男性の不妊はどんな検査や治療をするの?費用はどのくらいかかる?

2017/9/11 記事改定日: 2018/4/11
記事改定回数:1回

前田 裕斗 先生

記事監修医師

国立成育医療研究センター フェロー

前田 裕斗 先生

子供をさずかりたくて妊娠活動を始めたにもかかわらず、1年以上妊娠が起きないことを不妊症といいます。約16%のカップルが不妊に悩むといわれるなか、その原因として案外忘れられがちなのが男性不妊症です。男性不妊とはいったいどのようなものなのでしょうか。

男性不妊症の検査

不妊症の検査は、問診で病歴を確認し、全身の状態と精液を検査します。精液は複数回の検査が行われる場合もあり、精子の数・質を調べ、男性の繁殖力を確認します。初回の結果によってはさらに詳しく検査をする場合もあります。必要な検査が終了したら、検査結果に応じた治療が開始されるでしょう。

男性の不妊症の検査の代表的なものは、以下の通りです。

 精液検査

精液検査では、精子の数、形、運動能力を評価する検査です。
5日程度の禁欲期間の後にマスタベーションで射精し、その精液を顕微鏡で調べます。検査を受ける病院によって異なりますが、院内にある個室で精液を取ることもあれば、朝自宅で取った精子を病院に届けることもあります。また、精子の状態は日ごとにことなるため、悪い結果が出たとしても何度か繰り返して行われるのが一般的です。

 染色体検査

私たちの体には23対46本の染色体があります。卵子と精子にはそれぞれ23本の染色体が含まれており、受精で合体することで46本の染色体が完成します。
しかし、この染色体に異常があると、受精卵は正常に生育できず、不妊の原因となります。
また、クラインフェルター症候群などの染色体異常は、無精子症の原因となることも知られています。
男性不妊のうち、染色体に異常がある人は約10%との報告もありますが、染色体の異常は血液検査で調べることができます。

ホルモン検査

ホルモンバランスの異常も男性不妊につながります。
テストステロンと呼ばれる男性ホルモンの一種は、男性の生殖機能を維持し、性欲を高める効果があり、テストステロンの減少は、造精機能や性欲の低下につながります。

不妊検査では、このテストステロンの値だけでなく、テストステロンが減少することで逆に増加する「FSH」やLHなどの性腺刺激ホルモンの検査も行われます。
また、男性ではまれですが、乳汁分泌ホルモンであるプロラクチンが増加している人は造精機能の低下や勃起障害が引き起こされることもあるため、プロラクチンもセットで検査されることが一般的です。

感染症検査

クラミジアや淋病は男性不妊の原因になります。
これらの性感染症は、男性では症状が軽く、感染していることすら気づかずに放置されていることも多いですが、重症化すると炎症が波及して精巣上体炎を引き起こします。精巣上体炎は完治しても、精管の癒着によって精子の排出をブロックしてしまい、無精子症や乏精子症になることがあります。
性感染症検査は陰茎からの分泌物を調べて、原因となる細菌の存在を確認します。

男性不妊症の原因

男性側に原因がある不妊は、不妊全体の約3分の1ほどとされています。1年以上にわたって妊娠しなかったときは、男女どちらとも病院の診察を受けるようにしましょう。特に女性の年齢が35歳以上であれば、早めの医師のサポートがより重要になることがあります。

男性不妊症の原因のなかでも特に多いものは、精索静脈瘤です。 精索静脈瘤は陰囊の静脈が肥大化する病気で、片側または両側に形成されます。静脈が肥大すると、陰囊内部の温度を高めることで精巣の精子産生量を減少させるおそれがあるといわれています。 その他、男性の生殖器系の閉塞、特定の薬の影響、精子の数の不足、精子が正常に働かない、停留精巣(精巣が出生時に正常に位置しない状態)、感染症なども、男性不妊の原因になります。

また、生活習慣が不妊の原因になっている可能性もあります。喫煙、過度のアルコール摂取、違法薬物の乱用、精神的ストレス、肥満などが明らかなときは、ただちに見直しましょう。なお、男性不妊症の原因が特定できないときは、遺伝的な要因を調べる必要があるかもしれません。

男性の不妊は治療で治るの?

男性不妊症の2分の1以上の症例は治療可能とされ、治療することで通常のセックスを通じての妊娠も可能なことがあります。 治療は内科的な治療や外科的な治療、軽度から高度なものまで様々です。症状や自身の考えをもとに、医師とよく相談しながら治療方法を選択しましょう。

人工授精

精子の数が少ない人や運動能力が低い人は、タイミング療法を行っても妊娠に至らないことが多く、第二のステップとして人工授精がすすめられます。
人工授精とは、排卵直前の時期に採取した精液を濃縮して運動能力の高い精子を選別し、細い管を通して子宮の奥へ注入する方法です。運動能力が高く、質のいい精子が選ばれてから人工的に子宮の奥まで注入するので、受精する確率が高くなります。
ただし、精子の数や運動率が極端に少ない人には適さない治療です。

内科的治療

男性不妊の原因の一つに、EDがあります。EDは精神的な問題が原因になることが多いですが、糖尿病や高脂血症、高血圧などの生活習慣病が原因となることもあります。
男性不妊の治療としては、ED改善薬の服用や生活習慣病の改善を促す治療が行われることもあります。

手術

男性不妊は原因によっては手術で改善することができます。代表的な手術は以下の2つです。

① 精路再建術

精管の癒着などによって、精子の通り道が閉塞している場合に行われる手術です。閉塞した部分を切除して、正常な精管同士をつなぎ合わせる単純な方法です。精路の閉塞が解消されれば自然妊娠を望むことも可能です。

② 低位結紮術

精索静脈瘤の人に行われる手術です。
静脈瘤ができた部位を結ぶことで瘤を物理的に閉塞させます。傷跡も少なく、日帰り手術で行う病院もあります。

③ 顕微鏡下精索精子採取術

精路の閉塞が原因でない無精子症の人に行う手術です。
精巣を切開して、状態の良い精子を探し出します。この方法で採取される精子の数は少なく、顕微授精が必要になります。

男性の不妊治療の検査や費用はどのくらいかかる?

男性の不妊治療の費用は病院によっても異なりますが、検査は1回5000~30000円ほどのことが多いといわれています。しかし、一般的な精液検査などは保険適応となることもあり、自己負担は少なくなる可能性があるでしょう。
一般的な治療の費用は、タイミング療法が1回10000円前後で、人工授精は30000円程度とされ、顕微授精になると費用はグンと上がって、1回30~50万円ほどかかります。

手術を行う場合は、低位結紮術や精路再建術は保険が適応されますが、精索精子採取術は自費での治療となり、費用は20~40万円程度が相場です。
女性側にも問題がある場合には、更に費用が増え、一般的に不妊治療にかかる費用は150~200万円といわれています。

このように不妊治療は高額ですが、自治体ごとに助成金が出る場合もありますので、お近くの市区町村役場に問い合わせてみましょう。

おわりに:けっしてあきらめず、まずは生活習慣を見直してみましょう

不妊治療で大切なことは、不妊の原因が自分だけにあると考え込まないことです。また、不妊治療というと、体外受精のようなハイテク診療ばかりを考えがちですが、医師のカウンセリングを受けたり、支援団体に話を聞くことも不妊の改善に大いに役立ちます。
また、自治体ごとで助成金制度を設けているところもあるので、費用について不安がある人は問い合わせてみてはいかがでしょうか。

男性の場合は、アルコールを控えたり禁煙するといった生活習慣の改善だけで好転することもあるので、あきらめて投げやりになったりせず、身のまわりで取り組めそうなことから始めていきましょう。

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