デリケートゾーン(陰部)の痛みや痒みなどの不快感は、ほとんどの女性ならば一度は経験したことがあるのではないでしょうか? そんな症状が長期間続く場合、外陰がんの可能性が考えられます。今回は、女性特有のがんである外陰がんについて紹介します。
外陰がんとは女性の外陰部にできるがんですが、女性特有のがんのなかでは比較的まれな病気です。深刻な病気ではありますが、早期発見の場合は治る確率が高いといわれています。ただし、進行してから発見された場合や、悪性度が高い場合は治療が難しくなります。
外陰部は、女性器の上部の恥丘、大陰唇、内側の左右一対の小陰唇などで構成される部位のことです。
外陰がんになると、次のような症状があらわれます。
前がん病変として外陰部に白色や赤色、茶色などの斑点ができることもあります。
病変は、大陰唇や小陰唇、クリトリス(陰核)など、外陰部のどの部位にもできる可能性があります。病変がどの部位にどのくらいの範囲まで広がっているかで治療方針が変わります。
外陰がんを患った人の多くが、小豆大からビー玉大のしこりに気付いて受診しているといわれています。ただし、腫瘤やしこりの大きさには個人差があるため注意が必要です。
外陰がんを発症する年齢は、閉経後の65歳以上75歳未満の閉経後の女性といわれています。しかし、40歳以下の女性でもみられることがあります。
外陰がんの発症には、ヒトパピローマウイルス(HPV)が関係している可能性があるとされ、特に若い女性の外陰がんはヒトパピローマウイルスが関係している可能性が高いと考えられています。
ヒトパピローマウイルスとは、おもに性行為によって外陰部に感染するウイルスです。性行為の経験がある人の多くが感染しているとされています。このウイルスには100以上のタイプがあり、タイプによってはがんを引き起こす可能性があります。
ヒトパピローマウイルスは感染したとしても自覚症状がないまま自然に排除されることがほとんどです。しかし、長い間感染が生じている状態が続くと、軽度で慢性的な炎症が生じることで組織の異常増殖などによってがんが発生すると考えられています。
外陰がんのほかに、子宮頸がんもヒトパピローマウイルス感染によって発症することが分かっており、「セーフティーセックス」を心がけることが大切とされています。
ヒトパピローマウイルスは、性的接触(オーラルセックスやアナルセックスを含む)によって感染する可能性があります。ただし、感染しても発症するまでは数年以上かかることが大半ですし、感染しても必ず発症するわけではありません。ヒトパピローマウイルスの感染予防には、コンドームの使用が有効と言われています。
外陰がんの診断はまず、医師による視診や触診を行います。そのあと、外陰がんが疑われる皮膚の一部を切りとって、顕微鏡検査で組織を調べる生検が行われるとともに、CTやMRIといった画像検査も行います。画像検査では、体内にがんが広がっているか、リンパ節などに転移していないかなどを調べます。
また、進行度や組織型も含めた最終的な診断は、手術で切除した組織を病理検査で調べて確定します。
外陰がんは、基本的に手術で切除して治療します。がんの大きさ、深さ、広がりによって切除する範囲や、手術に追加する治療が異なります。
早期の場合は手術のみで高い確率で治癒しますが、進行するにつれて、リンパ節の郭清(かくせい:がんを取り除くだけでなく、周囲のリンパ節も取り除くこと)や周辺部を広範に切除するといった形で治療が追加されます。また放射線療法、化学療法が組み合わせて治療されることがあります。
早期の外陰がんの場合は局所切除のみですが、進行するにつれて鼠径リンパ節郭清が追加されたり、外陰部分切除、広範外陰切除と切除範囲が広がります。
外陰がんの手術では陰部の一部を切り取るため、他の部位から皮膚などの組織を移植したり、人工的な外陰や腟形成を行うための形成外科手術や人工肛門、人工尿路などのストーマをつくらなければならない場合もあります。
以下のような症状がみられたら、皮膚科か婦人科の医師に相談してください。
外陰がんは、赤みやかゆみの症状が現れるため、カンジダ腟炎を代表とする腟炎やナプキンやおりものシート、下着のかぶれと勘違いされてしまい、発見が遅れることがあるので注意が必要です。
できものができたり、かゆみがあるといった症状がすべて外陰がんというわけではありませんが、外陰部に異変がある場合は見過ごさずに必ず病院を受診しましょう。
外陰がんは早期発見でき、早期に治療を開始できれば治癒率は高くなります。外陰部のかゆみや痛みが長く続いていたり、出血や腫瘤ができているなどの症状がみられたら、すぐに医療機関を受診しましょう。