記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
例えば「乳製品を食べると下痢になりやすい」といった経験はありませんか?
それは、「食物不耐性」と呼ばれる症状かもしれません。食べ物に関連して起こる反応のため食物アレルギーと勘違いされやすいですが、食物不耐性と食物アレルギーは別物です。
今回は食物不耐症について詳しく見ていきましょう。
食物不耐症は、特定の食品を完全に消化できない状態を指します。
体内で食べ物を完全に紹介できないと、部分的に消化されたタンパク質や糖分が残り、体がタンパク質の分解断片を異物と認識してしまうことから様々な問題を引き起こします。しかし、体質に合った食事を摂ることによって症状は軽減されることが多いです。
また、食物不耐症は大きく下記の4つに分類され、発症者は食物アレルギーの患者よりも多いと言われています。
◆乳製品不耐症(乳糖不耐症を含む)の発症者は100人中約75人
◆酵母過敏症(ツグミ、カンジダを含む) の発症者は100人中約33人
◆グルテン過敏症(セリアック病、小麦不耐症を含む) の発症者は100人中約15人
◆果糖過敏症又は果糖不耐症の発症者は100人中約35人
一方で食物アレルギーは有病率1%以下、つまり100人中1人に発生する程度の割合です。
特定の食品に敏感になる原因は判明していませんが、一般的には穀類、牛乳、砂糖などが原因となることが多いです。その他の原因としては、下記のような食品添加物、化学物質、汚染物質が引き金となっている可能性があります。
・グルタミン酸ナトリウム
・カフェイン
・アルコール
・人工甘味料
・ヒスタミン(キノコ、漬物および塩漬けの食品、アルコール飲料に含まれる)
・食品に含まれる毒素、ウイルス、細菌、寄生虫
・人工着色料、防腐剤、うま味調味料
食品不耐症は特定の食品を適切に消化・処理することができない状態なので、慢性的に何らかの症状が出たり、病気を引き起こしたりする原因となり得ます。
以下にあげるのは食品不耐症の代表的な症状です。
1.胃腸(胃や消化管)に関わる症状:腹部膨満感、お腹の痛み、下痢、便秘、大腸炎等
2..呼吸器(肺、呼吸)に関わる症状:慢性的な咳、喘息、気管支炎、副鼻腔炎
3.皮膚に関連する症状:湿疹、乾癬等
4.神経学的な症状:慢性頭痛
5.精神学的な症状:記憶力の低下、気分障害、うつ病、行動異常
6.筋骨格(筋肉及び骨)に関連する症状:関節炎、痛風
7.生殖器(性器や受精)に関わる症状:不妊症、流産
8.免疫に関わる症状:アレルギー、頻繁な感染症
9.吸収不良に関わる症状:栄養欠乏症、貧血、骨粗鬆症
食物不耐症が症状となって出現するまでに食後から最大48時間が経過する場合もあります。そうすると、症状と原因となった食物とを結びつけることは難しく、食物不耐症の可能性を疑わずに放置してしまうことが多いでしょう。実際に多くの人が、不調の原因を食物不耐症だとは知らずに、便秘薬などの症状を緩和させる薬剤で対処していることが予測されています。
また、症状の程度にバラつきがあるのも食物不耐症の自覚症状が現われにくい要因のひとつです。例えば不耐症の食べ物を連続して摂取した場合は症状が出やすいけれど、たまに食べる場合は症状が出ないなど、状況や体調に応じて症状の出方も異なるため、食物不耐症を正確に診断することは非常に難しいと言えます。
食物アレルギーは特定の食べ物によって起こる点は食物不耐症と同じですが、症状が起こるメカニズムと症状の現われ方が異なります。
食物不耐症は消化器官での消化不全によって引き起こされますが、食物アレルギーは免疫システムによる反応です。
すなわち、食物アレルギーの場合は対象の食品を少量食べただけで、発疹、喘鳴、かゆみなどの症状を引き起こす可能性があり、多くの場合症状は食品を口にしてから時間を置かずに現れます。
残念ながら、食物不耐症の検査方法は現在見つかっていません。
そのため、食物不耐症があるかどうかを調べるためには、食物不耐症だと疑われる症状と食べた物の関連性を確認することが必要になります。そこでおすすめなのが、食べた物、それらを食べた後に起こった症状、症状が現れた日時などを日記のように記録することです。
もしも原因と思われる食べ物がわかったら、一度その食品を2~6週間食べないようにし、症状が改善するかどうかを確認してみましょう。
実は有病率が高い食物不耐性。
食物アレルギーとは異なり、特に症状が軽い場合は自覚しにくいことが多いですが、症状が重い場合や慢性的に続いている場合は医師に相談してみましょう。