記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
前回の記事では、不眠症の概要と治療を解説し、不眠症の治し方として良い睡眠習慣を挙げました。
今回の記事では、不眠症の治し方である認知行動療法や薬での治療についてまとめました。
前回の記事で見たように、生活習慣を変えると、急性の不眠症を緩和できることが多いようです。寝つきもよくなり、また、眠り続けやすくなります。
不安があると不眠症が長引く傾向があります。認知行動療法(CBT)と呼ばれるカウンセリングの一種は、慢性(進行中)の不眠症につながる不安を和らげ、不眠を解消する効果が期待ができます。
また、不眠症状を緩和し、定期的な睡眠サイクルを元に戻しやすくしてくれる薬を使うこともあります。しかし、不眠症が別の問題が原因で発症している場合や薬の副作用が原因で起こっている場合には、根本的な原因を(可能な限り)治療することが重要です。
次からは、もう少し具体的に治し方について見ていきましょう。
認知行動療法は、心の問題を患者と周囲の環境の相互作用としてとらえます。悩みを解決するために、患者の現在の心に焦点を当て、考え方や環境を変えるようにサポートしていきます。
不眠症の行動認知療法は、睡眠を妨げる要因になり得る思考や行動をターゲットにして、それがなくなるようにします。そして良い睡眠習慣を行うように促し、睡眠に対する不安を和らげるためにいくつかの方法が用いられます。
代表例として、リラクゼーション技術やバイオフィードバック(生体自己防御)が挙げられます。どちらも呼吸、心拍数、筋肉、および気分をコントロールしやすくなる効果が期待されるため、不安の軽減に役立つと考えられています。
また、ベッドで眠ることを前向きに考えられるように意識を変えるように誘導して不安を解消します。もちろん、眠れない場合どうすればよいかについてもアドバイスしてもらえるでしょう。
認知行動療法の目的は、自分がどのように見て、感じ、そして聞こえるかについて、自分の思考をまとめ、心を落ち着かせることです。セラピスト(臨床心理士など)と、1対1で話したり、グループで話したりしながら、睡眠についての自分の考えや気持ちに向き合います。
目覚めている間にベッドで過ごす時間を制限するために、睡眠スケジュールを設定します。最初は、実際に眠っている時間だけをベッドで過ごすように、短い時間で設定するでしょう。睡眠スケジュール通りに行動すると余計に疲れてしまうかもしれませんが、この方法には疲れさせることで、眠りにつきやすくするという目的もあります。夜ぐっすり眠れるようになってきたら、徐々にベッドで過ごす時間も長くなるでしょう。
認知行動療法を成功させるには、このアプローチに精通したセラピストに2〜3か月以上、毎週診てもらうことをおすすめします。
慢性不眠症の人にとって、認知行動療法は、処方薬と同じくらい効果があるといわれています。また、薬だけの治療よりも長期的な回復をもたらす効果が期待されています。
不眠症の治療には、多くの処方薬が使われます。処方薬には、短期使用が目的のものと長期使用が目的のものがあります。
不眠症薬のメリットと副作用について、服用する前に医師に相談してください。たとえば、不眠症の薬で眠ることができたとしても、服用した日の翌朝に気分が悪くなるケースもあります。また、まれではありますが、副作用として夢遊病のような行動(寝ている間に食事をする、眠りながら運転をするなど)をしてしまうことがあります。
不眠症薬の副作用がある場合、または薬が効かない場合は医師に相談してください。別の薬の処方を検討してもらえます。
また、不眠症薬の中には、習慣形成をしてしまう(飲まないとならなくなる一種の中毒症状)ものがあります。
市販薬(OTC)のなかには、不眠症の治療効果を謳うものがあります。こうした製品には、メラトニン、L-トリプトファンサプリメント、およびカノコソウのお茶または抽出物が含まれます。
このような製品の成分量および純度はばらつきがあることが多く、どのように作用しているかが解明されていないものも少なくありません。また、安全性が十分に確立でされていない製品も多くあります。
抗ヒスタミン剤を含む市販薬は、睡眠補助剤として販売されています。 抗ヒスタミン剤の服用で眠くなることもありますが、抗ヒスタミン剤は一部の人にリスクをもたらす薬です。 また、不眠症にとって最適な治療にならない可能性があります。
抗ヒスタミン剤を検討している人は、必ず医師に相談してから服用しましょう。
不眠症の症状はとてもツライです。しかし、記事にあるように、内面へのアプローチと医師の処方薬の両輪で、しっかり治療していくことで改善が目指せます。適切な治療を続けていくことで、少しずつ良質な眠りが訪れるようになるでしょう。