糖尿病の代表的な合併症を知って対策を立てよう!

2017/7/24 記事改定日: 2018/3/6
記事改定回数:2回

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

糖尿病には自覚症状のないまま重篤な合併症が進展するという怖さがあります。
たとえば、「三大合併症」と呼ばれる網膜症・腎症・神経障害のほか、より大きな血管の動脈硬化が進行することで心臓病や脳卒中が発症する可能性もあります。
この記事で代表的な糖尿病の合併症と予防の重要性について見ていきましょう。

糖尿病が合併症を引き起こすしくみとは?

体内の細い血管は末梢神経や臓器内に血液を運ぶ役割を持っています。
しかし、糖尿病による高血糖状態が長く続くと、細小血管が障害を受けて血管が詰まったり血液が漏れるようになります。
そうすると細小血管から栄養を補給されている末梢神経や細小血管が張り巡らされている組織(網膜や腎臓など)に異常があらわれやすくなるのです。

細小血管症の発症・進行を抑えるには、血糖値をできるだけ正常に近い値にコントロールすることが大切です。

糖尿病の「三大合併症について」

糖尿病の合併症は数多く存在しますが、中でも〈糖尿病腎症、糖尿病性網膜症、糖尿病神経障害〉の3つは「三大合併症」と呼ばれるほど発生率の高い合併症です。
以下の文章でそれぞれの特徴を見ていきましょう。

糖尿病腎症

腎臓には排尿時に体外に排出されるゴミをこし取る役割を持つ小さな血管が張り巡らされています。
しかし、高血糖になるとこれらのフィルターを酷使してしまうことになり、時間が経過するにつれて状態が悪化し、最終的には働かなくなってしまいます。
糖尿病腎症を防ぐには血糖値の管理と同時に血圧の管理を行い、腎臓をより健康に保つように心がけることが大切です。

糖尿病性網膜症

糖尿病になると緑内障や白内障にかかりやすく、網膜の血管が傷ついてしまう糖尿病性網膜症を発症するリスクが高くなります。糖尿病性網膜症になると視覚がだんだんと悪くなり、最悪の場合は失明にまでいたります。
視界がさえぎられていくのに気づいた頃にはすでに進行していることも多いので、糖尿病になった場合は定期的に眼科で検査してもらうようにしましょう。

糖尿病神経障害

糖尿病神経障害は神経の損傷によって起こる合併症で、体中のどこでも起こりえますが特に腕、脚、手、足に影響を及ぼします。この症状は末梢神経障害と呼ばれ、ちくちくとした感覚、痺れ、神経過敏、または痛みといった症状があらわれます。

また、神経の損傷によって自立神経障害と呼ばれる障害が起こる可能性があり、この障害は排尿、性機能、消化機能などの体の機能に影響します。
ただし、体重や血圧、血糖をきちんと自己管理できている状態であれば、自律神経障害にはなりにくいです。

神経の損傷によって起きる症状の代表例

上の項目で述べたように、糖尿病による神経の損傷は様々な症状を引き起こします。
代表的な症状を見ていきましょう。

足の症状

糖尿病で足の神経が損傷を受けると、無感覚になって傷や感染に気づきにくくなります。この状態だと血液が循環しにくくなるため、最終的につま先や脚を切断しなくてはならないほど状態が悪化してしまう可能性もあります。
足の問題を発症させないためにも、禁煙と運動を始めることをお勧めします。また、毎日足をチェックして清潔さと湿度を保ち、自分の足に合った靴を履くようにしましょう。
また、異変があればすぐに医師の診察を受けるようにしてください。

消化不良

迷走神経は蠕動運動(ぜんどううんどう)によって食べ物が消化器官を移動するのを助けます。
ところが糖尿病によって迷走神経にも障害が及ぶと消化は遅くなり、食後に胸焼けや吐き気、嘔吐、腹部の膨満感などを覚えて食欲が減退することが多くなります。
また、神経の損傷が腸に影響すると便秘や下痢を引き起こしやすくなるので、健康な食事や下剤などを取り入れながら正常な排便習慣を保つように心がけましょう。

血行不良や動脈硬化が原因で起こる合併症

動脈硬化は糖尿病を発症する前から始まっているといわれていますが、糖尿病発症後に動脈硬化が促進されることで心筋梗塞、脳梗塞、足の閉塞性動脈硬化症などの血管症を発症するリスクが高くなります。以下の文章で血管症の代表例を見ていきましょう。

脳卒中

脳卒中は脳に血液を送る血管が弱ったり、傷ついたり、塞がったりしたときに起こります。
脳の組織に十分に血液が行き渡らない状態が数分続くと、脳は永久に回復できないほど損傷されてしまうといわれています。
脳卒中を防ぐためにも、血糖値、コレステロール、血圧を管理しましょう。これらの数値が高いと脳卒中のリスクが高くなるので、適度な運動や食生活の改善によって健康な体重を維持するよう心がけるようにしてください。

心臓病

糖尿病による血管の疲弊や損傷は心臓にとってもかなり負担を強いることになります。
また、心臓の冠動脈が細くなって血液の流れが悪くなっても通常は胸痛が起こってすぐに異常に気づいて治療することができますが、糖尿病があると胸痛を自覚できず(これを無症候性心筋虚血といいます)に病気が心筋梗塞にまで進展して初めて異変に気がつくことも多く、治療が遅れる危険性があるのです。

性機能

糖尿病で神経と血管が損傷すると血流が行き届かなくなり、男性では勃起不全が起こりやすくなります。女性の場合は、性的に興奮しにくくなり、性交中に不快感や痛みを感じたり、快感が弱くなっていきます。
しかし、これらの症状は血糖値管理によって改善する可能性もあるので、運動、肥満の改善、禁煙などに気を遣いながら、ライフスタイルを見直していきましょう。

その他の合併症

糖尿病になると通常に比べて歯周病や口腔カンジダ症といった口の中の病気にかかりやすくなります。また、高血糖状態によってプラークや虫歯の元ができやすくなります。
歯医者に自分が糖尿病であることについて伝えるようにし、歯磨き、フロス、口内洗浄液でのすすぎなど、毎日の口腔ケアを念入りに行い、歯ぐきの出血などの歯周病の徴候がないかを注意深く観察するようにしてください。

また、糖尿病になるとインフルエンザ感染症や肺炎などの呼吸器感染症、尿路感染症、カンジダ炎などの感染症になりやすくなるといわれています。
インフルエンザ感染症や肺炎などのワクチン接種で感染を未然に防ぎましょう。

おわりに:糖尿病の合併症は予防が重要!

糖尿病は症状に気づきにくいため、知らずに高血糖状態を放置して合併症を引き起こすケースも少なくありません。糖尿病による合併症は、日常から予防することが大切です。
合併症について正しい知識を持ち、不安なことがあればすぐに医師に相談するようにしてください。

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