“乳癌(がん)”の症状・原因 患者数が増えているからこそ、知っておこう!

2017/8/14

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

乳癌(がん)とは乳房の組織の中に癌細胞ができる疾患です。女性が患う癌の中で最も多く、近年患者数が増加しています。多くの有名人が罹患し、報道で取り上げられているので、知っている人も多いでしょう。この記事では、乳癌の基礎的な情報を見ていきたいと思います。

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知っておきたい!乳癌(がん)の基本まとめ

乳癌のなかで最も多くみられるのは、乳管癌と呼ばれる乳管の細胞から発生してくる種類のものです。小葉で発生する癌は小葉癌と呼ばれ、他の種類の乳癌と比べて両方の乳房に同時に見つかることが多い疾患です。また、赤く腫れあがって熱感を生じる、炎症性乳癌というまれな種類の乳癌もあります。女性だけに起こる癌というイメージを持っているかもしれませんが、まれに男性が発症することもあり、男性が発症すると女性と比べて治療の経過が悪いことが知られています。

知っているようで知らない?:乳癌の代表的な症状について

病名は知っていても具体的にどのような症状が出るかを知らない方も多いのではないでしょうか?そこで、乳がんの症状にはどのようなものがあるかを詳しく見ていきましょう。

乳房のしこり

乳癌は5mmぐらいから1cmぐらいの大きさになると、自分で注意深く触るとわかるしこりになります。わきの下にできるしこりはリンパの腫れであることが多く、そのほとんどが良性です。しかし、乳癌がわきの下のリンパ節に転移している潜在性乳癌の可能性があるので注意が必要です。このがんは乳腺内に発生した癌細胞の増殖よりも転移部位での増殖が速いのが特徴で、MRIなどの画像診断で発見されることが多いです。

乳房のえくぼなどの皮膚の変化

乳癌が乳房の皮膚の近くに達すると、えくぼのようなくぼみができたり、皮膚が赤く腫れたりします。乳房のしこりが明らかではなく、乳房表面の皮膚がオレンジの皮のように赤くなり、痛みや熱感を伴う場合は炎症性乳癌である可能性が高いです。

乳房の付近のリンパ節の腫れ

乳癌は、領域リンパ節とよばれる乳房の近傍にあるリンパ節、すなわちわきの下のリンパ節(腋窩リンパ節)、胸骨のそばのリンパ節(内胸リンパ節)や鎖骨の上下のリンパ節(鎖骨上リンパ節、鎖骨下リンパ節)に転移をきたしやすいです。この領域のリンパ節が大きくなってくると、リンパ液の流れがせき止められて腕がむくむ、腕に向かう神経を圧迫して腕がしびれるなどの症状が現れます。

遠隔転移の症状(痛み、咳など)

転移した臓器によって出る症状は異なり、症状が全くないこともあります。領域リンパ節以外のリンパ節が腫れている場合は、遠隔リンパ節転移と呼ばれ他臓器への転移と同様に扱われます。また、腰、背中、肩の痛みなどが持続する場合は骨転移が疑われ、荷重がかかる部位にできた場合には骨折を起こす危険もあります(病的骨折)。肺転移の場合は咳が出たり、息が苦しくなることがあります。

乳癌になる女性が増えている原因

一生涯に一度は乳癌になる女性は、数年前まで20数人に1人と言われていましたが、最近では12人に1人とされているほどその数は増加しています。乳癌患者が増加を続けている原因について知っておきましょう。

女性ホルモンの一種“エストロゲン”濃度の高さ

体内のエストロゲン濃度が維持されている期間が長いほど、ホルモン受容体陽性の乳癌の発症リスクがあがるといわれています。たとえば経口避妊薬の使用、閉経後の女性ホルモン補充療法など、体外からの女性ホルモン追加、初潮が早いことや閉経が遅いことが体内のエストロゲン濃度を高める主な原因です。また、妊娠や出産経験のある女性に比べて、ない女性は乳癌の発症リスクが高く、さらに初産年齢が遅いほどリスクが高いことがわかっています(妊娠・出産を契機に、乳腺の細胞が悪性化しにくい細胞に分化するためと考えられているため)。

搾乳経験の有無や断乳の仕方

授乳歴がある女性やその期間が長い女性の乳癌の発症リスクは、そうでない女性と比べて低いです。また、断乳をするときに母乳を上手く絞れずに母乳が石灰化してしまい、血行が悪くなることで癌細胞が住みやすい環境になってしまうことも乳癌発症の原因となり得ます。

食生活の欧米化

発癌リスクを上げる可能性があるものとして、動物性脂肪、ヘテロサイクリックアミン(肉を高温で調理するとできやすい化学物質)、炭焼きやスモークした食品に多く含まれる化学物質の多環芳香族炭化水素(たかんほうこうぞくたんかすいそ)、加工食品などに多く含まれる化学物質であるニトロソ化合物などが挙げられています。これらは伝統的な日本食よりも欧米スタイルの食事に登場する可能性が高いものです

おわりに:乳癌の原因から考えられること

食生活の欧米化や、女性の出産率の低下に伴う女性ホルモン内成分“エストロゲン”の高濃度化など・・・乳癌のリスクを高めている大きな要因のひとつとして挙げられるのが、ライフスタイルの変化です。以前よりも乳癌の発症率が高い生活環境で暮らす私たちにとって、定期検診を受けることは予防や早期発見のためにも大切だと言えます。

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