油断禁物!大気汚染が引き起こすぜんそくのリスク

2017/1/25

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

大気汚染は目、喉、肺を刺激し、様々な健康被害を引き起こす原因といわれています。
今回は、中でも”ぜんそく”の症状についてクローズアップしていきます。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

大気汚染は私たちの暮らしに身近なの?

答えは「YES」。大気汚染は、空気の質を低下させる様々な種類のガス、水滴および粒子から生じ、都市でも地方でも引き起こされる可能性があります。

〔主要原因〕
都市部:自動車、バス、飛行機、産業あるいは建設
地方:トラクターからの粉塵、泥や砂利道を走るトラックや車、岩石採石場、木材や作物の火災からの煙

地上レベルのオゾンは、ほとんどの都市で大気汚染の大部分を占めており、エンジンや燃料から発生する空気中のガスに太陽光が当たって反応し、生成されます。
なお、空気が滞っていて太陽が明るく気温が高い都市では、オゾン濃度が上昇します。
地上レベルのオゾンを、大気中で優しく、太陽の有害な放射線から私たちを守ってくれる「良い」オゾンと混同してはなりません。

また、大気汚染は目、喉、肺を刺激する可能性があります。そして通常、高濃度の大気汚染に曝されると、目の灼熱感、咳、胸の圧迫感が生じます。

以下では、大気汚染が原因で発症し得る“ぜんそく”についてみていきます。

大気汚染が招き得る、実は怖い“ぜんそく”とは

ぜんそく

ぜんそくは肺の病気です。 ぜんそく患者の気道は、アレルギーを引き起こす物質(アレルゲン)や空気中の他の刺激性物質に非常に敏感です。
ぜんそくの症状は、アレルゲンまたは他の刺激物が気道の内壁に炎症(腫脹)および狭窄を引き起こすことで始まります。
そして気道の周りの筋肉がけいれん(急速に収縮)し、気道がさらに狭くなります。
気道の内壁に炎症が起きると、より多くの粘液が産生されます。 粘液は気道を詰まらせ、さらに空気の流れを遮断します。 これを「ぜんそく発作」といいます。

症状

過剰な粘液が気道をふくらませて締めつけると、ぜんそく発作が起こります。
発作には軽度、中度、重度がありますが、症状には以下が含まれます。

・咳
・息苦しい感じ
・胸の締めつけ感
・喘鳴(ゼーゼーヒューヒューと音を出す呼吸)または笛吹き音
・痰(粘液)のからむ咳
・呼吸や話すことが困難
・睡眠障害

治療法

治療は、 ぜんそく発作の原因となる症状を避け、症状を観察し、薬を飲むことです。
ぜんそく薬は一般的に、発作を防ぐ薬(コントローラー薬)と発作を治療するための薬(レスキュー薬)の2つのグループに分けられます。

・発作を防ぐ薬(コントローラー薬)
気道の腫脹を軽減してぜんそく発作を防ぐのに役立ちます。 症状の有無に関わらず、定期的に服用しなければなりません。定期的に内服しないかぎり、効果があらわれるまで数時間または数日かかり、うまく作用しません。

・発作を治療するための薬(レスキュー薬)
即効薬とも呼ばれ、ぜんそく発作時に気道周囲の筋肉を弛緩させることで、気道を開くことができます。 ぜんそく発作を起こしているように感じたら、すぐにこの薬を服用するための医師の指示に従ってください。

医師は、これらの薬や発作がある場合の対処法について指導のうえ薬を処方してくれます。
なお、市販の吸入剤と喘息吸入器の使用については必ず医師に相談してください。国内では使用できないものがあります。
また、その他の注意すべきこともあるかもしれないため、症状を感じた場合速やかに医師へ相談することが賢明でしょう。

大気汚染から身を守るためにできること

暑く晴れた日など、危険性の高い気象条件がある場合、また胸の圧迫感や目の痛み、咳などの症状が出始めた場合は注意してください。

大気汚染の影響からあなたとあなたの家族を守るために、以下のことができます。

・汚染レベルが高いと報じられている間はできるだけ屋内にいること。 汚染物質の多くは、屋外よりも屋内のほうが濃度は低いです。

・外に出る必要がある場合は、屋外での活動を早朝に制限するか、日没後まで待つこと。 日照がオゾンレベルを上げるため、これは高オゾン状態(大都市の多くなどで発生)の際に重要です。

・大気汚染が健康に有害な状態であると報じられているときには、屋外で運動をしないこと。 (呼吸が速くなればなるほど、肺への汚染が増えます!)

これらの方法で、一般的に健康な成人と子供の症状を予防することが可能です。

おわりに

大気汚染に対する反応は人によって非常に異なりますが、誰にでも健康被害を受けてしまうことは起こり得ます。
身体的違和感や症状がでている場合のみならず、害の大きさでよく知られている汚染源の近くに住んでいる、あるいはそこで働いている場合、心臓や肺に慢性的な疾患がある場合は、大気汚染から身を守るための他の方法について医師に相談するのがベストでしょう。

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