記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
癌(がん)はみんな恐いものですが、消化器系の癌の代表のひとつでもある胃癌は、受信するタイミングもわかりにくいので、とくに恐いのではないでしょうか。また、胃癌になると、消化ができなくなるので、食べられなくなると不安になったりする人もいると思います。
そもそも、胃癌とはどんな症状が現れるのでしょうか?
この記事では、胃癌の症状や病院を受診するタイミングについてまとめています。気になっている人は参考にしてください。
胃癌とは、悪性(がん)細胞が胃粘膜上皮にできる病気です。
胃は、上腹部にあるJ字型の臓器であり、消化系の一部です。消化系とは、食べた食物に含まれる栄養素(ビタミン、ミネラル、炭水化物、脂肪、タンパク質、水)を吸収し、老廃物を体外に排出する手助けをします。
食物は食道と呼ばれる、空洞で頑丈な管を通って、喉から胃まで移動します。胃の中である程度まで消化された食物は、胃を出たあと小腸に、その次に大腸へと流れていきます。
胃壁は、粘膜(最も内側)、筋層(真ん中)、漿膜(最も外側)の三層の組織からできています。胃癌は、胃粘膜上皮にがん細胞ができることから始まり、徐々に大きくなりながら外側の層まで広がっていきます。
胃癌の発病リスクは、年齢、食生活、胃疾患などの影響を受けます。
病気にかかるリスクを高めるものは、リスクファクターと呼ばれますが。リスクファクターがあるからといって癌になるわけではなく、リスクファクターがないから癌にならないというわけでもありません。しかし、リスクファクターがあれば、癌になる確率は上がることが予想されます。自分にリスクファクターがあるかどうか不安な場合は、医師に相談しましょう。
胃癌のリスクファクターには次のようなものがあります。
・胃のヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)への感染
・慢性胃炎(胃の炎症)
・悪性貧血
・腸上皮化生(通常の胃上皮が、腸上皮を作り上げる細胞に置き換えられる病気)
・家族性大腸腺腫症(FAP)または胃のポリープ
・塩の摂りすぎや、煙でいぶした食品を多く摂る、果物や野菜の少ない食生活
・適切な調理や保管がされていない食品の摂取
・年配もしくは男性
・喫煙
・胃癌にかかったことのある母親、父親、姉妹、兄弟がいる
ここでは、胃癌でみられる症状について、進行別に分けてお伝えします。
初期の胃癌の症状のほとんどは、あまり深刻ではない病気と似ているので、初期段階での発見は難しいです。
初期段階でみられる症状には次のようなものがあります。
・消化不良や胃の不快感
・食後に太ったように感じる
・軽い吐き気
・食欲の減少
・胸やけ
・持続する消化不良
・ガス溜まり
・胸やけ
・食事中、すぐに満腹になる
・気分が悪くなる
・腹部または胸骨の傷み
・飲み込むことが困難(嚥下障害)
・初期段階ではまれだが、嘔吐(嘔吐物に血が混じっている可能性)
このような症状は、胃がんもしくは別の病気によって引き起こされている可能性があるので、注意しましょう。
胃癌が進行した段階では、次のようなサインや症状がみられるかもしれません。
・血便
・嘔吐
・理由のない体重減少
・胃痛
・黄疸(目と皮膚の黄変)
・腹水(腹部における液体の蓄積)
・飲み込むことが困難
・疲労
・腹部がごつごつしたり、膨張する(液体の蓄積による)
・貧血(疲労と息苦しさを感じさせる、赤血球の減少)
これらの症状があった場合、医師に相談しましょう。
胃癌は、早期発見・治療で回復しやすいがんです。
胃癌が疑われるときは、早めに医師の診察を受けることが重要です。
若い人より高齢者のほうが胃がんにかかりやすく、100件中90件の症例が55歳以上の人にみられます。
消化不良は、一般的に非常によくみられる症状です。55歳以下の人が消化不良を起こした場合、その人が胃癌である可能性は低いと言えますが、それでも、消化不良と体重減少、貧血、持続的な嘔吐がある場合は医師に診てもらいましょう。診断が難しく精密検査が必要な場合でも、専門の医療機関を紹介してくれます。
また、飲み込むことが困難な場合も医師に診てもらいましょう。これはよくみられる症状ではありません。早期に検査し原因を調べる必要があります。
がんは、日ごろから機会を見つけて検診などを受けておくことをおすすめします。特に胃癌は、記事の中にもあるように、初期症状で見つけるのは難しい病気です。
普段の生活の中で、気になる症状が出たら、まめに受診するようにしましょう。