記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
糖尿病は自覚症状がないため、気づかないうちに症状が進行してしまうことが多い病気です。でも、血液検査がきっかけで血糖値の高さに気づいて糖尿病を発症している可能性に気づくことができます。この記事では、糖尿病かどうかがわかる検査法を中心にご紹介します。
糖尿病は、インスリンの働きがうまくいかなくなったために、血糖値(血液中に含まれるブドウ糖の濃度)が高くなってしまう病気です。主な糖尿病として、以下の2タイプがあります。
自己免疫疾患やウイルス、遺伝などが原因で、すい臓からインスリンがほとんど分泌されなくなってしまうため、血糖値が高くなってしまう糖尿病
肥満や運動不足などが原因で、すい臓からインスリンは分泌されるものの、働きが鈍くなったりしたために血糖値が高くなってしまう糖尿病
進行すると膵臓β細胞の小胞体ストレスなどによりインスリン分泌が低下してきます。
糖尿病は自覚症状がないため、自分で気づくことが難しい病気です。しかし、たとえば健康診断の血液検査で「血糖値が高い」という診断結果が出たときや、高血糖の症状(のどが渇いてよく水を飲む、食べているのに体重が減る、疲れやすいなど)がみられたときに、糖尿病の疑いに気づくことができます。
また最近は、献血時に行われるグリコアルブミン検査から、糖尿病の疑いに気づくこともあります。
糖尿病かどうかを診断する主な検査として、以下のようなものがあります。
この検査では、10時間以上絶食をした状態で採血をし、血糖値を測定します。
この検査では、空腹時に採血した後、75gのブドウ糖が入ったソーダ水を飲み、しばらく経ってからもう一度採血を行います。ソーダ水を飲む前と飲んだ後の血糖値を調べ、糖尿病を発症しているかどうかを診断します。糖尿病の疑いが強い場合、特に勧められる検査です。
そのほか、血液検査でわかる以下のような数値からも、糖尿病を発症しているかどうかを確認することができます。
HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)とは、血液に含まれるヘモグロビンのうち、糖とくっついているものがどのくらいあるかがわかる数値です。この数値から、過去1、2か月分の血糖値の平均値を把握することができます。
なお、この検査は貧血があると正確な結果が出ないため、医師はあらかじめ貧血がないかを確認します。結果は、HbA1C(7%)などのパーセンテージで報告され、パーセンテージが高くなればなるほど平均血糖値が高い、ということになります。具体的な数値を以下にご紹介します。
HbA1c(NSGP値)が5.9%未満 現在のところ、糖尿病の可能性はない
HbA1c(NSGP値)が6.0%~6.4% 糖尿病の可能性を否定できない
HbA1c(NSGP値)が6.5%以上 糖尿病が強く疑われる
*NSGP値とは「国際標準値」のことです
貧血のため、HbA1c検査では正確な血糖値を測定できない場合、グリコアルブミン検査を行います。この検査では、血液中に含まれるアルブミンのうち、糖とくっついたもの(グリコアルブミン)がどのくらいあるかを調べます。この検査によって、採血の1カ月間(特に直近の2週間前)の血糖値の平均がわかります。
正常なグリコアルブミン値は11~16%です。これより高ければ高いほど、血糖値が高い状態が長く続いていた、ということになります。
空腹時血糖と75gブドウ糖負荷試験の結果、どのくらいの数値だと糖尿病の疑いがあるのでしょうか。以下にその目安をご紹介します。
空腹時血糖:110mg/ dl 未満
かつ
75gブドウ糖負荷試験:140mg/ dl 未満
境界型(糖尿病予備群)とは、検査結果の数値が正常型にも糖尿病型にも当てはまらない場合の総称です。まだ糖尿病と診断するほど高い数値ではないものの、正常値より血糖値が高くなっている状態を示しています。
空腹時血糖:110mg/ dl 以上~126mg/ dl 未満
または
75gブドウ糖負荷試験:140mg/ dl 以上 ~ 200mg/ dl 未満
空腹時血糖:126mg/ dl 以上
または
75gブドウ糖負荷試験:200mg/ dl 以上
2型糖尿病を発症すると、血管に障害が起きて三大合併症血液検査の結果、糖尿病予備群だとわかった場合、生活習慣を見直して血糖値の上昇を抑えることが大切です。
定期的に検査を受けて血糖値をチェックするのとともに、脂っこい料理を控えて野菜中心の食生活に変えたり、少しずつでも歩いたり、階段を使うようにしたりすることから始めましょう。
糖尿病を発症しているかどうかを自分で気づくことはできません。このため、毎年の健康診断で行われる血液検査で、血糖値がどのくらいかをチェックすることが、糖尿病の予防や進行を抑える上でとても重要になります。
もし、血糖値が高いことがわかったら、詳しい検査を受けたり、生活習慣を改善したりして、症状が悪化するのを防ぎましょう。