皮膚がん?子どもにはいい? 日光浴のメリット・デメリット

2017/1/25

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

ほとんどすべての人は日光を浴びます。日光が皮膚がんの原因になることは盛んに言われていますし、ビタミンDの生成のためには日光をちゃんと浴びる必要もあったりどっちに気をつければいいかわからなくなりますね。でも、子どもや10代などの若い人が、日光にあたることの影響・危険性を知ることは、皮膚がんのリスクを減らすためにも大事なことです。日光についてしっかり知っておきましょう。

日光の危険性とは何ですか?

日光は、有益な光も有害な光も放ちます。これらの光は紫外線(UV線)と呼ばれ、UVA、UVB、UVCの3種類があります。

UVA線は最も一般的に浴びる紫外線です。UVB線は浴びる機会は少ないですがより強力な紫外線で、UVC線は最も危険な紫外線です。幸い、UVC線はオゾン層で遮られるので私たちが浴びる危険性はありません。

この紫外線は目に見えませんが、肌に浸透します。皮膚には表皮(外側)と真皮(内層)があり、神経と血管は真皮に存在します。一方、表皮細胞はメラニンと呼ばれる色素を含みます。メラニンは皮膚を保護しビタミンDを生成する役割がありますが、色白の人は色黒の人よりもメラニンが少ないため、やけどしやすいです。

紫外線を多く浴びると、紫外線が内側の皮膚層に届き、日焼けの状態になります。日焼けすると、皮膚細胞が死滅・損傷したり、癌を発症する可能性があります。
日焼けの兆候は次のとおりです。

・赤み
※肌は、血流の増加に伴い赤くなります。赤みはすぐに出ることも、時間が経ってから出ることもあります。室内に入るまでやけど状態とは気づかないかもしれません。
・肌のほてり、鳥肌、身震い
・痛み
・かゆみ、肌が固くなる
・水疱
・脱水
・皮がむける
※身体の死んだ細胞を排除するときに起こります。

日光にあたることのいいこと悪いこと

日光にあたることにはメリットとリスクがあります。

日光のメリット

少量の紫外線の場合は身体に良い影響をあたえてくれます。健康な骨を構築・維持するためにはカルシウムが必要ですが、日光を浴びることでカルシウムを吸収するビタミンDが生成されます(日光以外でも、特定の食品からビタミンDをとることもできます)。
また、世界保健機関(WHO)によると、紫外線は湿疹、乾癬、くる病、黄疸がある人の治療で有効な場合があると発表されています。なお、消毒や滅菌にも効果的です。

日光のデメリット

一方、日光にあたる機会(時間)が多すぎると、以下を引き起こすことがあり有害です。

・皮膚の変化
メラニンなどの皮膚細胞は塊を形成し、そばかすやほくろを作ります。これらは時間の経過とともに、癌を発症する可能性があります。
・老化が早まる
日光の下で過ごすと肌が早く老化し、しわ、黒ずみ、肌が固くなるなどの症状が現れます。
・免疫機能の低下
白血球には身体を保護する働きがあり、肌がやけどすると白血球が新しい細胞を作り出します。これにより、ほかの部位の免疫システムが危険にさらされる可能性があります。
・目の傷害
紫外線は角膜を焼いたり、視界をぼかすなど目の組織に損傷を与える可能性があります。また時間とともに、白内障を発症する恐れもあります。未治療のまま放置すると失明の原因となります。
・皮膚がん
ほとんどの皮膚がんは早期に発見できれば治療可能です。一方、未治療のままにしておくとほかの部位に広がる可能性があります。

どんな人でも日光の影響を受ける危険性があります。日に当たる時間の長さと強さに比例してリスクは増加していきます。色白だったりほくろがあったりすると、よりリスクが高まります。また、家族に皮膚がんにかかった人がいるかも関係します。

そのほか、農家、漁師、建設現場での仕事など日光の下で一日中働いている人たちは、一層大きなリスクにさらされており、特に注意が必要です。

日光の有害な影響を防ぐには?

有害な日光を防ぐための方法

日光の有害な影響は防ぐことができます。予防方法と一緒に、身体が日光によってどのように反応するかも紹介しますので、ぜひ知っておきましょう。

・日焼け止めを使用する
SPFが高いほど、紫外線から保護します。SPFは15以上で、UVAとUVBの両方を遮断するものが望ましいです。また、外出の30分前に日焼け止めを塗る必要があります。その際は、耳、唇、髪の生え際といった見過ごされがちな部分にも塗り、2時間ごとに塗りなおす必要があります。水泳や発汗後にも塗りなおしましょう。

・日光を浴びる時間に注意する
10時から16時の間は、日光が最も強いときなので、直射日光を避けてください。気温が高い地域の方は特に注意するようにしてください。

・休憩をとる
室内や日陰に入る、日傘を使うなどしましょう 。

・隠す
肌を紫外線から守るために、衣服や帽子を着用してください。より敏感な赤ちゃんや子どもは常に着用する必要があります。また、紫外線を遮断するサングラスも着ける必要があります。

日光で気をつけておくこと

日光暴露に関しては、ほかにも気をつけることがあります。
抗生物質や避妊薬などの特定の薬には、日光や紫外線に敏感にさせるものがあるので、医師や薬局に相談してください。
また、紫外線は、水、コンクリート、砂、雪などで反射します。そのため、スキー中も空が曇っているときも日焼けすることがあります。
なお、日焼けマシーンは決して使用しないでください。日光ではありませんが、安全というわけではありません。日焼けマシーンには多くの紫外線が含まれています。また、オイル、ローション、ピルなど日焼け補助製品の使用も避けるべきです。これらはより多くのメラニンを生成し、より早く肌を黒くします。

日焼けしたい場合は?

安全に日焼けをする方法があります。ローション、スプレー、着色化粧品などのセルフタンナーを使用すれば、損傷の危険なしに肌色を変えることが可能です。また、エアブラシでも日焼けができ、サロンでもこのサービスの提供が一般的になりつつあります。日光とは異なり、これらの「偽日焼け」はメラニンを生成しません。日光を浴びるときは、日焼け止めやほかの保護手段を使用する必要があります。

病院を受診するタイミング

定期的なスクリーニングについて医師に相談してください。スクリーニングは、初期の皮膚がんの検出に役立ちます。また、自宅でも新しいシミや皮膚の変化を確認できます。痛みやかゆみがある、または色や形が変化したシミなど、変わったことに気づいた場合は医師に相談してください。医師により検査が行われます。なお、生検では、シミの一部または全部を取り除くことで、癌が含まれている判明します。癌を発見したら、治療が始まります。

おわりに:日差しと正しくつき合っていきましょう

人間が生活していく上で、日光は必要なものです。有害な影響があっても正しい方法でちゃんとつき合っていけば、必ずしも避ける必要はありません。少し日に当たり過ぎているなと感じる人は、気をつけてみてください。

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