記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
怒りの感情を、その勢いのままに吐き出すことで自分自身が被るデメリットの大きさは、大人であれば重々承知のことでしょう。
それでもなかなかうまくいかないのはご承知のとおりです。今回は、怒りのマネジメントの専門家である臨床心理学者のイザベル・クラーク氏の言葉から、私たちが自分でできる怒りのコントロールについて学んでみましょう。
怒りは誰もが持つ普通の感情です。しかし、それを制御するのは非常に難しく、多くの人々は怒りの適切な表現方法を知らないまま、自身の行動や他人の行動について怒りを吐き出してしまいます。その他にも、小さなことが積み重なっていき「人生は不公平だ」と感じてしまうことで生まれてくるような怒りもあります。
そうした怒りのコントロールが難しくなってしまい、ますます過敏になったり、飲酒や薬物乱用などの行動を伴うようになった場合には、医師やカウンセラーに相談することをおすすめします。
「怒りは抑えることができますし、そうする責任があります。」とクラーク氏は言います。
以下では、沸き上がった怒りのコントロール方法について考えていきましょう。
「怒りは身体的反応を伴います。体があなたに語っていることに気づき、落ち着かせるための措置をとりましょう」とクラーク氏は語ります。
怒りによって、心臓をより速く鼓動させ、より早く呼吸することでアクションに移すための準備をします。また、肩の緊張や拳をにぎりしめるなど、他の兆候にが現れることもあります。「これらの兆候に気づいた場合は、すぐに怒りの状況から抜けだしてください、これまでにコントロールを失ったことがあるなら、なおさらです」。
怒りが沸いたら、すぐに10まで数えると冷静になる時間を得られます。より明確な思考ができるようになるので、暴力をふるいたくなる衝動を克服することができるでしょう。
息を吸い込むときよりも、吐き出すほうを長くし、吐き出すときにリラックスを心がけましょう。「怒っている時には、息を吐き出すよりも吸い込むほうが長くなっているので、息を吐き出すほうを長くしてみてください」とクラーク氏は語ります。「これにより、あなたが効果的に落ち着き、また明確に考えることに役立ちます」。
ここまでは、怒りの感情が沸いた瞬間の行動管理についてお話してきました。次に、長期的なスパンで怒りを制御する方法をご紹介します。
エクササイズやリラクゼーションでストレスレベルを下げましょう。走ることや歩くこと、水泳、ヨガや瞑想はストレスを軽減してくれます。
「日常生活の一部としてのエクササイズは、怒りを取り除く良い方法です」とクラーク氏は語っています。
定期的にリラックスする時間をとったり、十分な睡眠をとるようにしましょう。
薬物やアルコールは怒りの問題を悪化させるリスクがあるので避けるようにしてください。クラーク氏も「薬物やアルコールは抑止力を弱め、自分でも容認できないような行動をさせることがあります」と述べています。
執筆や音楽制作、ダンスや絵画は緊張を解放し、怒りの感情を減らすことが期待できます。
自分の気持ちを友人と話すことは有用であり、怒りの状況について異なる視点を得るのに役立ちます。
近年、アンガーマネジメントの考え方が広がり、周囲とのコミュニケーションや自分の成長に役立てようとする人も増えてきました。
ふだんの生活の中でも、今回ご紹介した方法を実践することで、周囲とのトラブル防止に役立つでしょう。
しかし、もしあなたの怒りが制御不能に陥りそうなら、躊躇せずに助けを求めてください。かかりつけ医やカウンセラーに相談したり、支援を提供してくれる場所を訪ねてみましょう。