うつ病の症状や治療方法はいろいろある!?正しい診断が回復の鍵

2017/7/5

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

うつ病とは、精神的ストレスや身体的ストレスが重なるなどの理由から、自律神経失調症(過度のストレスによって身体的な不調が生じること)に加えて脳の機能障害が起きている状態です。眠れない、食欲がない、一日中気分が落ち込んでいる、何をしても楽しめない・・・そのようなことが続いている場合はうつ病の可能性があります。
また、ひと口にうつ病と言っても、症状や治療法は様々です。この記事では、うつ病ついて詳しく解説していきます。

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うつ病患者数が増えている理由

日本では100人に3~7人という割合で、「これまでにうつ病を経験したことがある」という調査結果が出ています。厚生労働省が3年ごとに行っている患者調査によると、近年うつ病を含む気分障害の患者数が急速に増えていることが明らかになっています。
要因としては、社会・経済的な環境の影響で抑うつ状態になる人が増えていることはもちろん、うつ病についての認識が広まったことで診断基準の解釈が広がっているということも挙げられるでしょう。

精神面だけじゃない!うつ病の症状について

うつ病においては患者自身が感じる気分の変化だけでなく、周りからみてわかる変化もあります。また、体に変化が現れることもあります。

自分で感じる変化

・抑うつ気分(憂うつ、気分が重い)
・何をしても楽しくない、何にも興味がわかない
・疲れているのに眠れない、一日中眠い、いつもよりかなり早く目覚める
・イライラする、何かにせき立てられているようで落ち着かない
・罪悪感を感じ自分を責める、自分には価値がないと思う
・思考力が落ちる
・死にたくなる

周りの人から見てわかるサイン

・表情が暗い
・涙もろくなった
・反応が遅い
・落ち着きがない
・飲酒量が増える

体に現れる変化

・食欲がない
・体がだるい
・疲れやすい
・性欲がない
・頭痛や肩こり
・動悸
・胃の不快感
・便秘がちになる
・めまい
・口が渇く

上記で紹介した症状はあくまで目安です。「当てはまっているかも・・・」と思ったら、まずは専門家に相談するようにしましょう。専門家は総合病院の精神科や心療内科、精神科専門のクリニックなどにいることが多いですが、身近で専門家が見つからない場合は、かかりつけの医師や地元の保健所や精神保健福祉センターの相談窓口に相談してみてください。

うつ病にも種類があること、知っていますか?

最近では発症の原因からみて、外因性(あるいは身体因性)・内因性・心因性(あるいは性格環境因性)と分ける場合が増えてきています。

身体因性うつ病

アルツハイマー型認知症のような脳の病気や甲状腺機能低下症のような体の病気、副腎皮質ステロイドなどの薬剤が原因となっているうつ病を指します。

内因性うつ病

典型的なうつ病です。躁状態が見られる場合は「双極性障害」と呼びます。通常の場合は抗うつ薬が効果的で、治療をしなくても一定期間内に改善すると言われています。ただし、本人の苦しみや自殺の危険性などを考えると、なるべく早く治療したほうが良いでしょう。

心因性うつ病

性格や環境がうつ状態に強く関係している場合の呼び名です。またの名を抑うつ神経症(神経症性抑うつ)、環境の影響が強い場合は反応性うつ病と言います。

診断が難しい?!

憂うつな気分や気持ちが重い状態がほぼ一日中あり、それが長い期間続く、というのがうつ病の代表的な症状です。そのため、それらの症状が見られると多くの場合はうつ病と診断されます。

しかし、症状だけで「うつ病」と診断することはリスクがあると言えるでしょう。このような症状は、性格、環境、ほかの病気やこれまで服用していた薬が関係している現れていることもあります。また、これまでに躁状態や軽躁状態を経験したことがある場合は、うつ病でなく双極性障害(躁うつ病)の可能性が考えられるため、そのような精神疾患の病歴の有無の確認も必要と言えるでしょう。

加えて、統合失調症などの精神疾患が背景にあり、抑うつ状態はその症状のひとつだった・・・という場合もあります。このような症状がうつ病と診断されてしまえば、より重大な疾患が見逃されることになり、せっかくの早期発見・治療のチャンスを逃してしまうことになりかねません。そのような事態を防ぐためにも、正しいうつ病の診断には「うつ病のどのタイプなのか」「ほかの精神疾患である可能性はないか」などを確認することが大切です

治療法は一人ひとり異なるもの

前述の通り、うつ病には複数の分類があるため診断も複雑です。また、その治療法も多岐に渡ります。一般に抗うつ薬による治療が行なわれますが、典型的なうつ病でも軽症の場合は薬の効果がそれほど期待できないこともあり、必ずしも薬物療法が有効とはかぎりません。
たとえば、体の病気が原因である場合はその症状を抑えるための治療を行い、薬の影響が考えられる場合は可能であれば薬をやめる、あるいは別の薬への変更を行います。性格的にストレスなどの影響を受けやすい場合は精神療法的なアプローチが効果的です(ただし、うつ状態が重症であれば抗うつ薬による治療も平行して行われます)。

また、治療を進めるうえで不安や悩みがあれば遠慮なく主治医に相談しましょう。主治医に何でも相談できるような関係を築くこともうつ病改善への大きな一歩といえます。

おわりに:「うつ病になること=精神的に弱い」ということではない

ひと口にうつ病と言っても、症状や治療法は幅広く存在します。身体面でも精神面でも、上記で出てきたような症状に当てはまると感じたら、専門家やかかりつけ医、社会機関などに相談しましょう。
また、うつ病になったとき、あるいは兆候が現れたときに「うつ病になるのは自分が精神的に弱いからだ」などと自分を責めることはやめましょう。時間がかかる場合もありますが、気分がよい方向に向かう日は必ず訪れます。焦らずに、自分に合ったペースで治療をしていくようにしてください。

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